マチンガのノート

読書、映画の感想など  

「戦争する脳」 計見一雄:その2

2018-09-15 15:52:39 | 日記

さらに著者は、精神科救急医療に携わった経験から、

レイテ沖海戦の栗田艦隊の謎の反転について、

三日ほどまともに寝ずに指揮していたので、脳も正常に機能しなくなり、

それが原因となったのではないかとしている。

睡眠生理学的には人間の脳は二晩の徹夜に耐えられず、限界は72時間とのこと。

そこから考えると、日本の労働者の労働生産性が他国よりも低いのは、

IT化の問題などよりも、長時間労働でさらに通勤に時間がかかり、

眠る時間が少ない事や、仕事以外の交流や社会参加が少ないことなども、

大きく影響していそうである。


精神科医、心理士の想像力の欠如について

2018-09-15 00:28:29 | 日記

日常的な、脅しや暴力、脅迫、騙しなどについて、多くの精神科医や心理士は

話を聞いてもそもそも認識できないようだ。

大学がどうとかの恵まれた家庭で育ち、自分が脅されたりしたことが無いのだろう。

そのため自分のクライアントがそのよう体験を話しても、

何を言っているのかを認識できないのだろう。

そのような臨床家が病んだ家庭に関わろうとしても、何を言っているのかが解らない、

話がそれぞれバラバラ、という事で関われないだろう。

間主観性やアクチュアリティについて学ぶのもよいが、

日常的な脅しや暴力、騙しや脅迫について知るほうが、

臨床家としての能力を短期間で向上できそうである。

最近の中高生が、中村トオルの「ビーバップハイスクール」を見ると、

「高校生の決闘なんて法律違反じゃないか」などと言って怒ったりすることが

あるとのこと。

法や警察に守られていることが当然と思って行動していると、

夜の繁華街や海外に行った場合などは、無警戒さゆえに、

ガラの悪い相手や犯罪者のいい標的にされそうである。

法を守ることの大切さを教えることも大切だろうが、

自分が食い物にされないように振舞う事を教えることも大切だろう。


「戦争する脳」 計見一雄:個人史に繋がった歴史観と精神医学

2018-09-14 23:17:24 | 日記

著者は父親が海軍の主計少佐でその後、自衛隊幹部になり、

本人は終戦の次の年に小学生になる。そして著者に戦中戦後の様々な軍事に関する

話をしていたとのこと。

計見氏は「優しさ」「癒し」などは願い下げで、そのような言葉が

社会にはびこるようになったころから、日本では怒りが否認されるようになり、

おかしくなってきたとのこと。

近年の日本における怒りや攻撃性の否認は、ユング派精神科医の織田尚生氏も

一連の著作で指摘していた。

日本の海上自衛隊はおそらく東洋随一の海軍力だろうが、それも軍事力と認識しないのも、

事実の否認の一形態で、自ずからの軍事力をマネージメントするどころか、認めない国を

周辺諸国が警戒し続けるのも当然とのこと。

旧軍の「軍人精神」を自衛隊に持ち込ませないよう、自衛隊発足時に、

旧中佐以下か、警察出身者しか幹部として登用しなかったのは

後藤田正晴氏の功績とのこと。

著者は精神医学においても歴史と自らの戦争に関する知識、経験を繋げて考察するので、

戦争におけるPTSDなどのストレス障害や現代日本の働きすぎによる精神障害に関しても、

一貫した見方を持っている。

このようなバックグラウンドを持たない多くの精神科医は、表面的な症状のみを見て、

継ぎはぎの投薬治療などで対応しているのではないだろうか。