バイデン大統領が、”ウクライナはロシアに領土を渡さなくてはいけないかもしれない(Biden says Ukraine might have to give Russia land in 'negotiated settlement’)”と発言したことを、アメリカの日刊タブロイド紙「ニューヨーク・ポスト」が報じました。
先日の朝日新聞には、バイデン大統領が、”ロシアに苦痛を与えるためだけに戦争を長引かせることはしない”と明言したという記事や、”停戦交渉か対決か 割れる欧州”と題した記事、また、”ロシア軍はウクライナ東部で、ゆっくりながらじわじわと前進している。軍事の専門家たちは、長く続く消耗戦を口にし始めている。こうした中、ウクライナ支援で連帯してきた西側諸国の一致団結に、ひびが入りつつあるのだろうか。”という記事が出ていました。
何か今までの報道とはちょっと違う印象を受けました。そして、やっぱり今までのウクライナ戦争に関わる報道は、事実の報道ではなく、アメリアが周到に作り上げたプロパガンダだったのだと思いました。
なぜなら、下記のような根拠のはっきりしない内容の報道が、あたかも疑いようのない事実であるかのように、色々な形でくり返されてきたからです。
○ ”プーチンは、首都キーウを占領しようとしてウクライナ侵攻を命じた。そして、ゼレンスキー政権を打倒して、ロシアの傀儡政権を樹立し、ロシアがコントロールするウクライナの建設を夢想した。でも、その試みは見事に失敗した。”
○ ”ロシア軍は首都キーウを占領できず、大きな損害を出して撤退せざるを得ない状況になった。”
○ ”ロシア軍は士気が低下し、脱走する者が相次いでいる。”
○ ”プーチンの歴史的な誤判断のために、世界的なパワーバランスが民主主義陣営にとって有利な状況になりつつある。”
また、建物が完全に破壊されたウクライナの惨状や、破壊された建物の近くで不自由な生活を送るウクライナの人々の様子、他国に非難した人々の訴えなどが、ほとんど、ロシアのプーチン政権を倒さなければ、改善されることはないというような結論を導く方向で、報道されてきたと思います。
でも、プーチン大統領は、ウクライナ侵攻前の演説で、
”ただ、私たちの計画にウクライナ領土の占領は入っていない。私たちは誰のことも力で押さえつけるつもりはない。
目的はウクライナの“占領”ではなく、ロシアを守るため
現在起きていることは、ウクライナ国家やウクライナ人の利益を侵害したいという思いによるものではない。
それは、ウクライナを人質にとり、我が国と我が国民に対し利用しようとしている者たちから、ロシア自身を守るためなのだ。
ウクライナ軍の軍人たちにも呼びかけなければならない。
親愛なる同志の皆さん。
あなたたちの父、祖父、曽祖父は、今のネオナチがウクライナで権力を掌握するためにナチと戦ったのではないし、私たち共通の祖国を守ったのでもない。
あなた方が忠誠を誓ったのは、ウクライナ国民に対してであり、ウクライナを略奪し国民を虐げている反人民的な集団に対してではない。
その(訳注:反人民的な政権の)犯罪的な命令に従わないでください。直ちに武器を置き、家に帰るよう、あなた方に呼びかける。”
と言っています。
こうしたプーチン大統領の演説の内容をまったく取り上げず、無視して、”プーチンの夢想”だとか、”キーウの占領”だとか、”傀儡政権の樹立”だとか”撤退せざるを得ない状況”とか”士気の低下”いうことは、アメリカのプロパガンダの証しではないかと思います。
そしてそれは、ロシアをヨーロッパから切り離し、孤立化させるために、戦争を画策したのがアメリカであるということ、したがって、いつでもロシアとの停戦交渉が可能であることを示していると思います。
ベトナム帰還兵としての実体験をもとにした映画『プラトーン』で知られる米国の映画監督オリバー・ストーンは、インターネット討論番組「PBD Podcast」に出演し、現在のウクライナ情勢について、下記のようなことを語ったといいます。
”残念ながら現在のアメリカのすべてのメディア報道は一方的なものであり、反対側(ロシア側)からは何も得ようとしない。公平なキャンペーンをしていたRT(ロシア発の国際放送局)さえも放送禁止にし、実際に起きていることさえも偽情報として眼に触れさせないようにしている”
”実際に2014年からウクライナ東部のドンバス地域では、ウクライナ軍によって住民が犠牲にされ、とくにネオナチ(ナチズムに由来する極右民族主義)の武装集団が彼らを血まみれにし、ロシア系住民1万6000人が殺されたと推定されている。これはプーチンを挑発するためのもので、 アメリカが代理としてウクライナ政府にやらせているというのが真実だ。 ”
オリバー・ストーン監督は、プーチン大統領に何度もインタビューを重ねて、ドキュメンタリー「オリバー・ストーン オン プーチン」を世に出しましたが、『JFK』、『ニクソン』、『スノーデン 』などの映画を通して、徹底的に真実を追究する映画監督であることが、よく知られていたと思います。 そして、オリバー・ストーン監督の上記の主張は間違っていない、と私は思います。
アメリカの国家安全保障局(NSA)が、莫大な予算をつぎ込んで秘密裏にクリプトシティでやっていることも、ウクライナ戦争と深く関わっているのではないかと想像します。 だから、スノーデンが暴露した、明らかに違法な情報取集というが、放置されてはならないと思います。
下記は、「すべては傍受されている 米国国家安全保障局の正体」ジェイムズ・バムフォード:滝沢一郎訳(角川書店 )から、異常とも思えるその施設の概要を記した「第十二章 心臓」を抜萃しました。
