【2010年5月11日】 TOHOシネマズ二条
原題は『An Education』(教育)。
17歳という、どこの国でも同じだなと思う“一番難しい年頃”の女子高生を中心において、「学校教育」・「家庭教育」の問題と「人生教育」を絡め合わせ、誰もが通過し、感じるかもしれない-でも経験するには実際、難しいかもしれない青春の軌跡を描いている。中身『教育的』だが、タイトルは「17歳の~」でよかったのかもしれない。
「17歳」といえば「17歳のカルテ」や「青の炎」も難しい年頃の高校生を描いていた。『カルテ』はアメリカ、『炎』は日本。環境、話の筋は違うが、あわせて観ると面白い。
最初の出合いが洒落ているのである。
雨のバス停で、傘もささずにバスを待っているジェニーに車が近づいてきて、中年の男(一見、さえない男風でとてもプレイボーイには見えない)が声をかける。
『君はともかく、チェロが濡れるのが気になって』と。
それに対する、ジェニーの笑顔が何とも可愛らしい。
結局、ジェニーも車に乗り込んで家まで送ってもらう。ことの始まりであるが、ここまでは気の良いおじさんの《小さな親切のお話》である。
ジェニーは、学校では優等生で大学は、名門「オックスフォード」を目指している。しかし普段は、どこの国のどこにでもいるような、友だちと他愛もない会話を交わす普通の女の子。
それが、年上の男性と交際しているという噂が広まると、校長に呼ばれ諭される。
一方、男は果敢にジェニーに言い寄り、家族までも取り込んで、パリ旅行にまで誘い出すことに成功する。
このあたりで観客にも、話の中身が「中年男の純愛物語」では無いことに気づく。両親も含め、こんなあっさりと詐欺師みたいな男に騙されていいものかと、怪しげな気持ちになっていく。
隣で観ていた《ちょっと軽め》のカップルの女の子の方が、それまでも何かと声を出すのだが、下の写真のシーンで思わず《そんなのあり、自分でもそんなのしないよ?!》みたいに、『エー~ッ!』と大きな声を出す。
ジェニーはますます大人の世界にはまりこんでいく。
高級車を乗り回し、派手な羽振りをする彼とその仲間は、とんでもないペテン師なのである。
それに気づくには、そう時間がかからなかった。仕事も私生活もメチャクチャな男であることを描くのに、わずかなカットで上手に描いてみせる。
うろたえる両親を前に、ジョニーは決断する。ここからがこの映画のすごいところで、魅力である。
「あなたの、その言葉を待っていたの。」とジェニーを受け入れる元の担任教師。
有名ジャーナリストの過去の実体験の手記をもとに映画化した作品という。なるほどと思う。
生活とは何か、仕事とは何か、夢とは何なのか、その中で大切なものとは何なのか、を何気なく提示する、後味のいい映画だ。
思春期の子どもを持つ親とその娘に見せたい映画だ。
「17歳の肖像」-公式サイト