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一日一書 1569 寂然法門百首 12

2019-11-26 13:31:06 | 一日一書

 

住於十住小白花位

 

雲と見し遠方(とほち)の里の卯の花はけふ我が宿の垣根なりけり

 

【題出典】『法華文句』

十住の小白花の位に住するなり

 

【歌の通釈】

雲だと見た遠方の里の卯の花は(菩薩の位は遠くに見えたが)、今日は私の宿の垣根に咲いているよ(今日菩薩の最初の位である初住に入り、菩薩の位がわが身に近いものとなったよ)。

 

【考】

声聞の位の人が菩薩の位を遠いものと思っていたが、菩薩の修行の最初の段階に入り、その菩薩の位がぐっと近づいた。このことを、昨日までは遠方に咲いていた卯の花が、今日自分の家の垣根に咲く、という心の寄せて表現した。経文の「小白花」を堀川題の「卯花」になぞらえたもの。

(以上、『寂然法門百首全釈』山本章博著 による。)

 

▼経典の中の言葉を、日本の和歌の中の言葉で置き換える。そして、和歌の心で、経典を「翻訳」する。そうすることによって、外国由来の仏教の教えが、日本人にしみじみと分かる、ということを寂然は目指していたのでしょう。このような努力によって、仏教は日本人のこころに染み込んだのだと思われます。

▼「法華経」の「序品」には「天から四種類の花、つまり、『小白花』『大白花』『小赤花』『大赤花』が降った。それは、菩薩の修行の四つの段階(位)つまり『十住』『十行』『十廻向』『十地』に入るべきことを表して降ったのだ。」とあるそうです。修行の段階に細かく名前が付けられていることも驚きますが、その段階に「花」が関連付けられていることに感動を覚えます。どこまでも美的ですね。

▼「小白花」が「卯の花」なら、「大白花」は何だろう。山茶花かなあ。で、「小赤花」は梅で、「大赤花」はボタンかしら。なんて考えるのも楽しい。

▼以前は「はるかかなた」にあったものが、修行を積んでいくうちに身近なものとなる、という感じも、いろいろな場面でありますね。それを「昔は遠くに咲いていた卯の花が、今では我が家の垣根に咲いている。」と表現すると、実感としてよく分かります。

 

 

 

 

 

 

 



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