北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】EA-37B電子戦航空機の能力向上,サーブ社将来戦闘機概念研究と電子戦型ユーロファイター

2024-05-13 20:22:03 | インポート
■防衛フォーラム
 今回は空軍関連の話題ですが次世代戦闘機開発と旧式戦闘機置換えと戦闘機の話題が多数ありました。

 タイ空軍はF-16戦闘機後継機計画を構想しています。これは2月29日に発表された空軍将来構想文書によるもので、タイ空軍シンポジウムとして3月4日より行われる年次計画に2037年までの防衛計画の展望が示されました。この中にタイ空軍は現在のF-16戦闘機は2030年代の航空優勢確保に十分な能力を発揮できないと認識を示している。

 パンパクディーパタナクル空軍司令官の署名入りで発表された文書には、F-16戦闘機後継の必要性と共にタイ空軍では喫緊の防空上の課題として、対無人機システムの導入や中距離防空システムの導入も差し迫った懸念事項の筆頭事例として挙げました。このなかでF-16戦闘機など航空機は平均機齢が24年となっており、老朽化の問題も指摘された。

 F-16戦闘機、タイ空軍では1987年よりF-16戦闘機の導入が開始されコラート基地の第102戦闘飛行隊に14機が配備されています、これらの機体はこのままでは2028年より退役が始まります。空軍ではスウェーデンのサーブ社製JAS-39グリペンと、アメリカのロッキードマーティン社製F-16block70を次期戦闘機の候補として示しています。
■EA-37B電子戦航空機の能力向上
 日本ではC-2の派生型を開発しP-3C派生型についてはP-1派生型で置換える構想のある電子作戦航空機です。

 アメリカ空軍はEA-37B電子戦航空機の能力向上についてBAE社と契約を結びました。EA-37Bは愛称がコンパスコール、空軍が永らく運用してきましたC-130輸送機は製のEC-130電子戦機の後継として採用したガルフストリーム社製ビジネスジェット派生型の電子戦航空機で、C-130よりも小柄で高い巡航速度と長大な航続距離を有します。

 ベースラインⅣミッションシステムの搭載、今回能力向上の対象となるのは長距離電磁攻撃能力といい、7号機から10号機までの4機が搭載対象となります。この背景には敵指揮中枢への通信や戦闘システムの監視や攻撃と偵察を任務とするEA-37Bコンパスコールについて、監視任務などへの妨害行動への対抗手段付与が主眼とされています。
■CV-22オスプレイ
 自衛隊も運用再開だ。

 アメリカ空軍は墜落事故を受けてのCV-22オスプレイの飛行禁止を解除しました。飛行禁止は2023年11月29日に日本で発生したCV-22墜落事故を受けてのもので、空軍特殊作戦司令部要員など8名が殉職しています。空軍は3月1日に週明けにも運用禁止を解除する方針であると発言、これをAP通信が報道しました。停止期間は三か月に及ぶ。

 CV-22の墜落事故について、何故事故に至ったのかは不明であるが何故墜落したのかは判明した、として原因にヒューマンエラーの存在を示唆しています。オスプレイはアメリカ空軍とアメリカ海兵隊とともに陸上自衛隊が運用しています。事故要因の説明を受けたオースティン国防長官はメーカーの事故防止措置計画を支持し飛行再開に至りました。
■レンジホークス
 日本では時間がかかった為に導入開始間もない装備ではあるグローバルホークですがアメリカでは便利に退役後使われているもよう。

 アメリカのノースロップグラマン社は余剰となるRQ-4無人機を極超音速機試験支援用に改修します。RQ-4といえばグローバルホーク無人偵察機であり、40時間近い滞空時間と旅客機巡航高度よりも高い高度をゆっくりと滞空する無人航空機ですが、これは別にグローバルホークそのものを極超音速航空機へ改造するというわけではありません。

