2009(平成21)年6月11日の今日は「入梅(にゅうばい)」である。
気象庁は、沖縄地方は 5月18日ごろ梅雨入りしたことを発表していたが、 2日前の6月9日、近畿地方をはじめ、九州から東海の各地方も梅雨入りしたとみられると発表。私の住んでいる近畿地方は、 6月 9日ごろ、これは、平年(6月 6日ごろ)より 3日遅く、昨年(5月28日ごろ)より 12日遅い ・・・と(気象庁:平成21年の梅雨入りと梅雨明け【速報値】参照)。それなのに、“6月11日の今日は「入梅(にゅうばい)」である”・・・などと何を寝ぼけたこと言っているのか!・・・。ま~、そう云わず、読んでください。
暦には、二十四節気や五節句と言った暦日以外に、季節の移り変りをより適確に把むために設けられた、特別な暦日があり、これを総称して「雑節」と呼んでいるが、表題の「入梅(にゅうばい)」もこの「雑節」の1つであり、太陽の黄経が80度の点を通過する日である。これが毎年6月11日ころである。本来は「梅雨入り」の漢語的表現であるが、梅雨の季節全体を「入梅」と呼ぶ地方もある。
現在は、太陽の黄経が80度の点を通過する日と定義されているが、以前は立春から数えて135日目、さらに昔の旧暦では芒種のあとの最初の壬(みずのえ)の日(5日目)としており、陰陽五行説では、「壬は水の気の強い性格」とされており、水と縁がある日ということで梅雨入りとされたようだ。そして、小暑の後の最初の壬の日を梅雨明け(出梅(しゅつばい)、つまり、「入梅」から数えて30日間を「梅雨」としていた時期もあった。
5月中旬頃に走り梅雨を見、6月中旬から7月中旬にかけ、朝鮮南部、長江下流域や北海道・小笠原諸島を除く日本に見られる「梅雨」は、雨季の一種であり、梅雨前線上を低気圧が次々と東進することによる。
旧暦の6月は水無月(みなづき)と呼ばれ、現在の7月頃、小暑後の最初の壬(みずのえ)の日つまり梅雨明けにあたる。水無月は、読んで字の如く「水が無い月」つまり、梅雨も終わって水も涸れつきる月という説、又、無の字は連体助詞「な」の当て字で「~の」を意味し(以下参考に記載の「助詞の種類と機能1(連体助詞) 和歌入門 和歌のための文法」参照)、「水無(な)月」は「水の月」を意味し、田植えも済み水を張る月「水月(みなづき)」であるなど様々な説がある。梅雨期間中に雨の少ないことを「空梅雨(からつゆ)」というが、「涸梅雨」(空は「かれ(涸)」の転〕 (1)水がなくなること)とも書く。梅雨前線に沿った降雨活動の弱い年におこるが、昔から凶作は、このような「涸梅雨」のときに起こりやすく、人々は「雨乞い」の目的で、農業神の祭礼を盛んに行った。
本当の梅雨入り・梅雨明けの日付は年により、地方により異なるが、農家にとって梅雨入りの時期を知ることは田植えの日取りを決めるのに重要であったことから、その目安としてこの暦日が設けられた。現在は、気象庁の観測及び予報に基づいて梅雨入りを発表しており、「入梅」は実際の梅雨とは関係のない暦日となっているが・・・。
他の国の雨季とは異なり、日本の梅雨はそれほど雨足の強くない雨が長期に亘って続く点に特徴であり、梅雨冷え(梅雨寒)のする陰鬱な天気が長く続くのが特徴。そのため、カビ(黴)や食中毒などに注意が必要な季節とされている。
「梅雨」は中国語の辞書にも「黄梅雨」として載っている。「黄梅」とは梅の実が熟すという意味であり、中国では、揚子江中・下流域で晩春から初夏にかけて、梅が熟す時期にあたり、その時期に長雨がよく降るそうだ。そのことから、「梅雨」の語源は、「梅の実が黄熟する頃に降り続く雨」として名づけられた。また、「黴」(かび)が生じやすいので「黴雨(ばいう)」とも呼ばれていたものが転じて「梅雨」となったといわれている。
梅雨、黴雨は、「山房五月 黄梅(こうばい)の雨 半夜 蕭蕭(せうせう)として 虚窗(きょさう)に灑(そそ)ぐ ・・・・」と、江戸時代の曹洞宗の僧侶・歌人良寛和尚でさえも沈んでしまう時候である(以下参考に記載の「良寛 半夜 日本漢詩選 詩詞世界 碇豊長の詩詞 漢詩」参照)
