三千年一現
稀に咲く花の匂ひにめかれすなまた三千年(みちとせ)を待つも遙けし
半紙
【題出典】『法華文句』四・上
【題意】 三千年に一たび現ず
(優曇華は)三千年に一度のみ現れる。
【歌の通釈】
稀に咲く優曇華の花の色映えから目を離すな。また三千年後の開花を待つのも遙か遠いことだ。
【寂然の左注・通釈】
優曇華が稀に開くことをいって、『法華経』に逢い難いことを喩えた。
【語注】
「優曇華」=古来インドで神聖視される樹木。いちじくの一種。花は毎年咲くが外からは見えないため、三千年に一度咲くとされた。
【考】
漢の武帝と西王母の故事に見られる三千年に一度実を結ぶ不老長寿の桃に、同じく三千年に一度咲く優曇華の花を重ねあわせてイメージさせた歌。
(以上、『寂然法門百首全釈』山本章博著 による。)