徒然なか話

誰も聞いてくれないおやじのしょうもない話

怪談 その2 ~室生犀星 「後の日の童子」~

2017-08-01 17:33:18 | 文芸
 作者の室生犀星が、幼い息子を失った自らの経験をもとにした短編小説。

 幼い息子を亡くした夫婦の家に、夕方になると死んだはずの息子が成長した姿で戻って来る。親子水入らずのひと時を過ごすと、息子はどこへともなく帰って行く。そんな日々が続いたある日、父はとうとう我慢できず、帰って行く息子のあとをつける。父がそこで見たものは。

 愛しいわが子を失った喪失感と愛情の深さゆえに幻影を見てしまう夫婦。しかし、その幻影も次第にぼやけて行き、ついには見えなくなってしまう。ひたすら切なく哀しい物語。子を持つ親の方にはぜひ一度読んでいただき、親子というものについて考えていただきたい一篇。