梅雨闇(つゆやみ)と言う言葉があるが、雨が降り続いたり曇りがちで、昼でも暗く、夜は月も見えない闇になることをいう。現在の鬱陶しい梅雨の6月は旧暦の5月にあたることから、闇は「さつき闇」とも言われている。夜の闇は特に暗く「あやめもわかぬ」(敷物の綾莚の文目(あやめ)もわからなくなるくらいの漆黒の闇と化す)と表現された。
「思ひ寝にみるとはすれどあや莚(むしろ)あやめもわかぬ夢ぞはかなき」(紅塵灰集)
この歌の「あやめもわかぬ」は「模様が見分けられない」「条理が分からない、理不尽な」の両義だそうである(以下参考に記載の「後土御門天皇 千人万首」参照)。
そのため、「雨障」(あまつつみ」などという言葉もある。雨に濡れるのを差し障りに、又、嫌って外出を避ける事を意味ている。梅雨時に雨に打たれるのはわれわれだって嫌だが、平安時代には、もっと強い意味で雨が降ったら、外出してはいけない(タブー)と考え、家に隠っていたようで、『万葉集』には以下のような歌が詠まれている。
(巻4・519)「雨障常する君はひさかたの昨夜(きそのよ)の雨に懲りにけむかも 」作者:大伴女郎
(巻4・520)「ひさかたの雨も降らぬか雨障君にたぐひ(副)てこの日暮らさむ」
巻4・519の歌は、“雨にあたるのが嫌いで出かけないあなたは、昨夜の雨に降られて懲りてしまわれたでしょうか”・・といった意味のように読めるのだが、どうもよく理解できないが、これについて、以下参考に記載の「古橋信孝 雨の禁忌 万葉集の雨障」では、次のように解説している。
“巻4・520の歌は、先の巻4・519の返事の歌であり、雨が降ったらいいのに、雨つつみをして、あなたと一緒に過ごそうといっているから、巻4・519の歌は、雨が降るというのであわてて帰った男を女がからかっているのだろう。だから、男はむしろ降ってくれた方がいいのだと応じたのである。”・・・と。そう読むとこの歌は非常に面白いね。
じっと見つめること、遠く見渡すことを意味する言葉に「眺め」があるが、これは、「長目」が語源と考えられているが、古くは、長雨のころ家にこもり、一つ所をじっと見つめてぼんやり物思いにふけることで、和歌では「長雨(ながめ)」とかけて用いられた。
百人一首で名高い小野小町の有名な以下の歌がある。
「花の色はうつりにけりないたづらにわが身世にふるながめせしまに」
意味は、“桜の花は春の長雨が降り続けていた間に色褪せてしまったなあ。そして、我が身も徒(いたずら)にこの世に置き、むなしく時を経るばかりの、物思いをしていた間に”といったところであるが、古来美貌を謳われ、多くの小町説話を生んだ小野小町の出自は明らかでないものの、もうこの頃は、梅雨の長雨には、窓からぼんやり外を眺めながら、こんな思いにふける年頃となっていたのだね~(以下参考に記載の「小野小町・千人万首」参照)。
今の6月、旧暦の5月に降る雨は「五月雨(さみだれ)と言うが、江戸時代の芭蕉の句に以下のものがある。
「降る音や耳も酸(す)うなる梅の雨 芭蕉
「五月雨を集めて早し最上川 」 芭蕉
上の句の「耳も酸(す)うなる」とは、江戸時代の言い方で同じことを何度も聞かされ飽きることをいうそうだ。寛文7年、芭蕉まだ24歳の時のもので、「五月雨」を「梅雨」というので、梅の実の酢っぽさ「酸う」を、梅にかけただけの若い作といわれる。「梅の雨」も「五月雨」も、梅雨と同じだが、「梅の雨」は梅雨の時期を指しており、「五月雨」は雨そのものを指している(芭蕉の句については以下参考に記載の「芭蕉(bashoDB)」が詳しい。
尚、「五月雨(さみだれ)」の「さ」は、「五月・皐月(さつき)」や「早苗(さなえ)」などと同様で耕作(田植)を意味する古語の「さ」と同じで、漢字の「皐」には、もともと神にささげる稲を意味し、「みだれ」は「水垂れ」から雨を意味すると言われているようである(以下参考に記載の「皐月(さつき) - 語源由来辞典」参照)。
また、「五月雨式」と言う言葉は、梅雨時の雨のように、物事が長くだらだらと続くことである。芭蕉の最初の句も彼が、何時までもだらだら続く雨「梅雨」を嫌う気持をストレートに表現しているともいえるが、私も、ダラダラ書くのを止めないと「耳も酸うなる梅の雨」になりかねないのでこのあたりで止めることにしよう。
