【 2016年5月26日 】 NHKBS放映
フレデリック・フォーサイスは一世を風靡したサスペンス小説の作家である。『ジャッカルの日』もそうであるが、多数集めた実際の資料を基に綿密に組み立てられたストーリーは迫力がある。史実にも沿っているから観るものを圧倒する。
《オデッサ・ファイル》とは、「オデッサ」という秘密組織が作成した《連合国側と当局からの追及を逃れるため、名前を変えて偽造パスポートを持ちドイツ国内あるいは世界各地で新たな地位と新たな任務を持って暗躍している「元ナチス幹部」の一覧名簿》が納められたファイルである。
そのファイルの存在とジョン・ボイド演ずる新聞記者と元親衛隊指揮官・ロシュマンが属する秘密組織「オデッサ」との死闘に、さらにイスラエルの秘密警察「モサド」が絡み、ハラハラドキドキの展開を繰り広げるもので、ここで下手な解説をするより実際に映画を見てもらった方がいい。
かなり前の映画なのだが、見出したら画面に引きずり込まれ緊張の連続で圧倒される。最近の映画のように(あまり見ないのだが)派手なアクションもなくどちらかというと地味なのであるが、興奮するのはやは史実に基づいているからだろうか。
前にも書いたが、『顔のないヒトラーたち』を見た時に感じたことであるが、ドイツでも《戦犯》は戦後長い間、暗躍していたのだ。それが、今回のこの映画を見て実感された。
映画の最後の方で描かれていた、《オデッサ・ファイルが当局に届き、記者ミラーが殺人の件で訴追されなかった事》は、1964年2月の史実《西ドイツ司法省に匿名の告発者から送られ『ファイル』がナチ戦犯の追及に活用開始》されたという事実に対応する。
一方、『顔のないヒトラーたち』で描かれたフランクフルトでの『アウシュビッツ裁判』が始まったのは、1963年12月である。裁判が始まった当初は、まだ「オデッサ」は暗躍していたのだ。
逆に言うと、この「オデッサ・ファイル」の存在が明らかにされて、『裁判』が前進したとも言える。
両方の映画を見比べて、なるほどと思ったことが多々あった。
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フォーサイスは超一流のサスペンス作家だ。『ジャッカルの日』もお薦めの映画です。
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