Yoz Art Space

エッセイ・書・写真・水彩画などのワンダーランド
更新終了となった「Yoz Home Page」の後継サイトです

一日一書 1604 曠原淑女 宮沢賢治

2020-04-05 14:41:09 | 一日一書

 

宮沢賢治

 

「曠原淑女」より

 

半紙

 

爪楊枝

 

 

 曠原淑女

 

日ざしがほのかに降ってくれば
またうらぶれの風も吹く
にはとこややぶのうしろから
二人のをんながのぼって来る
けらを着粗い縄をまとひ
萱草の花のやうにわらひながら
ゆっくりふたりがすすんでくる
その蓋のついた小さな手桶は
今日ははたけへのみ水を入れて来たのだ
今日でない日は青いつるつるの蓴菜を入れ
欠けた朱塗の椀をうかべて
朝の爽やかなうちに町へ売りにも来たりする
鍬を二挺ただしくけらにしばりつけてゐるので
曠原の淑女よ
あなたがたはウクライナの
舞手のやうに見える
 ……風よたのしいおまへのことばを
   もっとはっきり
   この人たちにきこえるやうに云ってくれ……

 

 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする