【 2016年7月12日 】 京都シネマ
書籍の『暴露-スノーデンが私に託したファイル』は刊行直後の2014年の7月に一気に読んだ。現実の《事件》の現在進行形の緊張感と事の重大性に衝撃を受けた。ブログを書いていないか確認したがなかった。あまりのショックの大きさにただ立ちすくむだけだったのか。
そして今回の映画。本の内容の再来である。
【 スノーデンと、本の著者であり記者であるグレン・グリーンウォルド 】
映画を見ていると2年前の興奮がよみがえる。香港のホテルの一室でスノーデンとの面会で始まる。登場人物は『暴露』の著者グレン・グリーンウォルドと、スノーデンその人自身と、カメラを回しているこの映画の監督のローラ。
映画も2014年に公開されていたようだが日本では今回が初公開である。
国家秘密を《暴露》する者は、ましてや「NSA」とか「CIA」といった国家中枢にいてそれをしたら、スパイ扱いをされ国家的犯罪者にされる。「ウィキリークス」もそうだが権力による大宣伝によって《犯罪者集団》に祭り上げられてしまう。
スノーデンの場合も、当然国家権力から追われる身になり、今後まともな生活ができなくなることは分かっていた。それでも、あえてそれをした。その心境が切々と語られる。
「私の唯一の動機は、自分たちの名のもとに何が行われているか、自分たちに対して何が行われているかを
人々に知らせたいということです。合衆国政府は属国、なかでもともに”ファイブ・アイズ”を構成する
イギリス・カナダ・オーストラリア・ニュージーランドと結託し、世界中に秘密の監視システムを張り巡
らしています。これから逃れるすべは何一つありません。・・・(後略)」 (『暴露』 P-48)
「私は自分の行動によって、自分が苦しみを味わわざるをえないことを理解しています。これらの情報を公
開することが、私の人生の終焉を意味していることも。しかし、愛するこの世界を支配している国家の秘
密法、不適切な看過、抗えないほど強力な行政権といったものが、たった一瞬であれ白日の下にさらられ
るのであれば、それで満足です。あなたが賛同してくれるなら、オープンソースのコミュニティに参加し、
マスメディアの自由闊達な精神の保持とインターネットの自由のために戦ってください。私は政府の最も
位一角で働いてきました。彼らが恐れるのは光です。
エドワード・ジョセフ・スノーデン、社会保障番号:■■■■■■■■
CIAにおけるコードネーム ”■■■■■■■■■■■■”、ID番号:■■■■■■
アメリカ合衆国国家安全保障局、元シニアアドヴァイザー、会社員に偽装
アメリカ合衆国中央情報局、元現場要員、外交官に偽装
アメリカ合衆国国防情報局、元講師、会社員に偽装
」 (『暴露』 P-58 )
」
映画は、緊張の連続である。目を離すことも、唾をのみ込むこともできない。公開された情報に関しては、書籍を見た方が的確であるが、映画を見て理解が進んだのは、情報を集め、それを自動で検索・整理するプログラムである。
『検索キーワード』、『位置情報』、『携帯電話記録』、『クレジットカード使用記録』などの情報を寄せ集めることにより個人を特定し、それを蓄積する。怪しいと睨めば、徹底追跡する。
インターネットで「Amazon」などを使ったことのある人なら経験があるだろう。以前、検索した商品データをもとに、「あなたが気に入りそうな」商品の一覧がズラーと出る、あれである。もちろんあれも、人間が手動でやっているのではないことくらいは分かる。それのもっと大掛かりな、プログラムが働いて個人情報を収集・蓄積している。
最近気が付いたのだが、Amazonの画面だけでなく、一般のニュース画面など見ていても、以前に検索した商品のバナー広告が集中的に出ているのである。1つの会社の内部の情報としてではなく、インターネット世界で情報が共有されているのだ。
事あるたびに、解りやすいので引用するが、映画「エネミー・オブ・アメリカ」で描かれている国家監視の実態より、現在の監視システムは遙かに進んで、おそろしいものになっている。
(この文章も、どこかのシステムに当然引っかかることだろう-それが何十万件にもなれば、問題はまた別の所に移るだろうが。)
『シチズンフォー・スノーデンの暴露』-公式サイト