真実を知りたい-NO2                  林 俊嶺

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プロパガンダと国家安全保障局

2022年06月03日 | 国際・政治

 先日、衆議院予算委員会の集中審議で、れいわ新選組の大石晃子議員が、岸田総理を「」などとののしり、委員長に注意されたという報道がありました。ののしった言葉のなかに、「資本家の犬」という言葉もあったようですが、これは多くの国で見られる政権与党の共通の問題なのではないかと思います。
 共産主義革命や民族解放闘争によって生まれた国家でない限り、政権与党の政治家は、ほとんどの国で資本家や経営者の求める政策を掲げ、資本家や経営者はそうした政策を掲げる政治家を支援するという「持ちつ持たれつの関係」にあるということです。

 その結果、世界中で経済格差が拡大し、グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンにマイクロソフトを加えたアメリカのGAFAM、5社の時価総額がおよそ560兆円に達し、東証1部約2170社の合計を上回わるというような状況に至っているのだと思います。先日、ツイッターの買収で話題になった、テスラのイーロン・マスク氏の個人資産は、約3000億ドル(約37兆円)にのぼるいわれます。アメリカの一部企業や富裕層への富の片寄りは異常ではないかと思います。

 フランスに拠点を置く世界各国の経済学者などによる研究グループの調査では、世界の成人人口の上位1%に当たるおよそ5100万人の富裕層だけで、世界全体の個人資産の37.8%を保有しているとのことです。逆に、下位50%の層の資産は、全体の2%にとどまっていているといいます。
 だから、”大規模な富の再分配なくして21世紀の課題に取り組むことはできない”と結論づけているのです。そして、高額所得者を対象にした「富裕税」や、「多国籍企業への課税」が必要だと指摘しているのですが、私は、それでも、格差拡大の問題は解決できないのではないかと思います。

 この格差の問題は、労働者の立場から言えば、「資本論」で有名なカール・マルクスが指摘した「窮乏化」の問題です。資本主義国家では、時代が進めば、資本の論理によって必然的に多くの労働者が窮乏化し、格差が拡大するのです。
 だから、窮乏化を乗り越えるために、マルクスは、”万国の労働者よ、団結せよ!”というスローガンを掲げ、共産主義革命を呼びかけたのです。
 でもその革命が、資本家や経営者の巧みな戦略によって、事実上あり得ない状況になっている現在、格差が拡大しないようにするためには、賃金を定める方法について、厳しい法律(国際法)を作るなどして、資本家や経営者が、自由競争の名の下に、恣意的に賃金を定めることを禁じる必要があると思います。そうしなければ、格差の拡大は止められず、労働者がさらに窮乏化するとともに、先進国と発展途上国の間の格差も拡大し、ますます深刻なものになると思います。そして、それがさまざまなところで、さまざまな争いを引き起こすことにつながると思います。

 西側諸国の頂点に立つアメリカが、”大規模な富の再分配なくして21世紀の課題に取り組むことはできない”ということをしっかり受けとめ、方針転換しなければ、人類は破滅を免れない時期に差し掛かっているように思います。地球温暖化や気候変動問題、海洋汚染や森林破壊、野生動植物の絶滅問題など、人類が直面している問題は、どれも待ったなしの状況だと思います。
 でも、アメリカは、今なお、世界中から利益を吸い上げ、その経済力や軍事力を背景に、絶対的権力を維持しようとしているように思います。だから、ヨーロッパに対するロシアの影響力拡大を阻止したり、中国の一帯一路構想に基づく関係国への影響力拡大を阻止したりし、より多くの国々を影響下に置ことによって、自ら危機を乗り越えようと躍起になっているのではないかと思います。


 だから、ウクライナ戦争に関わる報道はもちろんですが、その他の報道でも、世界中の人々が、アメリカによるプロパガンダのもとで生活していると言っても過言ではないのだと思います。
 かつて、アメリカ国家安全保障局 (NSA)や中央情報局 (CIA) の元局員であったエドワード・ジョセフ・スノーデンは、それまで陰謀論として退けられていたようなアメリカによる違法な国際的監視網(PRISM)の実在を命がけで告発しました。
 そして、現実にロシアとノルドストリーム2の計画を進めていたドイツのアンゲラ・メルケル前首相の携帯電話が、11年間にわたり盗聴されていたという事実が明らかにされました。メルケル前首相は「友好国に対するスパイ行為は絶対に受け入れられない」してアメリカに強く抗議したということですから、アメリカのメディア・コントロールやプロパガンダが、違法な情報収集によってなされるほど徹底しているということだと思います。

