◎◎◎スタッフコラム◎◎◎
「戦争は最大の環境破壊である」
これは世界の環境団体の共通認識で、私自身も強くそう思っています。
ウクライナへロシア軍が侵攻して戦争が激化していく中、私が考えていたのは、橋やアパートや病院や学校などの建物(そしてもちろん、道路や発電所などのインフラ)が破壊されていくこと、それが古いとか新しいとか全く関係なく、敵のミサイルが飛んできて壊されていくこと、それらを造るためにどれだけのエネルギーや資源がかかっているのか、ということでした。
人の命が失われることへの憤りとあわせて、人の暮らしが破壊され、資源やエネルギーが無駄になることへの憤りを強く感じています。
(かつて訪れたアフリカ・ケニアの風景。映画とは関係ありません)
さて。先日、「グレート・グリーン・ウォール」という映画を観てきました。
アフリカのサヘル地域に、全長8,000kmのグレート・グリーン・ウォール(緑の長城)を築く計画があり、マリ出身のミュージシャン、インナ・モジャがいくつかの国を訪れアフリカの現実を目の当たりにしながら、各地のミュージシャンとコラボをして曲を作って旅をする、という内容でした。
映画から私が受け取ったメッセージは、「気候変動が人々の移動の理由になり、移民や難民が増える原因となる」というものと「気候変動により人々が暮らしを維持できなくなり政情が不安定になると、ボコ・ハラムのような過激派組織が台頭して、さらに難民を生み出す」という2点でした。
アフリカの砂漠化を止めることは、アフリカの人たちが生まれた場所で家族を養いながら暮らしていけることに繋がり、暮らしが安定すればヨーロッパなどに難民として押し寄せることもなくなり、若い人たちが自分の国で実力を試すことができれば、アフリカはもっと発展していくのではないか、と思いました。
私が通っているインドネシアも、国内で働いてもたいしたお金は稼げないから、日本のような豊かな国に出稼ぎにでて、手っ取り早くお金を稼ぎたい、とほとんどすべての若者が考えています。
アフリカの場合はもっと切実です。一家の長男などに期待を背負わせてヨーロッパなどへ送り出し、仕送りや家族として呼び寄せてもらうことを期待したり、家族総出でアフリカを脱出しようと試みたり。
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「グレート・グリーン・ウォール」は、紛争、干ばつ、テロ、食糧不足など様々な問題で疲弊しているサヘル地域に、豊かな生態系を復活させ、肥沃な土地を作り、サヘル地域の数百万人の生活を変革することを目的に開始されたアフリカ主導によるプロジェクトです。(映画概要より)
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グレート・グリーン・ウォールは、人間が暮らすために作物を育てられる土地をモザイク状に配置して、緑の帯のように西海岸から東海岸へ繋げていきましょう、という計画です。
2007年から始まり、まだ全体の15%しか進んでいません。
映画の中では、若い人たちに希望を与えたい、とモジャたちミュージシャンが歌詞とメロディをつむぎ、曲を作っていきます。
自分の国で未来が見えない若者は、別の土地へ出て行ったり、過激派組織に入ってしまったりするそうです。
気候変動にブレーキをかけること、砂漠化を止めるため肥沃な土地を作っていくことは、アフリカの平和にも繋がります。
アフリカが平和になれば、世界の難民問題の一部が解決します。
アフリカの現実は重たいです。グレート・グリーン・ウォールも、目標を達成する日が来るかどうかわかりません。
それでも、諦めてはいけない。高い目標を掲げて、一歩一歩前に進んでいくしかありません。
ロンボクでのゆいツールの活動も、同じくらい困難に感じますが、諦めてはいけない、と今は思っています。
余談。
ロンボク島のお隣バリ島には、ロシアやウクライナから逃れてきた比較的裕福な人たちがたくさんいるようです。
彼らが土地を買ったり、部屋を借りたりしているせいで、バリ島の不動産がずいぶん値上がりしているという情報を耳にしました。
「風が吹けば桶屋が儲かる」ではないですが、ロシアとウクライナの戦争がバリ島の経済や治安に影響を及ぼしているとは。
(山)
(ケニアの湖。これも映画とは関係ありません)
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NPO法人ゆいツール開発工房(ラボ)