除世熱悩致法清涼
禊(みそぎ)する河べの岸に芝居して夏をばけふぞよそにききつる
半紙
【題出典】『無量義経』徳行品
【題意】 除世熱悩致法清涼
世の熱悩を除き、法の清涼を致す。
世俗の熱悩を除き、仏法の清涼の風を送る。
【歌の通釈】
禊祓えをする川岸(涅槃の岸)の芝にしばらくすわって、夏(生死の迷いの熱悩)を今日はよそのことと聞くよ。
【考】
声聞が迷いの熱悩を除き法の清涼を得ることを「六月祓」になぞらえて詠んだもの。穢れを祓い千年の命が延びるという夏の終わりの日の六月祓に、声聞が迷いの熱悩を絶ち涼しき永遠の菩薩道に入る日を思う。西行はこの題文を「身につきてもゆる思ひの消えましや涼しき風のあふがざりせば」(山家集・一五三八)と詠んでいる。
(以上、『寂然法門百首全釈』山本章博著 による。)
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仏の教えを「清涼の風」というところが素晴らしいですね。煩悩を「熱悩」というのも実感があります。
京都に清涼寺(嵯峨釈迦堂)というお寺がありますが、この意味なのでしょうか。