蕪村
鮎くれてよらで過ぎ行く夜半の門
半紙
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蕪村の句は物語だとよく言われますが
これなどは、そのひとつでしょう。
友達が、夜にふらっとやってきて
鮎をくれた。
どこかで釣ってきたのでしょうか。
ほらっ、と言ってぽんと投げ出し
ちょっと酒でも飲んでいけよと言ったのに
じゃ、と言ってかえっていった、というような情景。
「夜半の門」が、自分と友達の間にある。
その門が、友達との交流を促すものでもあり
また断ち切るものでもある。
別に喧嘩してるわけじゃない。
だって、鮎をわざわざくれたんだから。
でも、寄っていかないで去っていく。
そんな淡い友達との関係が、
鮎の香りの中に描かれている。
しかも、黒々とした門が真ん中にある。
いい句です。