【2014年10月3日】 京都シネマ
久しぶりに脳髄の中心がぎしぎしと痛むくらい、2時間の間ずっと神経を集中させて見入ってしまった。パスカル・メシエの小説「リスボンへの夜行列車」(Night Train to Lisbon) の映画化ということだが、この原作者、ロンドンとハイデルベルクで古典言語学と哲学、インド学を学んだという哲学者でもある作家という。なるほど、言葉と内容に重みがあり、そうかと納得する。
ストーリーだけではない、脚本も配役も舞台もすばらしい。
スイスのベルンで、橋の上から飛び降りようとした女性を救ったことから話が始まる。女性の持っていたポルトガル語の本の不思議な魅力に惹かれて、突発的に「リスボン」行きの夜行列車に乗り込んでしまう。
ポルトガルでの「独裁政治」とそれの打倒を目差す「革命勢力」との「闘いの時代」の話が絡む。
やはり、ヨーロッパは魅力的だ。鞄ひとつで、スイスからポルトガルへ飛べる。映画『ひまわり』を見たとき、イタリアからロシアに行くのが、あんなに《簡単にできるんだ》と意外に思ったものであったが、それなりに苦労はあるかもしれないが、陸続きというのは、日本では考えられない《近さ》がある。
今は、何よりも『ユーロ圏』には国境がないに等しい。飛行機に乗らないまでも、『ユーロスター』に乗れば、日本の九州から北海道に行くよりずっと早いかもしれない。
リスボンも魅力的な街だ。物語の内容に引き込まれると同時に、またヨーロッパ、リスボンにも行きたくなった。
最後の映画の終わり方も良かった。
注文を付ければ、フランスやスペイン、イタリアやドイツ、イギリスなどの国の歴史は一定知られているが、ポルトガルについてはさっぱりである。
映画の中でも、歴史的な具体的な状況には、ほとんど触れられていなかった。
『カティンの森』でのポーランドや『麦の穂をゆらす風』のアイルランドのように、多少でも政情が描かれていたら、もっと感動的ではなかったかと、ちょっと残念だった。
『リスボンに誘われて』-公式サイト