隣のボーイズチームのテントは、気がついたときには、跡形もなくなっていた。
テントがあった場所に残っているのは、荷物を詰めた防水加工の色鮮やかなバックと、さっきまでそこで寝ていたであろう、タローさんとカネゴンとナッツ。
昨日のキャンプファイアーの夜に、みんなの強い希望で、明日の朝は最後の氷河アタックをやってもらえることになった。その条件として、朝7時までに荷物をバックに詰めて、テントも片付けて、朝食を済ませたらすぐに出航できるようにしておくことを約束させられた。
彼らはこの雨の中、お約束通り、シーカヤックで出航する気、満々なのである。
行っても氷河見れるのかなぁ。雨降っているし、寒そう。どうしよう……
「アラスカは危険と隣合わせなので、迷ったら無理をせず、無事生還すること」 という言葉が思い出された。
無理するのはやめよう!
ということで、チームのみんながカヤックで出航していく中、私はお留守番をする事に決めた。
「行ってらっしゃーい!」と見送る時は、昨日までチーム全員が共有できたことを、共有できない寂しさがあったけど、直感で、『やりたくない』、と思ったことは極力やらないようにしようと思っているので、今回はパス!
ブレッドと二人で、おしゃべりをしながら、朝食の後片付けを手伝った。食器を海で洗う、テーブルをたたむ、荷物を運ぶ、椅子をまとめて運ぶ。ブレッドの指示で、二人でのんびり、ゆっくり、時間を気にすることなく、片付ける時間を楽しんだ。
使ったものや、散らかったものが、きれいに片付いていくのは、ゲームをやっているようで楽しい。
いつもは人に指示をする立場なのだが、久しぶりに、「あれやって、これやって」、と言われて、「はーい」、と言いながら、「これでいい?」、「GOOD JOB !」、なんて言われると、嬉しくって新鮮な気分
無人島に二人だけ気分を味わっていたら、ブレッドが海の右の方を指差して、「彼らが帰ってきたよ」、と言った。裸眼では見つけることができず、双眼鏡を使って見たが、やっぱりそれらしきものが見つからない。「ブレッドの勘違いじゃないの」、と思って海岸沿いをお散歩しながらトイレに向かって、帰ってきたら、カヤック4隻が海の右側に見えた。一体ブレッドの視力はどうなっているんだ?
みんなが満足した表情で帰ってきた。無事で良かった!悪天候だったが、天気のいい時とは別の、荒々しい、少し恐怖を感じるほどの、切立った迫力ある氷河を見ることができたようだ。
(ナッツのアルバムより)