木原光威
中原中也「春の日の夕暮」より
トタンがセンベイ食べて
春の日の夕暮は穏かです
アンダースローされた灰が蒼ざめて
春の日の夕暮は静かです
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2014年現日春季書展出品の
木原光威先生の作品です。
淡墨で流れる線を書き
その上に、中也の詩を書いています。
この詩は、中也のごく初期の作品で
ダダイズムの影響を強く受けた作品として有名です。
昔からこの詩は知っていて、
意味が分からないなあと思いつつ
忘れられない詩でした。
今回、木原先生のこのような独創的な表現によって
この詩の魅力が一挙に分かったような気がします。
「分かった」といっては語弊があるかもしれません。
魅力が倍増したと言ったほうがいいでしょう。
「意味」が「分かる」ことは
実は、詩にとって本質的なことではない。
言葉がどれだけ魅力的かということこそが本質的です。
その意味で、「言葉」の魅力を、書の表現が倍増しているということは
ほんとうに素晴らしいとしか言いようがありません。
この書の細部をゆっくり見ていくと
尽きせぬ楽しみがあります。
どうぞ、ごゆっくり鑑賞ください。
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