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第十二章 心臓
鉄条網付きのフェンス、爆薬を嗅ぎつける番犬、数百人の武装警官、スワットチーム(狙撃部隊)、バリアー、脅し文句の入った警告表示板などを越えていくと、その表面の下に暗号都市の諸機能があり、一階レベルで見ればそこいらの街と変わらない。
どんな地図にも載っていないが、クリプトシティは全体としてはメリーランド州最大級の自治体であろう。 平日には毎日三万二千人の特別許可を受けた民間人、軍人、出入業者が延べ三十二マイルの構内道路を行き来している。 その一つ一つの道には過去のNSA著名人の名がつけられている。 一万七千台を収容する駐車場の広さは三百二十五エーカー。 五十棟あるビル群の総床面積は七百万平方フィートである。 成長という点から言えば、クリプトシティは米国内でもいちばん元気のいい都市の内に入る。 1982年から96年までに五億ドル以上の施設が新設された。 さらに約五億ドルが投入されて百五十平方フィートの貸しオフィススペースができた。 また新千年紀に至る数年間に一億五千二百八十万ドル以上が新築費用に充てられた。 クリプトシティの予算は、久しく極秘とされていたが、市内のエンジニアリング・トンプスンは「われわれが四十億ドルの予算と現員数の職員に依って立つ民間企業とすれば、ヒューレットパッカード社くらいのところに相当するだろう」と述べた。
事実、1995~99年のNSA予算は総額百七十五億七千六十万ドルである。 さらに2000~01年度の予算として七十三億四百万ドルが要求された。 NSAの職員数はCIAとFBIの職員数を合計したものより多い約三万八千人。 その上さらに二万五千人が数十カ所の傍受基地を運用するNSAの中央保安部(CSS)に雇われている。 これらはNSAの職員数には入っていない。
クリプトシティでは三万七千台以上の車が登録されている。 その郵便局は毎日七万通の郵便を配達する。 秘密都市の警護・パトロールには自前の警官が当たり、彼らは二州にまたがる法執行権限を持つ。 米国内にある一万七千三百五十八ヶ所の警察署のうち、規模では上位四・八パーセントに入り、署内にはスワットチームさえある(Special Weapons And Tactics=特殊武装及び戦術チーム)。
NSAのパトカー群は月平均延べ三千八百五十マイルを走行し、年間七百件の緊急電話に対処する。
1990年にはクリプトシティ警察の制服署員数は七百名を超えた。 その装備は緊急事態対処用であるばかりか、それをまったくの秘密のうちに実行できるものである。 STUーⅢ秘話携帯電話と暗号化閉会路テレビを備えた緊急対応通信指令所が使える。 この技術により市内の危機管理センターおよびその支援サービス業務センターと秘密通信ができる。 これは二十四時間勤務の指令、管制、通信センターである。
脅威が発見されるようなことがあれば、クリプトシティには自前の特殊部隊/緊急対応チームがある。 隊員は軍隊式の黒い制服を着用、特殊ヘルメットをかぶって、九ミリ口径のコルト・サブマシンガンを誇示する。 NSA医療センター付きの二つの軍医班がこのチームにつき従う。 高度警戒態勢のとき、また、それ以外のときには抑止力として、黒装束組といわれるこのチームは、各外部通用口で立哨する。 もうひとつの特殊班である幹部警護隊は、NSA長官と副長官に運転手やボディーガードを提供し、これら二名の高官が姿を現す予定の場所で予め保安措置を講ずる。
NSAの周辺保安対テロプログラムは増強され、その一環として全市を取り囲む新しいフェンスとバリアーが設置されつつある。 完成すれば、クリプトシティに入城を許可される前に先ずすべての非登録車両は、四百万ドルを投入した新検査センターで爆弾などの危険物検査を受けなければならない。 そこでは犬訓練士と特殊訓練を受けた十一頭のダッチシェパードとベルジアンマリノワ犬の一団が乗用車やトラックに近づき、爆弾を嗅ぎ分ける。 これらオランダから輸入された犬たちはまた業務支援用や緊急対応事態にも使われる。
犬小屋、リモコンドア、猛暑から犬を守る気温モニター装置を備えた特注チェロキージープで犬は構内各所に運ばれる。 現在はまだ限定使用状態だが、爆発物検出特殊犬隊は週平均七百五十台以上の車両を検査する。
クリプトシティの年間電力消費量は、四億九百万五千八百四十キロワットアワーであり、これが総延長六百六十二マイルの電線で送電される。 これはメリーランド州の州都アナポリスのものに匹敵する。 コンピューターの総設置面積は六エーカー、総重量は二十五トンのエアコン装置は年間六十億立方フィートの空気を冷却し、照明は灯は五十万個以上あるから、これだけでも一日五千四百ワットの電力を使う。 そのツケも驚くべきものであり、毎月の電気料金は二百万ドルに達する。 州内で二番目の大口電力使用団体である。 1992年に構内で消費された石油、電力、ガスは三兆互千億But〔But=0.252kcal〕であり、燃料油換算で三千三百万ガロンに等しい。
このように膨大なエネルギーが供給されているが、NSA文書によると、それでもクリプトシティが停電に見舞われ、「緊要任務情報」が失われることがある。 こういう機能不全に対処するため、構内には出力二十六メガワットの自家発電所がある。 これは三千五百世帯分の家庭電力をまかなえる発電量である。
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