 ジェイムズ・バムフォードによると、どんな地図にも載っていないというアメリカ国家安全保障局 (NSA)の存在する、クリプトシティは、全体としてはメリーランド州最大級の自治体であろうといいます。そして、鉄条網付きのフェンスに守られているのみならず、爆薬を嗅ぎつける番犬がおり、数百人の武装警官やスワットチーム(狙撃部隊)も抱えていると言います。そして、毎日三万二千人の特別許可を受けた民間人や軍人が働き、出入業者が仕事をしているといいます。その駐車場は、およそ一万七千台を収容することができるというのです。また、五十棟あるビル群の総床面積は七百万平方フィートであるというのですが、そうした事実が、アメリカという国の本質をあらわしているように思います。そうしたところで、周到に準備されたプロパガンダが、計画的に発せられているのではないかと思うのです。特にウクライナ戦争に関する情報は、アメリカ国家安全保障局 によって統制され、バイデン大統領やゼレンスキー大統領も、その統制下でいろいろな発言をしているのではないかと想像します。

 そういう意味では、かつてアジアやアフリカその他の植民地を支配し、今なお、発展途上国などから利益を吸い上げているような国々のメディアは、政府と一体であると思いますが、 ノーム・チョムスキーのリビア空爆に関する、下記のような話が、それを裏付けていると思います。

 下記は、「チョムスキーが語る戦争のからくり ヒロシマからドローン兵器の時代まで」(ノーム・チョムスキー、アンドレ・ヴルチェク:本橋哲也訳から抜萃しました。
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                      第三章 プロパガンダとメディア

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N・C(ノーム・チョムスキー)
 私にはチャーリー・グラスという親しい友人がいて、長年ABCテレビの中東特派員をしています。人間はとてもいいのだけれど、一人で仕事をするタイプなので他人とあまりうまくいかず、とうとうABCテレビから干されてしまった。1986年のリビア空爆の夜、彼がトリポリから6時半ごろ電話してきてその夜の七時のニュースを見ろと言う。当時はアメリカの三つのチャンネルがどれも七時にメイン・ニュースを放送していて、彼は私がテレビを見ないと知っていたのだけれども、それでも「今夜は見てくれ」と言うのです。そこで七時にテレビをつけてみたら、まさにきっかり七時に空爆が始まった。そしてすべてのテレビ局がトリポリにいた。

A・V(アンドレ・ベルチェク)
 みな事前に知らされていたのですね。

N・C(ノーム・チョムスキー)
 そういうことです。主要テレビ局が全部ね。なかなか大変なことですよ。フランスが上空を飛びことを許さないので、大西洋の上を飛ばなくてはならないから、ロンドンからだと六時間かかる。その時間まで測って、ちょうど夜のニュースに間に合うように空爆の時間を決めたのですね。だから視聴者が爆弾の破裂で興奮すると、映像はペンタゴンに替わり、ペンタゴンの冷静なコメントのあとには国務省に替わるといった具合。つまりテレビ局はアメリカ政府にただでプロパガンダを一時間させたわけ。すべて知らされていたから現地に人を事前に送り込むことができていた。テレビ・ニュースのゴールデン・タイムに合わせて空爆がおこなわれた歴史上最初の事例であることを指摘した人は誰もいませんでした。

A・V(アンドレ・ベルチェク)
 似たようなことがのちにベオグラードの爆撃でも起こりましたね。

N・C(ノーム・チョムスキー)
 ベオグラードでは、テレビ塔が爆撃されて人権団体が抗議しましたが、爆撃したほうは「そうは言ってもね、間違っていませんよ。テレビはプロパガンダ機関ですから。ニュースを流しているんですからね」と言った。
 同じことがイラクのファルージャでも起こりました。覚えておいででしょうが、アメリカの侵攻時に海兵隊がいちばん先にファルージャでしたことは総合病院の接収だった。患者をすべて床に放り出して縛ってね。ジュネーブ条約を持ち出して避難した人もいたのですが、米軍は病院がプロパガンダ機関だと言った。犠牲者を公表しているので破壊する権利があるというわけ。報道機関もそれに追随するのみで誰もコメントしませんでした。
 ファルージャでの放射線量は、ほぼ原爆投下時の広島と同じくらいだと言われていますね。どんな武器が使われたにしろ、その損害は甚大なものがある。

