著者は父親が海軍の主計少佐でその後、自衛隊幹部になり、
本人は終戦の次の年に小学生になる。そして著者に戦中戦後の様々な軍事に関する
話をしていたとのこと。
計見氏は「優しさ」「癒し」などは願い下げで、そのような言葉が
社会にはびこるようになったころから、日本では怒りが否認されるようになり、
おかしくなってきたとのこと。
近年の日本における怒りや攻撃性の否認は、ユング派精神科医の織田尚生氏も
一連の著作で指摘していた。
日本の海上自衛隊はおそらく東洋随一の海軍力だろうが、それも軍事力と認識しないのも、
事実の否認の一形態で、自ずからの軍事力をマネージメントするどころか、認めない国を
周辺諸国が警戒し続けるのも当然とのこと。
旧軍の「軍人精神」を自衛隊に持ち込ませないよう、自衛隊発足時に、
旧中佐以下か、警察出身者しか幹部として登用しなかったのは
後藤田正晴氏の功績とのこと。
著者は精神医学においても歴史と自らの戦争に関する知識、経験を繋げて考察するので、
戦争におけるPTSDなどのストレス障害や現代日本の働きすぎによる精神障害に関しても、
一貫した見方を持っている。
このようなバックグラウンドを持たない多くの精神科医は、表面的な症状のみを見て、
継ぎはぎの投薬治療などで対応しているのではないだろうか。