2月上旬に、西ロンボクのバゲッ・クンバールというマングローブ植林地で、持続可能な観光利用について考えるワークショップを開催しました。
(ワークショップの様子はこちら。ただし、インドネシア語)
このワークショップを実施するのは、2か所目です。(前回は東ロンボクのギリ・ランプで実施)
3ヶ所目はこちら⇒(南レンバール村)。
WORKSHOP PARIWISATA MANGROVE BERKELANJUTAN BAGEK KEMBAR,Sekotong, Lombok barat OLEH YUI TOOL
バゲッ・クンバールは、デンパサール沿岸海洋資源管理センター(BPSPL:Balai Pengelolaan Sumberdaya Pesisir dan Laut)が2016年に実施した、マングローブ植栽による沿岸地域リハビリテーションプログラムによって整備されました。
バゲッ・クンバールは、マングローブ林でのエコツーリズムを推進しています。
バゲッ・クンバールのミッションは「3つのE。つまり、エコロジカル・エコノミー・エデュケーション」だそうです。
エコロジカルとは、すなわちマングローブエコツーリズムの開発は、沿岸地域に不可欠な生態系であるマングローブ生態系を維持および回復すること。
エコノミーとは、すなわちマングローブエコツーリズムの開発は、マングローブ地域周辺のコミュニティに追加の経済的収入を提供すること。
エデュケーションとは、すなわちマングローブエコツーリズムの発展は、ますます多くの人々にマングローブ生態系の重要性を認識させ、保全活動に積極的に関与したいと考えてもらうこと。
と、理念は整っていますが、見たところ普通のマングローブ植林地で、学校向けに植林プログラムを提供している以外に特に目新しいものはまだありません。魚だかエビの養殖をしているのと、塩づくりをしているのが特色と言えば特色のようです。
さて、そんなバゲッ・クンバールでゆいツールは、すでに2回活動を行ってきました。
ゆいツールボランティアによるマングローブ植林活動(2021年11月)と、子供たちへの「ごみについて考えるプログラム」の実施です。
そして今回は、村の住民グループを対象に、持続可能な観光利用について考えるワークショップを開催しました。
ワークショップの内容は、1月にギリ・ランプで行ったものと同じです。
「持続可能な観光について考えよう!」
2月6日(日)10:00~16:00
1.「持続可能な観光ってなんだろう?」プレゼンテーション(ティウィより)
2.「マングローブ林観光を持続可能に発展させるために必要なことは?」
【ディスカッション1】
Q1.「あなたの村の近くのマングローブ林に、観光客を呼ぶためにできることはなんですか?それらは、次の誰ができますか?」
地方自治体や州政府、村役場、民間企業・民間団体、地域住民・子供たち、旅行者…
●マングローブ林環境教育の好事例(沖縄)の紹介
オリジナルビデオ教材「マングローブ・トレッキング」「マングローブ・カヌー」(ビデオはインドネシア語の字幕つき)
今回は、コンポストの家(バレ・ランタン)のプロモーションビデオも見てもらいました。
【ディスカッション2】
Q2.「ビデオから学べたことはなんですか?」
3. サステイナブル・ツーリズム(持続可能な観光)の国際基準の紹介(ティウィより)
【ディスカッション3】
Q3. 「次のテーマについて、持続可能な観光として発展させるにはどうしたらいいか考えてみよう」
- カフェやレストラン
- カヌープログラム、トレッキングプログラム
- 管理団体の設置
さて、ディスカッション1の成果です。
Q1.「あなたの村の近くのマングローブ林に、観光客を呼ぶためにできることはなんですか?それらは、次の誰ができますか?」
地方自治体や州政府、村役場、民間企業・民間団体、地域住民・子供たち、旅行者…
グループ①
・政府、地域住民、民間セクターが関与するマングローブ林のリハビリテーション
(リハビリテーションとは、マングローブ林の維持、植林/拡大、修復、保全のためのあらゆる努力を意味する)
・塩づくりの家を整備する(政府と地域住民の協力)
・サバヒーと呼ばれる魚の養殖と塩づくりをパケットにする(政府と民間セクターの協力)
→これは、魚の養殖についての説明や料理の仕方などを紹介したり、塩づくりの様子を説明することを指しているようです。
・宿泊施設の運営(政府、地域住民、民間セクターの協力)
・カヌーやボートの設備(政府と民間セクターの協力)
・料理施設(政府、地域住民、民間セクターの協力)
・漁師のための道具(政府と民間セクターの協力)
・カニやエビなどの天然資源を市場に出すための市場/マーケティングの提供
・ジップラン(ターザンロープの発展型)の設置
グループ②
・ツアーパケットを作るための教育(政府または民間セクターとの協力)
・プラスチックごみや使用済み紙おむつの処理(政府の協力)
・海外からのツーリストを迎えるための外国語教育(政府と民間セクターの協力)