A・V(アンドレ・ベルチェク)
 実際イラクじゅうがそうですよね。放射線量が致死量に達しているところもあって、そのレヴェルは信じがたいほどです。人は西側諸国の公式プロパガンダを驚くほど簡単に信じてしまう。私は東ヨーロッパで育ったので、公式の政府発表を国民がまったく信じないというのは当たり前の感覚なのですが、ですからある意味では東ヨーロッパの人々の、世界や自分の国で起きていることに対する認識レヴェルはとても高い。
 東側の人たちは自分たちの国のシステムによって犯された「犯罪」のことを知り尽くしていた。西側諸国が犯したもっとひどい犯罪のことはそれほど知らなかったかもしれませんが。東ヨーロッパの人たちの見解は、何十年もラジオやテレビを通した西側のプロパガンダによって形作られてきた。彼らを洗脳してきたのはソ連のプロパガンダではなく、西側諸国のそれだったのです。それでも世界のほかの場所でどんなことが起きているかについての意識や関心があった。1985年にアメリカ合衆国にやってきてコロンビア大学の映画学校にいたのですが、そのときリビアが空爆されました。もちろんコロンビアの学生たちは空爆を批判していたけれど、町に出てみてショックだったのは、一般の人たちがまったく関心も批判意識もないことでした。アメリカ合衆国や西ヨーロッパの人たちよりも、東ヨーロッパの人たちのほうが自分たちの抱えている問題についてずっと情報も知識もあったし、自分たちのシステムについて批判的でした。
 世界のあらゆる大陸に住んでみて、「西洋人」がいちばん偏見を叩き込まれていて、地球上でいちばん無知で批判意識に乏しいと思いますね。もちろんサウジアラビア国民のような、同じくらい物を知らない人たちもいますが、それなのに西側諸国の人たちはまったく反対のことを信じている──自分たちこそがいちばん情報に恵まれ、「もっとも自由な」国民だとね。

N・C(ノーム・チョムスキー)
 このことに関する興味深い研究が1970年代の後半にありました。ロシアの複数の大学の研究所が政府と共同でおこなった研究で、ロシアから外に出た移民がロシアにいたあいだにどこから情報を得ていたかを調べたものです。驚いたことに、ほとんどのロシア人たちがきわめて高い確率でBBC放送を聞いていたというのが結論だった。

A・V(アンドレ・ベルチェク)
 当たり前です。こうした人たちは自分から進んで「違う側」から情報を得ていたのだから。私はピルゼンで育ちましたが、そこはバイエルンとの国境に近かったので西側のテレビやラジオを受信するのはとても簡単でした。冷戦の真っ最中でも、共産主義チェコスロバキアで外国のテレビ局はまったく妨害されていなかった。英語放送はどこからのものだろうと自由に聞けましたし、そうした地域の住民は、少なくともいくつかの言葉を話したり理解したりすることができた。

N・C(ノーム・チョムスキー)
 BBCにはロシア語放送もありましたね。

A・V(アンドレ・ベルチェク)
 BBCは普通どの言語も、とくに英語放送は妨害されませんでした。「ヴォイス・オブ・アメリカ」や、公然とプロパガンダを放送する「ラジオ・リバティ」とか「ラジオ・フリー・ヨーロッパ」とかは地域によって妨害されていましたけれど。しかし考えてみると情報に対する飢えは相当なもので、それを西側諸国のプロパガンダ・メディアは最大限に利用していた。ニュースのまとめ方も上手でしたし、何世紀も積み上げてきた経験からその宣伝方法は巧妙でしたたかだった。たとえ東ヨーロッパ諸国が正直に熱を込めて、ヴェトナム戦争やニカラグアのアメリカ合衆国に支援されたコントラ〔1979~90年に、米国の援助を受けてニカラグアのサンダニスタ民族解放戦線政府の打倒を画策した反革命ゲリラ〕の問題をイデオロギーの側面から取り上げても、西側の洗練された嘘には対抗できずに、プラハやブダアペストそれにモスクワでもほとんど誰も信用しなかった。私がアメリカ合衆国にやってきてショックだったのは、いかに自分が西側諸国のプロパガンダに騙されていたかとうことでしたね。
 ここにパラドックスがある。自由でオープンで民主的であると自称する西側諸国は、かつてのソビエト連邦や現在の中国で作っれるプロパガンダにアクセスもできなければ、それに影響されることもなかった。プロパガンダだけではなくて、ほとんど西ヨーロッパやアメリカ合衆国の市民はソヴィエトや中国の人たちの世界観から影響を受けていない。ほとんど何も知らない彼らの世界観は一極的です。あるのは一つのイデオロギーだけで、それは「市場原理主義」と言っていい。それを支えているのが複数政党国会システムないし立憲君主制です。一方、旧ソ連や中国の人は、昔も今も資本主義や西側の共産主義解釈に精通している。ということは、どちらがよりオープンで知識に恵まれているのか、ということですね。中国の本屋を覗くと、資本主義の文献もたくさんある。アメリカ合衆国やヨーロッパの本屋には共産主義中国の文献などまずない。
 
