マチンガのノート

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「自閉症の関係発達臨床」 小林隆児 鯨岡峻

2014-12-16 00:21:04 | 日記
本書で取り上げられている、成人した自閉症の方の
強度行動障害に関しての関わりを読むと、
いかにそのような方が、周囲からの叱責、指示する声などを
内面化しているかがよく解る。
そのことによって、食事や排泄などの本能的な事を果たすことにまで
困難をきたしている事が、解り易く書かれている。
主体が無いため、何かをしようとすると、過去にそれについて
叱責、指示されたことも同時に思い出されて、行動が困難になることが
よく解る。
周りの指示などがいかに本人に侵入的に捉えられて、それにより
動かされてしまう事が、関係と行動の流れの中に固定化されている事で
その後にもいかに本人に困難をもたらす事かが、解り易く描写されている。
甘えたくても甘えられないという事がいかに本人の
行動の余裕と柔軟性を成立させず、自分の衝動と過去の叱責、指示との間で
混乱した状態に陥るかがよく解る。
程度こそ違え、それほど重度ではない発達障害でも、甘えて余裕を持つことが
状況に適した行動をとる事の基礎にあるのだろう。