マチンガのノート

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「遥かなる勝利へ」 ニキータ・ミハルコフ監督 その3

2014-07-10 01:48:00 | 日記
コトフは中将として将校に復帰後、スターリンに呼ばれて、
「軍人で手足を失っている者が多いのに、様子見の人間が多すぎる」
とのことで、1万5千人をドイツの要塞に突撃させて、
見せしめに死なせる作戦を指揮するように言われます。
当時のソ連では、その様な提案を断っても、収容所に送られて
他の将校がすることになったのでしょう。
ハンナ・アーレントがナチスの官僚のアイヒマンについて言った「凡庸な悪」
の様なものでしょう。
そしてコトフは集められた市民を指揮するのですが、列車で送られてきた
市民たちが追い立てられるところは、「ソフィーの選択」のユダヤ人移送の様な
シーンです。
ミハルコフ監督も、そこは意識して演出したのでしょう。
市民たちは平服のまま、塹壕に送られて棒切れを持たされるのですが、
意義をとなえると、あっさり軍人に殺されます。
しかしコトフは周りの将校の止めるのを無視して、市民の所に降りて行きます。
参謀の一人は、将校は指揮所から指揮すべきで、顔を合わせるべきではないと言います。
しかしながらコトフは自ら棒切れを持って、塹壕を出て先頭を歩き始めます。
そして部下の将校たちも、自らその後について棒切れを持って続きます。
そして市民たちもその後に続きます。
ロシア人にとっては、この世は民主的でも合理的でも平等でもないというのが
前提として在るのでしょう。
日本と比べると、はるかに貧しく、気候も厳しいという前提が在るからなのでしょう。
日本の昔の左翼とか学生運動の人たちは、自分達がいかに恵まれた
歴史と自然環境に生まれたかを解らずにソ連の社会主義に憧れていたのでしょう。
現在の対ロシア外交も、そのような物事の見方の前提自体が違うということを
考えに入れて立案すべきではないでしょうか?