ロンボク島で大地震が発生した時、中部ロンボクのランタン村に滞在していた日本人大学生Oさんのレポートです。
(その後、無事に帰国しました)
(写真中央が筆者)
私は、8月5日の夜(ランタン村に滞在して11日目)に震度6程度の地震を経験した。私はそのとき、ホームステイ先の家の中の一室にいて、強い揺れを感じ、ほぼ同時に家族の「早く外に出て!」という声に反応して家の外に駆け出した。同時に電気が消えて村は暗闇に包まれた。
最初に感じたのは全員がパニック状態にあるな、ということである。インドネシアのロンボク島において、めったにない大地震だったこともあるのだろう、ただただ立ち尽くして家族で身を寄せ合っているか、どこか他の場所にいる家族に連絡をとっているというのが印象だった。驚いたのは、日本のように避難場所に指定されているところがないことである。そのせいで、多くの人たちがどこにいるべきか決めかねていたし、村民全体の安全を把握できない状態であった。
少し時間が経過し村が少しの落ち着きを取り戻し始めた時、動き出したのは村の若い男たちだった。睡眠時の家屋倒壊を恐れて野宿を決行することに際して、仮設テントを作ったり、村の安全確認のための見回りに行ったり、火を起こして暖を取っていた。また、離れて生活している家族はひとつの場所に集合しようとしていたり、離れたところにいる家族を迎えに行こうとしていた。
私も、州都マタラム市(ランタン村から車で40分ほどの大きな街)にいる妹を迎えに行くというひとりの兄に同行して車でマタラムに向かうという貴重な出来事を経験した。マタラム市の被害はその時点でランタン村より大きかったように思える。マタラムに向かう途上では、倒壊している家屋を何件も見かけた。また、避難する場所がないため道路に毛布をしき、一晩を越そうとしている家族もいた。(別の時には、この目でモスクの一柱が倒壊している様を目撃した。)
村に戻った私を待っていたのは人生初の野宿だった。庭にはビニールシートを敷き、その上に毛布を並べて枕を置き、その上に木にひもでビニールシートを括り付けて、簡易テントを作成した。余震が立て続けに起こり、緊迫した状況だからか、多くの人は満足に睡眠をとれない状況だった。また、ランタン村の夜の冷え込みや、野鳥や野犬の鳴き声も多くの人の睡眠を妨害した。
翌日の8月6日の朝は、大きな余震も無く、比較的穏やかに迎えられたように思える。人々の心にも余裕が出てきて、私は、その日の夕方にランタン村を発ってマタラム市のホテルに移動した。
ランタン村で被災した際に感じたことは主に二点である。1点目は、地震災害に関する知識の少なさである。先に述べた、避難場所がないことも然りだが、地震に関する細かい基礎知識が足りていないように思えた。例としては、緊急避難バッグを作成していなかったり、外を平気で裸足で出歩いたり、当たり前のように火を使っていたことが挙げられる。
2点目は、被災中でもなお感じる人の温かさと繋がりである。キャンプファイヤーをして、村の若者たちと一緒に火を囲み、そこで食べ物を焼いて食べた。その時、彼らは自分が空腹なのにも関わらず、まず最初に私に食べ物を与えようとしてくれた。また、マタラムから車で帰ってくる際は、緊急事態なのにもかかわらず私にリンゴを買い与えてくれた。また、普段から村全体が家族のようだからか、私が「〇〇さんはは無事?」と聞くと必ずだれかはその行方を知っていて、「△△にいるらしい!」と答えが返ってきた。また、すべての家族が一つになろうとしていた。
状況は、地震経験の少ない彼らにとっては絶望的だったはずだが、火を囲むとき、野宿するとき、食べ物を食べるとき、彼らは笑顔だった。彼らにはいつでも温かさがあったし、繋がりがあった。
私がランタン村で経験した地震では家屋の倒壊はあったものの、死者はいなかったし、行方不明者はいなかった。それはもちろん運が味方したのかもしれないが、地震への備えが不十分な中で、家族を決して見捨てない彼らの温かさも関係しているのだと感じた。
8月7日の朝、私は、彼らを未だに続く余震の中に残してゆくことに罪悪感を感じながら日本へと帰国の途についた。帰国してからも彼らからのメッセージは絶えない。彼らは未だに災害に苦しんでいるにもかかわらず、私に、「あなたは無事?調子はどう?」とメッセージを送ってくれている。日本にいても、どこにいても、家族のようにつながり続けてくれている彼らのために何ができるのか、私は考えつづけている。
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