いよいよ、本格的な梅雨に入ったようであるが、これで、毎日欠かさず行なっていた散歩や、裏山登山などが暫く出来なくなる。メタポにならないよう、家の中で体操ぐらいは欠かさずするようにしなくては・・・。それと、昨日は激しく降っていた雨が今朝は上っている。今日のうちに、散歩をかねて、家人をアシストし、数日分の食料も買い込んでおこう・・・と。
(画像は花札「柳(雨)」の20点札。梅雨を思わせるような図柄は「柳に小野道風」。没後『書道の神』として祀られる位の平安時代の能書家。スランプに陥っていた時かえるが柳にジャンプしているのを見てスランプを脱したというエピソードがある【逸話参照】。古くは「柳に番傘」、または「柳に番傘を差して走る斧定九郎」【仮名手本忠臣蔵」5段目に登場する人物】であったそうだが、明治時代にデザインが変わり、現在の「柳に小野道風」となったそうだ。)
参考:
雑節 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9B%91%E7%AF%80
気象庁:平成21年の梅雨入りと梅雨明け(速報値)
http://www.data.jma.go.jp/fcd/yoho/baiu/sokuhou_baiu.html
助詞の種類と機能1(連体助詞) 和歌入門 和歌のための文法
http://www.asahi-net.or.jp/~sg2h-ymst/yamatouta/intro/josi01.html
雨乞い - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9B%A8%E4%B9%9E%E3%81%84
良寛 半夜 日本漢詩選 詩詞世界 碇豊長の詩詞 漢詩
http://www5a.biglobe.ne.jp/~shici/shi3_07/jpn140.htm
良寛 – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%89%AF%E5%AF%9B
後土御門天皇 千人万首
http://www.asahi-net.or.jp/~sg2h-ymst/yamatouta/sennin/gotutimikado.html
小野小町 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%8F%E9%87%8E%E5%B0%8F%E7%94%BA
小野小町・千人万首
http://www.asahi-net.or.jp/~sg2h-ymst/yamatouta/sennin/100i/009.html
雨 - 偐万葉田舎家持歌集
http://plaza.rakuten.co.jp/YAKAMOCHI35/diary/200805250000/
古橋信孝 雨の禁忌 万葉集の雨障
http://www.cosmo-oil.co.jp/dagian/42/16.html
たのしい万葉集: 雨を詠んだ歌
http://www6.airnet.ne.jp/manyo/main/nature/ame.html
芭蕉(bashoDB)
http://www2.yamanashi-ken.ac.jp/~itoyo/basho/basho.htm
俳諧データベース
http://tois.nichibun.ac.jp/database/html2/haikai/haikai_i158.html
皐月(さつき) - 語源由来辞典
http://gogen-allguide.com/sa/satsuki.html
6月28日)は「雨の特異日」
http://blog.goo.ne.jp/yousan02/e/7d6c470a82fbde5db072a49de1468279
6月1日「気象記念日」
http://blog.goo.ne.jp/yousan02/s/%C6%FE%C7%DF
花札 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8A%B1%E6%9C%AD
洗うを洗う
http://www.mizu.gr.jp/kenkyu/mizu11_arau/no11_h01.html