 レンジホークスといい、アメリカ空軍から余剰となるRQ-4を試験の計測用に改修し2025年までにアメリカ国防省試験資源管理センターへ納入するというもの。極超音速機や極超音速兵器の評価試験には従来、船舶などが用いられていましたが、高速で飛行する試験機と試験空域までは船舶では時間がかかりすぎ、無人機を計測機にするというもの。

 レンジホークスはその一例ですが、空軍は退役したRQ-4グローバルホークを27機装備しており、既にこのうちの3機はカリフォルニア州エドワース空軍基地アームストロング飛行研究センターに3機が配備され、NASAアルテミス計画に基づく月面探査計画の試験機評価支援などに活用されています。退役機を無駄にしないアメリカらしい試みです。
■サーブ社へ将来戦闘機概念研究
 次世代戦闘機開発が本格化しているのは世界の趨勢ですが日本の方のGCAPもX-2の知見などを活かせるのでしょうか。

 スウェーデン国防省はサーブ社へ将来戦闘機概念研究を発注しました。サーブ社は現在もJAS-39グリペン戦闘機を製造しており、近年ではブラジルへ改良型のグリペンE戦闘機をF-39戦闘機として納入しており、またスウェーデン空軍でもグリペンEは採用され配備は進み、そして既存型であるJAS-39C/Dの能力向上改修も進められています。

 将来戦闘機概念研究は、まず期間としては2024年から2025年までを想定し、更にスウェーデンのNATO加盟に併せ、NATOがもとめる北欧地域の防衛などとの関係性という従来の重武装中立政策下では見られなかった概念、そして有人機と無人機の協同といういわゆるMUM運用、サーブ社のグローバルアイなど早期警戒機との連接が研究される。
■KF-21ボラメ
 第4.9世代戦闘機ではあるものの日本がX-2で実験機どまりであった為にあの活力は見習いたいものなのです。

 韓国のKF-21ボラメ戦闘機は初の空中給油試験を成功させました。給油試験はソウル南東296kmの泗川基地を起点に実施、試験へはKF-21ボラメ戦闘機の試作五号機と韓国空軍のKC-330空中給油輸送機が参加しDAPA韓国国防調達計画局が試験を実施しました。この空中給油によりKF-21は戦闘行動半径が50%拡大すると期待されています。

 KF-21戦闘機は2026年に開発完了を予定、量産計画は2028年までに40機、2032年までに120機を導入する計画で、第五世代戦闘機ではないが第四世代戦闘機を圧倒出来、第4.5世代戦闘機にステルス性を付与した戦闘機という位置づけで、韓国政府が開発費の80%を負担し、また国際共同開発としてインドネシアが20%の費用を負担しています。
■アグニⅤ
 普段使いしないでほしいミサイルの話題だ。

 インド国防省は新型のMIRV多弾頭型アグニミサイルの初試験を実施しました。アグニⅤとして開発がすすめられたミサイルは3月11日、初の発射実験に臨みその試験を成功させています。MIRV方式としてミサイル一発には10基から12基の核弾頭を搭載可能で、各核弾頭は400㎏程度を見込んでおり、一発で複数目標を攻撃可能となります。

 アグニⅤは慣性航法装置とリングレーザージャイロにより誘導され、MINGSマイクロ慣性航法システムという新しい航法システムを補完的に搭載、こちらはGPS電波などを誘導の補完に用います。射程はインド国防省の主張では8000㎞とされていますが、ミサイルの規模などをもとに推測される射程では5000㎞から7000㎞であると考えられます。
■LGM-35Aセンチネル
 核兵器反対を叫ぶのは自由ですし廃止できる具体的手段が有るならばそうするべきですが大量の費用を投じて抑止力を維持しなければ一旦開いてしまったパンドラの箱を人類滅亡以外で閉じるには時間がかかるのです。

 アメリカ空軍はLGM-35Aセンチネル大陸間弾道弾の固体ロケットモーター試験を実施しました。テネシー州のアーノルド空軍基地に置かれた開発複合拠点での実施された試験ではステージ3ロケットモーター試験が実施されまして、密閉試験施設において行われた燃焼試験は正常にロケットモーターが機能し所定の評価を収めたとのことです。

