青崎涼子さんの短いイントロダクションの後で、上映会は始まった。
このDVDは、湯口公さんという飛行作家によって製作されたもので、彼は航空自衛隊のF-15戦闘機パイロットだった時に、アラスカ州で実施された演習に参加して、アラスカに魅せられ、パイロット職を辞して、家が一軒買える位の中古の飛行機を買って、飛行作家として活躍している人らしい。
兎にも角にも、スケールが違いすぎる。飛行機を自分で買って、アラスカを飛び回っている日本人がいるなんて。途方もなさ過ぎて、現実感が沸かず、空中から撮影した映像にフワフワと乗って、夢旅行をしているような感覚になった。
映像の中のコメントにあった、「好きなことをやりたいのであれば、一歩前に踏み出せば実現する」 という言葉に頷いた。
映像が終わると、涼子さんから今回企画した3つのアラスカ旅行についての説明があった。
涼子さんのいでたちは、潔良い程のシンプルさで、アウトドアとアラスカから連想されるイメージと重なった。
淡々とアラスカの素晴らしさを語る口調には、静かな自信が感じられた。単にアウトドア好きが高じてこの仕事をやっているというよりも、もっと知性のようなものを感じた。一体どういうバックグラウンドの人なんだろう、どんなすごいものを見てきた人なんだろう、と涼子さんに対する興味が沸いてきて、この人と一緒に旅行ができたら素晴らしいだろうなと思った。
実はアラスカ行きは、DVDの映像を見始めた、5分後ぐらいにはもう決めていたような気がするのだが、涼子さんが言ったこの言葉がダメ押しになった。
「朝起きて、テントから見る景色がこれです。これは銀座の高級ホテルに泊まるよりも、ずっと贅沢なことで、お金では買えないものです」
決まった!と思った。