気象庁は、沖縄地方は 5月18日ごろ梅雨入りしたことを発表していたが、 2日前の6月9日、近畿地方をはじめ、九州から東海の各地方も梅雨入りしたとみられると発表。私の住んでいる近畿地方は、 6月 9日ごろ、これは、平年(6月 6日ごろ)より 3日遅く、昨年(5月28日ごろ)より 12日遅い ・・・と(気象庁:平成21年の梅雨入りと梅雨明け【速報値】参照)。それなのに、“6月11日の今日は「入梅(にゅうばい)」である”・・・などと何を寝ぼけたこと言っているのか!・・・。ま~、そう云わず、読んでください。
暦には、二十四節気や五節句と言った暦日以外に、季節の移り変りをより適確に把むために設けられた、特別な暦日があり、これを総称して「雑節」と呼んでいるが、表題の「入梅(にゅうばい)」もこの「雑節」の1つであり、太陽の黄経が80度の点を通過する日である。これが毎年6月11日ころである。本来は「梅雨入り」の漢語的表現であるが、梅雨の季節全体を「入梅」と呼ぶ地方もある。
現在は、太陽の黄経が80度の点を通過する日と定義されているが、以前は立春から数えて135日目、さらに昔の旧暦では芒種のあとの最初の壬(みずのえ)の日(5日目)としており、陰陽五行説では、「壬は水の気の強い性格」とされており、水と縁がある日ということで梅雨入りとされたようだ。そして、小暑の後の最初の壬の日を梅雨明け(出梅(しゅつばい)、つまり、「入梅」から数えて30日間を「梅雨」としていた時期もあった。
5月中旬頃に走り梅雨を見、6月中旬から7月中旬にかけ、朝鮮南部、長江下流域や北海道・小笠原諸島を除く日本に見られる「梅雨」は、雨季の一種であり、梅雨前線上を低気圧が次々と東進することによる。
旧暦の6月は水無月(みなづき)と呼ばれ、現在の7月頃、小暑後の最初の壬(みずのえ)の日つまり梅雨明けにあたる。水無月は、読んで字の如く「水が無い月」つまり、梅雨も終わって水も涸れつきる月という説、又、無の字は連体助詞「な」の当て字で「~の」を意味し(以下参考に記載の「助詞の種類と機能1(連体助詞) 和歌入門 和歌のための文法」参照)、「水無(な)月」は「水の月」を意味し、田植えも済み水を張る月「水月(みなづき)」であるなど様々な説がある。梅雨期間中に雨の少ないことを「空梅雨(からつゆ)」というが、「涸梅雨」(空は「かれ(涸)」の転〕 (1)水がなくなること)とも書く。梅雨前線に沿った降雨活動の弱い年におこるが、昔から凶作は、このような「涸梅雨」のときに起こりやすく、人々は「雨乞い」の目的で、農業神の祭礼を盛んに行った。
本当の梅雨入り・梅雨明けの日付は年により、地方により異なるが、農家にとって梅雨入りの時期を知ることは田植えの日取りを決めるのに重要であったことから、その目安としてこの暦日が設けられた。現在は、気象庁の観測及び予報に基づいて梅雨入りを発表しており、「入梅」は実際の梅雨とは関係のない暦日となっているが・・・。
他の国の雨季とは異なり、日本の梅雨はそれほど雨足の強くない雨が長期に亘って続く点に特徴であり、梅雨冷え(梅雨寒)のする陰鬱な天気が長く続くのが特徴。そのため、カビ(黴)や食中毒などに注意が必要な季節とされている。
「梅雨」は中国語の辞書にも「黄梅雨」として載っている。「黄梅」とは梅の実が熟すという意味であり、中国では、揚子江中・下流域で晩春から初夏にかけて、梅が熟す時期にあたり、その時期に長雨がよく降るそうだ。そのことから、「梅雨」の語源は、「梅の実が黄熟する頃に降り続く雨」として名づけられた。また、「黴」(かび)が生じやすいので「黴雨(ばいう)」とも呼ばれていたものが転じて「梅雨」となったといわれている。
梅雨、黴雨は、「山房五月 黄梅(こうばい)の雨 半夜 蕭蕭(せうせう)として 虚窗(きょさう)に灑(そそ)ぐ ・・・・」と、江戸時代の曹洞宗の僧侶・歌人良寛和尚でさえも沈んでしまう時候である(以下参考に記載の「良寛 半夜 日本漢詩選 詩詞世界 碇豊長の詩詞 漢詩」参照)
