[2007年10月7日] 京都シネマ
ペドロ・アルモドバル監督の映画は「オール・アバウト・マイマザー」も「トーク・ツー・ハー」も見たが、いずれも現代スペインの社会に切り込んで見応えのあるものだった。
映画を見て感じたのは、文化の面でも社会制度の面でも、スペインは日本よりずっと先進国という印象だった。それらが一般の生活の中にとけ込んで生かされている感じがした。
インテリアにしても確かに原色が多いが、ずっと洗練されているし、もくもくと働くだけでなく文化を嗜むことも。もちろん映画の世界の中の事だから、幾分差し引かねばならないのはあるが。
今回はそうした印象とは引き替えに、ストーリーの意外性や事件性、ミステリアスな展開に重点が置かれ、推理小説を読む気分だ。
この前に見たトルナトーレ監督の「題名のない子守唄」にしても、この作品にしても、今までの作風と違って刺激が強いというか、スリラーやサスペンスのような意外性や残酷性・犯罪性が強くなっている感じがする。これも現代の世相の反映と今の観客の嗜好・要請から来るものなのだろうか。
いい映画というのは、何回見てもいいもので新たな感動さえ生じる。しかし、意外性や謎解きに重点を置く作品は一度タネを明かされると新鮮さや面白さが失われる。
《まだ見ていない人のために、結末は明かさないように》
とのコメントのついた映画は名作の条件に欠けるような気がする。
「ボルベール<帰郷>」-公式サイト