・ビジネスとマーケティング開発のための教育
・自然学校の提供(プログラム実施とよいマーケティングが必要)(政府と民間セクターの協力)
・子供たちが学習するための施設や学習ツール
・マングローブ林トレッキングルートの設置
グループ③
・清掃用具やごみを運ぶための車両
グループ④
・カニを捕まえるための道具
・カヌーと調理器具の調達
グループ⑤
・ごみを集める場所やお祈りをする施設
・公衆トイレの設置
(ワークショップ前日に、ゆいツールボランティアがカヌー体験をした様子)
次は、ディスカッション2の成果です。
Q2.「ビデオから学べたことはなんですか?」
●マングローブ林環境教育の好事例(沖縄)の紹介
オリジナルビデオ教材「マングローブ・トレッキング」「マングローブ・カヌー」(ビデオはインドネシア語の字幕つき)
今回は、コンポストの家(バレ・ランタン)のプロモーションビデオも見てもらいました。
各グループからの意見
・マングローブに関連する展示または情報センター
・コンポストハウス
・ツアーガイドのトレーニングと学習ツール
・カヌーやボートを利用する際の救命衣
・ツアーガイドの言語とコミュニケーションスキルアップのためにツアーガイドのトレーニングが必要
・クルーズ船がバゲック・クンバールに到着しやすくするため、マングローブのトレッキングパスを海岸とミニ桟橋を越えて延長する
・地域住民は生態系に関連する知識を持っていても、村ツーリズムの管理や観光客へのコミュニケーションに関連するスキルが足りない
・危険に関する警告板の作成
ディスカッション3については省略します。
(同じく、マングローブ・カヌー体験の様子)
【考察】
ディスカッションの成果を見ると、現在バゲッ・クンバールでは観光のための様々な施設や用具が不足しているのがわかります。
そのような施設の設置のためには、政府(州政府だけでなく、村役場等も含めて)の予算を確保するための計画づくりが必要ではないか、と私は感じています。
みんなが、「あれが欲しい」「これが欲しい」と勝手に言っていて、村長など権力を持っている人だけの声が通る観光開発では、意味がありません。計画を作るために、住民グループと一緒に考えるプロセスが必要です。
そのプロセスのサポートは、ゆいツールができることです。
また、今からでも始められる観光ビジネスの開発は民間セクターと協力して住民グループが行っていって欲しいと思いますが、その開発の際には、今回学んだ「持続可能な観光」の視点が欠かせません。
そして、ゆいツールが提供できる「マングローブ林環境教育プログラム」ツール、プラスチックごみの活用やコンポストづくりの知識、来年度計画しているガイドへの研修なども、とても重要だと思いました。
実は、このバゲッ・クンバールは、インドネシアの海洋・漁業省のスタッフがわりと頻繁に訪れていて、フォローアップをしています。
先日、ゆいツールのボランティアが、ジャカルタから来た海洋・漁業省のスタッフのスサンティさんと直接会って打ち合わせする機会がありました。(その後、ZOOMでゆいツールの山本とゆいツールボランティアと、ベタートゥギャザーのメンバー等と顔合わせもしました)
スサンティさんは、政府の職員であると同時に、Better Together(ベタートゥギャザー)というネットワーク団体のメンバーでもあり、「デジタル・マングローブ」という活動を推進しています。
デジタル・マングローブとはいったい何か。はじめ私は、マングローブ学習ツールのことかと思ったのですが、そうではなくて、マングローブを植林するときにただ植えっぱなしにするのではなくて、植えた後の管理や追跡を可能にするプログラムのことのようです。
植えるマングローブの苗木に印をつけて、GPSで確認できるようにしたり、生育状況を写真で確認できるようにするものだそうです。
ちょっとまだお互いに、どんなプログラムを実施しているのかよくわからないので、また機会を見つけてプレゼンし合いましょう、ということで合意しました。ともかく、環境保護のために、お互い協力したりネットワークすることはとても重要なことなので、今回の出会いが活動が発展するきっかけになったらうれしいです。
さて、バゲッ・クンバールではゆいツールが、今月末に内陸の村の子供たち向けに、マングローブ植林体験プログラムを実施します。
その際に、今年度開発してきた「マングローブ林環境教育プログラム」ツールの試行を行います。
バゲッ・クンバールでのワークショップでも、子供たちへの学習ツールが必要、という声がありました。
ゆいツールは、大きな施設は造れませんが、学習ツールの提供やガイドのトレーニング、コンポストづくりの指導などはできるし、持続可能な観光のための計画づくりのお手伝いもできそうです。
ワークショップは、持続可能な観光への第一歩です。
ゆいツールの活動が、未来への種まきとなりますように。(山)
(参加者集合写真)
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