茶懐石は「益田屋」というお茶道具屋さんの3階にある、正芳庵茶室で行われた。本格的な茶室の隣に大きな厨房があって、ここで料理が作られていた。本日の参加者は9名。誰が正客をやって、誰が亭主をやるのか、その場で相談が始まった。相談と言うよりも、とっても遠慮深くて謙虚な押し付け合い(?)ちょっと言葉が不適切だけれど、これはお茶会に行くと必ず行われる年中行事のようなものと思っている。この役だけは熟練者じゃないと務まらないので、初心者の私は成り行きを見守る傍観者の気持ち。
さて本日のお献立の発表です。
裏千家茶事教室 お献立
向付 新子烏賊酢味噌掛け 浅月 花穂
汁 石川芋 辛子
椀 萩新薯 三つ葉 柚子
焼 かます幽庵焼
焚 鰻豆腐 焼き茄子 菊菜 菊花 針生姜
預 印元 蓮根 笹身 黒胡麻和え
小吸物 茗荷
八寸 黄身西京漬け 冬瓜
香の物 三種
お料理はさすがプロの技、見た目も味付けも素晴らしかった。ご飯が3回出てきたが、炊き具合が3回とも違った。最初は柔らかめで、その後普通、最後は少し固めのご飯が出てきた。当時から日本人はご飯の炊き方にこだわりがあったんですね。ところで茶懐石ではかなりのお酒が振舞われ、亭主は客を一人ずつ回り、客の酌を受けるので、お酒も強くないと務まらないことを知った。「千鳥」っていうお作法があり、客の間をお酌を受けながら行ったり来たりするお作法なのだが、これマジに酔っぱらっていたら話になりません。
「夕去り」とは日が暮れる景色の変化を楽しむ茶事なので、日が暮れてからお茶席が始まるのです。今回は食事が終わった段階で一度退席し、その間に茶室を暗くして夕方の薄暗がりを演出してくれる凝り様でした。つくばいで手を清めて、にじり口から入ると、行燈のろうそくの火がゆらゆらと室内でゆらめいていて、何とも幻想的。この美意識の高さは日本人の誇りですね。この完成された空間に座っていると、自然と背筋がピンと伸び、緊迫感のある空気の中でお茶をたてる音だけが静かに流れ、目をつぶると、ふすまの向こうから江戸時代の茶人や武士が現れそうな錯覚に陥りました。
ろうそくの火に導かれ、茶道の奥深さに魅了された1日でした。日本人で良かった!