梅雨闇(つゆやみ)と言う言葉があるが、雨が降り続いたり曇りがちで、昼でも暗く、夜は月も見えない闇になることをいう。現在の鬱陶しい梅雨の6月は旧暦の5月にあたることから、闇は「さつき闇」とも言われている。夜の闇は特に暗く「あやめもわかぬ」(敷物の綾莚の文目(あやめ)もわからなくなるくらいの漆黒の闇と化す)と表現された。
「思ひ寝にみるとはすれどあや莚(むしろ)あやめもわかぬ夢ぞはかなき」(紅塵灰集)
この歌の「あやめもわかぬ」は「模様が見分けられない」「条理が分からない、理不尽な」の両義だそうである(以下参考に記載の「後土御門天皇 千人万首」参照)。
そのため、「雨障」(あまつつみ」などという言葉もある。雨に濡れるのを差し障りに、又、嫌って外出を避ける事を意味ている。梅雨時に雨に打たれるのはわれわれだって嫌だが、平安時代には、もっと強い意味で雨が降ったら、外出してはいけない(タブー)と考え、家に隠っていたようで、『万葉集』には以下のような歌が詠まれている。
(巻4・519)「雨障常する君はひさかたの昨夜(きそのよ)の雨に懲りにけむかも 」作者:大伴女郎
(巻4・520)「ひさかたの雨も降らぬか雨障君にたぐひ(副)てこの日暮らさむ」
巻4・519の歌は、“雨にあたるのが嫌いで出かけないあなたは、昨夜の雨に降られて懲りてしまわれたでしょうか”・・といった意味のように読めるのだが、どうもよく理解できないが、これについて、以下参考に記載の「古橋信孝 雨の禁忌 万葉集の雨障」では、次のように解説している。
“巻4・520の歌は、先の巻4・519の返事の歌であり、雨が降ったらいいのに、雨つつみをして、あなたと一緒に過ごそうといっているから、巻4・519の歌は、雨が降るというのであわてて帰った男を女がからかっているのだろう。だから、男はむしろ降ってくれた方がいいのだと応じたのである。”・・・と。そう読むとこの歌は非常に面白いね。
じっと見つめること、遠く見渡すことを意味する言葉に「眺め」があるが、これは、「長目」が語源と考えられているが、古くは、長雨のころ家にこもり、一つ所をじっと見つめてぼんやり物思いにふけることで、和歌では「長雨(ながめ)」とかけて用いられた。
百人一首で名高い小野小町の有名な以下の歌がある。
「花の色はうつりにけりないたづらにわが身世にふるながめせしまに」
意味は、“桜の花は春の長雨が降り続けていた間に色褪せてしまったなあ。そして、我が身も徒(いたずら)にこの世に置き、むなしく時を経るばかりの、物思いをしていた間に”といったところであるが、古来美貌を謳われ、多くの小町説話を生んだ小野小町の出自は明らかでないものの、もうこの頃は、梅雨の長雨には、窓からぼんやり外を眺めながら、こんな思いにふける年頃となっていたのだね~(以下参考に記載の「小野小町・千人万首」参照)。
今の6月、旧暦の5月に降る雨は「五月雨(さみだれ)と言うが、江戸時代の芭蕉の句に以下のものがある。
「降る音や耳も酸(す)うなる梅の雨 芭蕉
「五月雨を集めて早し最上川 」 芭蕉
上の句の「耳も酸(す)うなる」とは、江戸時代の言い方で同じことを何度も聞かされ飽きることをいうそうだ。寛文7年、芭蕉まだ24歳の時のもので、「五月雨」を「梅雨」というので、梅の実の酢っぽさ「酸う」を、梅にかけただけの若い作といわれる。「梅の雨」も「五月雨」も、梅雨と同じだが、「梅の雨」は梅雨の時期を指しており、「五月雨」は雨そのものを指している(芭蕉の句については以下参考に記載の「芭蕉(bashoDB)」が詳しい。
尚、「五月雨(さみだれ)」の「さ」は、「五月・皐月(さつき)」や「早苗(さなえ)」などと同様で耕作(田植)を意味する古語の「さ」と同じで、漢字の「皐」には、もともと神にささげる稲を意味し、「みだれ」は「水垂れ」から雨を意味すると言われているようである(以下参考に記載の「皐月(さつき) - 語源由来辞典」参照)。
また、「五月雨式」と言う言葉は、梅雨時の雨のように、物事が長くだらだらと続くことである。芭蕉の最初の句も彼が、何時までもだらだら続く雨「梅雨」を嫌う気持をストレートに表現しているともいえるが、私も、ダラダラ書くのを止めないと「耳も酸うなる梅の雨」になりかねないのでこのあたりで止めることにしよう。
