2016年10月9日 【 京都みなみ会館 】
「こういう生き方」、「こんな世界」も、同じこの地球にあるのだと知るだけでも見る価値のある映画だ。
映画の内容は、『チベットの小さな村から聖地ラサ、そしてカイラス山へ。はるか2400kmを“五体投地(ごたいとうち)”で、
ほぼ1年かけて歩く11人の村びとのチベット巡礼旅』である。
【 「ラサ」と「カイラス山」への道のり 】
2400kmも行く旅であるから、当然大人だけのものと思っていたら、子供から妊婦まで参加するではないか。しかも、およそ1年間かけて行うというから、その間の学校とか生活とかどうなっているのだろうかと心配してしまう。
【 送り出す家族-子どもの参加 】
ただ歩くだけでも大変なのに、巡礼の方法は【五体投地】という、五体(両腕、両足、額)を地面に着け祈りながら《尺取り虫』のように進むのである。
寺院の境内とかで、そのような《しぐさ》をするのを見たことがあって知ってはいたが、まさか《巡礼中ずっと》あの動作で前進するなんて考えてもみなかった。
【 「五体投地」の巡業の始まり 】
長期の旅の期間の生活、食料等はどうするのかと思っていたら、一人でザックを背負う姿でなく、ラクダに乗って進む【隊商】のように隊列を作り移動していくのだ。
先頭に【マニ車】を回しながら隊を率いる導師のような人が先導して、その後に巡礼者が進む。皆の荷物はというと、後方にテントや食料・衣類寝具を満載したリヤカーがトラクターに引かれて付いていく。
【 「五体投地」のルール 】
『五体投地』で前進するのは巡礼者だけで導師はしない。髪にリボンを着けていたり、きちんと額を地面に着けないと導師に指導される。
【 水たまりでも川でもお構いなく 】
道路に流水が横切っていた。どうするのかと思ったら、同じように『五体投地』で前進する。
【 沿道の人々の歓迎 】
苦しい事ばかりではない。世界中どこの地域でも巡礼者は手厚く迎えられる。(かつては、そうでないことも多かったようだが)食事の提供や数日間の休養のための部屋も提供してもらえる。
自分の代わりに巡礼して拝んでくれと依頼され、贈与を受けることも。
一方、1年間だから、その間事故も事件も起こる。妊婦が参加していれば【出産】もある。途中からその赤子を連れての巡業だが、その子にとっては『幸運に恵まれた子」ということだ。
年寄りも参加しているから、途中で絶命し葬儀もある。事故もあった。
【 もう何千キロ来たか 】
ある日、荷物を満載したリヤカーを引くトラクターが車と衝突して使えなくなってしまう。事故の相手を責めるでもなく、賠償を求めるでもなく、その場で【無罪放免】してしまう様子は、他の現代社会では信じられない光景だ。
さらに驚いたことに、あきらめて巡礼を中断すると思ったら人が代わりに引いて進むという。【リヤカーを引いた区間は『五体投地』をしないで前進したから一定区間まで進んでは荷物のリヤカーを置き、引き始めた地点に戻って、また人だけが『五体投地』でリヤカーの所まで戻る】ということを繰り返し前進する。全く妥協を許さない、気の遠くなる話である。
【 聖地ー『カイラス山』 】
そうやって、ようやく「聖地-カイラス山」に到着する。一生に1度はかなえたいことだそうである。
映画には描かれていなかったが、ただその地に着くだけでなく「カイラス山」周囲の巡礼路、一周約54kmの道のりを13周するのが慣わしだそうだ。もっと信心深い人は【煩悩の数】に合わせ108周するのだそうだ。
【せわしく生きるだけが人生ではない】-そうは思っても、自分にはとても真似のできることではないと悟った。
『ラサへの歩き方』-公式サイト
『カイラス山巡礼の旅を自転車で行った人のブログ』