 つまり私が中国の『人民日報』とか『チャイナ・デイリー』とかに書いたり、中国のメディアでしばしばインタビューを受けるときに言っているのは、西側のプロパガンダに十分注意すべきだし、それが中国を標的にしていることに意識的であるべきだということ。それは情報をもたらすためではなく、国を破壊するためにおこなわれているのだ、と。
 ですから私はキューバとか中国のような西側の包囲下にある国が、そのサイバー空間やメディアを完全にオープンにしてしまうことには注意しすぎることはないと思っています。私が恐れているのは、国を破壊することを目的としている西側諸国のプロパガンダが入り込むことによって、チェコスロヴァキアやソヴィエト連邦が崩壊を余儀なくされたようにならないかということです。私は検閲を擁護しているわけではないけれども、同時に西側の電波やウェブサイトがいかに悪質で破壊的であるかを知っている。その主要目的は傷つけ破壊することで、情報をもたらすことではない。
 中国についてどんなものを読んでいたとしても、実際に行ってみれば西側の報告を読んで想像していたのとはまったく違う国であることがわかって、人は衝撃を受けるでしょう。私たちが教えられてきたこと、中国の人たちが西側のマスメディアやプロパガンダ・システムから自分たちの国について言われてきたことはまったく違った国がそこにあるのですから。問題はとても複雑です。

N・C(ノーム・チョムスキー)
 そうですね。巧妙で複雑なプロパガンダ・システムを構築するのに、長いあいだ集中的で非常に込み入った活動が続けられてきた。アメリカ合衆国では広告によって人々を洗脳することが主で、市場操作や広告に莫大な資金が投入されて消費社会を支える。たとえば数年前に広告会社が気づいたことですが、自分たちの広告が届いていない人たちがいる、つまりお金を持たない層である子どもたち。そこで英知が動員されて子ども向けのプロパガンダが作られ、金を持っている親に子どもたちがせがむようにさせた。ですから子どもたちが親に要求して、あれこれが欲しいと言うと親が買ってやる。
 いまではそれが学問分野になって、応用心理学のなかにせがむことを研究する部門もできています。目的が違えばせがみ方も違う。私もたまにありますが自分の孫とテレビを見ていると、もう二歳くらいから消費者向けのメッセージの爆撃にさらされている。聖域なんかもうない。だから外国向けのプロパガンダとなると、そのテクニックはすべて経験済みなのです。
 このことに大きく影響された人物の一人がゲッペルス〔ナチス・ドイツの宣伝相〕ですね。彼自身書いていますが、ナチス・ドイツのプロパガンダのモデルはアメリカの商品広告にあり、じつに洗練されいる。

A・V(アンドレ・ベルチェク)
 私がいいたいのもまさにそういうことで、広告こそがプロパガンダで、その逆もまた言える。ある意味、プロパガンダは特定の政治経済システムを売って特殊な世界観を促進する広告の試みですから。売り込むのは掃除機だけとはかぎらない……。

N・C(ノーム・チョムスキー)
 そうですね。また、広告について一つ明らかな事実があるのに誰も指摘しようとしないのが興味深いのですが、それは広告が市場に対抗するものだということです。経済学の授業では、合理的な選択ができる知識のある消費者によって市場が支えられていると習う。でもテレビの広告を例にとると、その目的は不合理な選択をする無知な消費者を作り出すことにある。ここにあるのは凄まじい矛盾ですよ。私たちは市場を愛すべきで、市場を維持するためにさまざまな理論や経済学者、連邦準備制度とかが動員されている。なのにそれをひっくりかえそうとする巨大産業がつねに消費者の目の前にあって、しかもその矛盾がまったく見えていない。同じことが選挙でも起きていますね。いまや選挙の目的は民主主義を邪魔することです。選挙を牛耳っているのは広報産業で、彼らがやろうとしているのは正しい情報をもって合理的な選択をする選挙民を作ることではない。不合理な選択をするよう人々を騙しているのだから。市場の邪魔をするのに使われているのと同じテクニックが民主主義を阻害している。それがアメリカ合衆国の主要産業の一つであって、その働きは目に見えない。

 

 

 


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