いよいよ、本格的な梅雨に入ったようであるが、これで、毎日欠かさず行なっていた散歩や、裏山登山などが暫く出来なくなる。メタポにならないよう、家の中で体操ぐらいは欠かさずするようにしなくては・・・。それと、昨日は激しく降っていた雨が今朝は上っている。今日のうちに、散歩をかねて、家人をアシストし、数日分の食料も買い込んでおこう・・・と。
(画像は花札「柳(雨)」の20点札。梅雨を思わせるような図柄は「柳に小野道風」。没後『書道の神』として祀られる位の平安時代の能書家。スランプに陥っていた時かえるが柳にジャンプしているのを見てスランプを脱したというエピソードがある【逸話参照】。古くは「柳に番傘」、または「柳に番傘を差して走る斧定九郎」【仮名手本忠臣蔵」5段目に登場する人物】であったそうだが、明治時代にデザインが変わり、現在の「柳に小野道風」となったそうだ。)
参考:
雑節 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9B%91%E7%AF%80
気象庁:平成21年の梅雨入りと梅雨明け(速報値)
http://www.data.jma.go.jp/fcd/yoho/baiu/sokuhou_baiu.html
助詞の種類と機能1(連体助詞) 和歌入門 和歌のための文法
http://www.asahi-net.or.jp/~sg2h-ymst/yamatouta/intro/josi01.html
雨乞い - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9B%A8%E4%B9%9E%E3%81%84
良寛 半夜 日本漢詩選 詩詞世界 碇豊長の詩詞 漢詩
http://www5a.biglobe.ne.jp/~shici/shi3_07/jpn140.htm
良寛 – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%89%AF%E5%AF%9B
後土御門天皇 千人万首
http://www.asahi-net.or.jp/~sg2h-ymst/yamatouta/sennin/gotutimikado.html
小野小町 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%8F%E9%87%8E%E5%B0%8F%E7%94%BA
小野小町・千人万首
http://www.asahi-net.or.jp/~sg2h-ymst/yamatouta/sennin/100i/009.html
雨 - 偐万葉田舎家持歌集
http://plaza.rakuten.co.jp/YAKAMOCHI35/diary/200805250000/
古橋信孝 雨の禁忌 万葉集の雨障
http://www.cosmo-oil.co.jp/dagian/42/16.html
たのしい万葉集: 雨を詠んだ歌
http://www6.airnet.ne.jp/manyo/main/nature/ame.html
芭蕉(bashoDB)
http://www2.yamanashi-ken.ac.jp/~itoyo/basho/basho.htm
俳諧データベース
http://tois.nichibun.ac.jp/database/html2/haikai/haikai_i158.html
皐月(さつき) - 語源由来辞典
http://gogen-allguide.com/sa/satsuki.html
6月28日)は「雨の特異日」
http://blog.goo.ne.jp/yousan02/e/7d6c470a82fbde5db072a49de1468279
6月1日「気象記念日」
http://blog.goo.ne.jp/yousan02/s/%C6%FE%C7%DF
花札 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8A%B1%E6%9C%AD
洗うを洗う
http://www.mizu.gr.jp/kenkyu/mizu11_arau/no11_h01.html