「あほリズム」
(301)
一時期、NHK教育テレビで放送されていたマイケル・サンデル
教授の「白熱教室」に熱中した。彼が正面切って「正義」を振りか
ざす議論に小気味よさを感じていた。ところが、何時だったか旧日
本軍による近隣諸国への侵略行為や、米軍による原爆投下を議論し
ている時に「あれ?」と思った。果たしてアメリカ人は他国の侵略
を非難できる立場にあるのか?それではアメリカ人は如何なる正義
によって原住民からアメリカ大陸を奪い取ったのか?更に、黒人差別
については?そして、こんなことを言えば顰蹙を買うことを承知で言え
ば、彼は一部で伝えられるところによるとユダヤ人だというが、パレス
チナ人を追い出したイスラエル建国に正義はあるのか?他人の不正
に目を光らせる者は往々にして自らの不正には目を逸らす。きっと彼
はそのような初歩的な葛藤はすでに解決済みだと思っていたが、さっ
と調べたところそういった著述がまったく見当たらない。もしそうだとす
れば、自身が身を委ねる民族や国家の正義は語ろうとせずに、他国
の正義についてだけ語るのは「それは正義か?」