 LGM-35Aセンチネル大陸間弾道弾はGBSD地上配備型戦略核抑止力として、現在配備されているミニットマン3大陸間弾道弾の後継と成ります。主契約企業はノースロップグラマン社で2020年に133億ドルの開発契約を結びましたが、開発は予定よりも時間を要しており、またインフレなどの開発費不足という影響も出ている装備開発です。
■T-7Aレッドホーク
 T-38はファントムよりも設計が古いのですが未だ当面使わなければならず一方で別の航空機をアメリカと日本で共同開発するという。

 アメリカ空軍はT-7Aレッドホーク練習機開発がさらに一年遅延すると発表しました。サーブ社のJAS-39戦闘機基本設計を基に開発された練習機ですが、空軍の操縦士資格見直しによる大型の操縦士に対応する射出座席開発と適合化などに問題が生じていたこの数年間、更に今度は飛行プログラム開発がその開発計画を遅延している構図とのこと。

 T-7Aレッドホークは当初遅延して2027年にIOC初度作戦能力獲得を目指していましたが、今回の遅延によりこれも2028年にずれ込むもよう。現時点ではアメリカ空軍は1950年代に設計されたT-38練習機を使用し続けており、基本設計は兎も角としてどの機体も深刻な、危険とさえいえる老朽化を妥協して練習機として運用している状況です。
■ACP自律連携型プラットフォーム
 イギリスはマーリン早期警戒機やコメット哨戒機など大失敗を繰り返している感じですが。

 イギリス空軍はACP自律連携型プラットフォーム戦略を研究中です。防衛用無人航空機戦略の一環として進められるこの計画では、過去の軍事作戦などから無人航空機が今後十年以内に到達できる能力を見極めるとともに、同盟国の無人機い導入概況や無人機との連携能力、イギリス産業界やパートナー国の無人機技術能力なども見極めるという。

 ACP自律連携型プラットフォーム戦略では費用対効果も踏まえたうえで、勿論陸海空軍の無人機計画とも連接し検討を進めるとのこと。特に重視されるのは低コストという点で、有人航空機の拡張性を更に広める視座に立っての無人航空機、そして人的リスクの低減という視座にも立ち、無人航空機運用の在り方を研究しているとのこと。
■パトリア社F-35部品
 サプライチェーン構築という。

 フィンランドのパトリア社はF-35部品製造に参画するためのロッキードマーティン社との間で覚書を締結しました。具体的にはF-35戦闘機の車輪部分格納扉を製造することになり、今後はロッキードマーティン社からの技術移転手続き交渉が始まる、これによりパトリア社もF-35戦闘機の多国間国際分業生産に参画することへ大きく前進しました。

 F-35戦闘機は現在、技術的問題は生じていますが各国が導入できる第五世代戦闘機としての唯一ともいえる選択肢となっている一方、下請け生産を担う予定であったトルコの除名により多国間国際分業体制に限界が生じており、この為にロッキードマーティン社はF-35部品製造に参画可能であるパートナー企業を慎重に選定している段階です。
■電子戦型ユーロファイター
 電子妨害機開発はいっけん大変なように見えて戦闘機を確保出来ればありもので済ます事は出来ない訳でもない。

 ドイツ空軍は電子戦型ユーロファイター用にアレキシス電子戦センサーを採用します。アレキシス電子戦センサーはスウェーデンの防衛企業サーブ社が開発したもので、ユーロファイター戦闘機への搭載は翼端部分にセンサーアレイアンテナを装着する一体型のもので、ユーロファイター戦闘機の機動性を損なわず電子戦機能を追加可能だ。

 アレキシス電子戦センサーの搭載におり、例えば電子妨害や脅威レーダー波照射を受けた際には発信源を検出し、その位置標定はもちろん識別も可能となります、その上で対抗電子戦や積極的な電子妨害なども可能とする装置です。実用性としては既にスウェーデン空軍がJAS-39グリペン戦闘機へ搭載事例があり実績のある装備といえるでしょう。

