「二元論」
(8)のつづきのつづき
ヘラクレイトスが唱えた「万物は一つである」(ヘン・パンタ)とい
う思想は、それは〈存在〉を一元的に捉える存在概念だが、しかし、
〈存在〉を二元的に捉える形而上学(メタ・ピュシス)的思考とは根本
的に異なる。形而上学は存在を永遠不変の真理としての「本質存在」
と、生成変化する非真理としての「事実存在」に二元化して、「本質
存在」の「事実存在」に対する優位性は揺るがない。そして形而上学
的思考を受け継ぐ科学技術は、自然(ピュシス)を単なる資料・材料と見
做して人間中心主義(ヒューマニズム)的文化の下で、「人間にとっての
価値」でしかない製品と無価値のゴミに分別され、今やわれわれはわれ
われが作り変えた「非」自然が循環性を失って再生されずに滞って環境
を変化させている。〈存在〉を「真理」と「非真理」に二元化する形而
上学的思考は「万物は一つである」〈生成〉の一元的世界を否定して、
生成としての存在であるわれわれ自身を否定しようとしている。
(つづく)の続き