蕪村
易水にねぶか流るる寒さかな
半紙
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易水(えきすい)というのは、中国河北省の西部にある川。
戦国時代、燕の荊軻(けいか)が太子丹のために秦の始皇帝を刺そうとして旅立つにあたり、
易水のほとりで壮行の宴が張られた。そのおりに吟じた詩に
「風蕭蕭トシテ易水寒シ 壮士ヒトタビ去ッテ復還ラズ」というのがある。
この易水の故事をふまえるとともに、芭蕉の「葱白く洗ひたてたるさむさかな」のような
感覚的把握をこれに結びつけたものである。
(「日本古典文学全集 近世俳句俳文集」頭注による)
ねぶか(根深)は葱(ねぎ)のこと。