「人はみんないつか死ぬ」(2)
同居する要介護4の老人が、
「もう死にたい」と言った。
私はその想いが痛いほどわかった。だから、
「社会秩序や法律なんかよりも、いつでもあんたの意志を優先してやる」と
応えた。そして、
「本当に死にたいと思うのなら、いつでもおれが楽にしてやる」と言うと、
安心したのか静かに眠った。私はそう言いながら、かつてベルナール・
ビュッフェという著名な画家が、パーキンソン病に侵されて絵筆が持てなく
なると、最後はビニール袋を被って自殺したことを思い出したので、部屋中
のゴミ箱に入ってるゴミ袋を取って回った。
命とは、生か死かの二択ではなく、その間には病という無数の苦しみが横
たわっていた。