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軍用ドローンの憂鬱-消耗品としての大量需要と事前備蓄阻む素早い陳腐化(榛名防衛備忘録)

2024-05-13 07:00:48 | 先端軍事テクノロジー
■榛名防衛備忘録
 ドローンが有れば何でもできるのでキケンだ的な論調がNHKなどで示されていますがそろもそドローンと云えば掌に乗るホーネットから旅客機よりも良く単が大きなグローバルホークまでいろいろ。

 フランス軍は4月に行われた工兵訓練において無人機運用について触れ、小型無人機による将来戦闘への準備について、事前備蓄は有事が年内ではなく数年後であれば戦時における陳腐化を生むというジレンマと共に必要な大量の消耗品としての無人機を規格化して備蓄することは事実上不可能である、という厳しい認識を示しました。

 無人機といえば沿海州から東京や京都まで届くシャヘド136自爆用無人機を思い浮かべるところですが、シャヘドが使われているのはせいぜい9000発程度、現在のウクライナでは100万ちかい無人機が消耗品として使われていて、それは飛行距離がせいぜい数kmの、しかし家電量販店で数万円で入手できる民生無人機が数の上での主流です。

 ロシアウクライナ戦争において様々な無人機が投入されていまして、自衛隊でもアナフィやスカイレンジャーといった無人機が採用されていますが、1000名規模の部隊が数千機の無人機を投入しているというロシアウクライナ戦争における無人機の運用実態を見ますと、各普通科連隊が十数機を保有するという現状では全く不足しています。

 しかし、同様の問題は世界中の軍隊が抱えているもので、特に軍用無人機だけで十分な需要を満たすことは出来ないという前提があり、有事の際には民生無人機を何とかして軍用に改造する必要に見舞われているのが現状です。これはグローバルホークやリーパーといった無人機を駆使する無人機先進国であったアメリカでも数ではいまや。

 フランス軍での工兵演習では、本来ならば擲弾搭載無人機を投入する状況であるものの、擲弾搭載無人機が管制していない事から既存の無人機に機動を再現することで対応することとなりました。擲弾搭載無人機というのは、ウクライナ軍が手榴弾を粘着テープで改造民生無人機いに張り付けて相手に突入させるという現場の発想で生まれたもの。

 擲弾無人機というのは当初、なにしろ粘着テープで無理やり巻き付けた外見からアメリカ軍などは嘲笑していましたが、人間が手榴弾を投擲して1㎞先の陣地に命中させるのは不可能ですし、無人機ならば200m先にあるビルの一室に立て籠もって機銃陣地としている状況であっても、一発の無人機で制圧できますし、費用は手榴弾数発分という。

 ロシア軍では現在、民生無人機を軍用改造する際、シリアルコードの不正解除と衝突防止システムなど安全プログラムの不正削除、無線周波数帯の不正変更による長距離飛行能力の付与、緊急安全着陸機能不正削除や飛行制限高度回避プログラムの削除などを行い、組織的に安価な民生用無人機を自爆用無人機に改修する教育訓練を実施中です。

 対人地雷を無人機を用いてウクライナ軍の接近経路に散布するとか、ウクライナ軍陣地を発見するとその周辺に無人機で対人地雷を散布する、RPG対戦車擲弾を改造無人機に括り付けて大量に衝突させる、指向性散弾地雷を無人機に括り付けてウクライナ兵付近で管制起爆させるなど、消耗品として大量の無人機が用いられています。

 日本は今後無人機を重視する場合、ロシア軍が行っている不正改造の方式を踏襲するか、若しくはもっと安価な防衛用無人機を規格化したうえで民生流通させ、有事の際に接収して再プログラムする方式などを検討しなければなりません、ウクライナでは日本の5.56mm弾100発分程度の費用の無人機が、活躍しているのですからね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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