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コロナ関連コラム 韓国在住のボランティアさんからのレポート

2020年05月05日 | ●コラム:新型コロナ関連

韓国のソウル在住の日本人から見たコロナの状況を書いてみようと思います。

(4月からソウル市内の地下鉄は終電を夜の1時から1時間早めて12時にした。人の移動を制限し、車両の消毒もするため。)

コロナの感染者が韓国で増え始めたのは2月末で、韓国第3の都市といわれる大邸(テグ)(人口は4位)で、新興宗教の集会に参加していた人たちがクラスター感染したことで、一気に患者が増えました。

「新天地イエス教会」というこの宗教は、キリスト教の異端といわれており、礼拝の時に椅子や机を使用せず、床に詰めて座った状態で大規模な礼拝を行うことで、感染拡大にぴったりの状況が作り出されていたようです。

そのあたりからどんどん感染者が増え始め、一時期は1日に900人もの新規感染者が出た日もありました。

しかし、韓国の対策は早く、徹底していたと思います。

私は専門家でもなく、韓国語もすごくできるわけではないので、あくまでも一市民としての印象ですが、韓国のコロナ抑え込みの要因は「オープンな情報開示」と「徹底した検査と消毒」にあると思っています。

(電柱にも消毒剤が!区が設置したもの。バスの中や地下鉄の駅にも消毒剤が置いてある。)

韓国の検査については、日本でもたくさん報道されていると思うので、「オープンな情報開示」のほうをご紹介したいと思います。

韓国には中央防疫対策本部があり、毎日午前10時に同0時時点の新型コロナウィルスの感染者数を発表しています。国民に、現状とどんな対策をしていくかがはっきりと示されるため、国民が協力しようという思いになっているのだと思います。

例えば、陽性患者が出ると、どこの区で患者が出たというのが周辺の人の携帯電話に緊急速報で送られます。その人がどこの店に寄ったかというようなことも、個人情報を抜いて見ることができるようになるので、感染者が寄った飲食店などは消毒を行い、営業停止になることもあります。

個人情報を抜いているといっても、個人を特定しようと思って調べればできるかもしれないので、個人情報の利用に関する批判などは当然ありました。しかし、それ以上に「こういう非常時だから仕方ない、協力しよう」という雰囲気が強かったように思います。日本ではコロナ患者ばかりか、医療関係者まで差別されるような状況が起こっているようですので、それとはだいぶ違うように感じました。

また、個人情報を利用した韓国の特徴的な対策に「マスクの曜日制購買」があります。韓国も3月頃にマスクが品薄になり、買えなくなってきました。そこで、生まれた年の下一桁の数字によって、マスクが買える曜日を管理し、1人あたり週にマスクは2枚まで買えるというようになりました。(最近は3枚までに変わりました)

例えば、私は下一桁が6なので、毎週月曜日だけマスクが買えます。薬局では身分証明証を見せて生年月日を確認され、買った枚数も記録されるので、他の店に行って2枚以上買うこともできません。子どもやお年寄りは、身分証明証を他の人に預けて買ってもらうこともできます。また、自分の曜日に買えなかった人は、土日に買うことができます。

この「マスクの曜日制購買」により、マスクの買い占めや不足がなくなり、みんなにマスクが行き渡るようになりました。

(駅で配られていた布マスクと消毒ジェル。布マスクをつけて、医療用マスクは必要な人に譲ろうという運動の一環。)

しかし、このような制度を作ると、必ずそこから漏れてしまう人がいます。例えば、身分証明証(外国人の場合は外国人登録証)を持っていない外国人はマスクが買えません。それに対して、ソウル市では4月になってから、外国人登録証のない外国人に週に5枚までのマスクを役所や関連機関、大学などで配布するという発表がありました。短期の滞在者や不法滞在者もマスクがもらえるようになったのです。

これは、「とにかく命を優先する」という考え方の表れではないかと思います。韓国は早い段階で国民が新型コロナに罹患した場合の検査も治療も無料だという方針を発表しましたが、この対象には外国人も含まれ、また不法滞在者も無料で治療を受けられ、不法滞在の理由も問われないという条件が加わりました。不法滞在の発覚を恐れて検査や治療を受けない人が、他の人に感染させてしまうことを危惧してのことだと思います。つまり、何が正しいかよりも、今はとにかく命を守ることが優先だという姿勢です。このような明確な方針、そして徹底した検査を行っているからこそ、市民たちの協力が得られているのだと思います。

その反面で、ロックダウン、都市封鎖はしないという方針です。累計で6800人以上の感染者が出ている大邸市でさえ、都市封鎖はしませんでした。現在(5月4日)新規の感染者のほとんどが海外から来た人たちですが、それでも国境も封鎖せず、空港での検疫と隔離で食い止めています。

(地下鉄に貼ってあるコロナ予防と感染時の連絡先の日本語のポスター。韓国語、中国語、英語、日本語で同じ内容のものが各駅に貼ってある。)

最後に、韓国の特徴的な点をいくつかご紹介しますが、まずは海外でも広く報道されているように、買い占め、品不足が全くといっていいほど起こらなかったこと。これは、そもそもITが発達しているので、日頃からネットで買い物をする人が多く、「ネットで注文すれば買えるでしょ」となり、スーパーに殺到するようなことがあまりありませんでした。トイレットペーパーや消毒液も近所のスーパーで問題なく買えました。

また、韓国は「ペタル」と呼ばれる宅配文化が根付いています。食べ物の出前はもちろん、パン屋やチキン、鍋料理など、出前で頼めないものはないくらいで、さらに店によっては夜中でも配達してくれます。注文も携帯電話のアプリでできて、支払いもアプリと連携しているカードでスマート決済するだけ。値段も外食と変わらないので、家に閉じこもっていても、いろいろな食べ物を簡単に注文できます。もちろん、飲食店も店舗を開けられなくても宅配で営業を続けられました。

一方で、日本で今流行りつつある「オンライン飲み会」ですが、韓国では全く聞きません。韓国人に話しても、あまりピンとこないようです。これは、韓国では家での晩酌の習慣がないのと、お酒は直接顔を合わせて飲むもの、と思っているからだということです。そもそも、食事も一人では食べずに何でも分け合って食べるのが韓国の文化です。そういう意味でも、今回家に籠もって、人と会えない状況が2ヶ月以上続いたというのは、韓国人にとってはかなりつらい状況であったと思います。

(地下鉄のエスカレーターの手すりを消毒(滅菌?)する機械が4月末に登場。どんどん新しいものが出てくるスピード感は韓国らしい。)

韓国は、「社会的な距離置き」つまり、ソーシャル・ディスタンスの強化期間を3/22~5/6と定めていましたが、5/6以降、延長はないという発表がありました。今週から、美術館や映画館なども開き始め、地下鉄や路上の人の姿も増えてきて、市内には活気が戻ってきました。とはいっても、油断は禁物です。

韓国も日本も他の国も、早くコロナが終息して、人の行き来ができる日常が戻りますように。

(5/4夕方のソウル市内。普段の7割くらいの人出。9割以上の人はマスクをしている。)

(大)

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