原子力規制委員会が新基準の適合審査を続けている関電の高浜3、4号機、大飯3、4号機について、大津地裁は再稼働差止の仮処分の申し立てを却下する決定を下した。
裁判所前では多くの報道陣が決定を見守る。
午後1時に決定が渡される。
仮処分の決定なので法廷は開かれない。
すぐに結果がわかるのかと思ったが、なかなか出てこない。
ようやく1時8分、井戸謙一弁護団長、脱原発弁護団全国連絡会共同代表の河合弁護士が険しい顔ででてくる。
仮処分の申し立て却下である。
井戸弁護団長が報道陣に囲まれマイクを握る。
「直近のしかも決して多数とはいえない地震の平均像を基にして基準地震動とすることにどのような合理性があるのか!」
「研究の端緒段階にすぎない学問分野であり、サンプル事例も少ないことからすると・・・現時点では最大級の地震を基準にすることこそ合理的ではないか!」
「田中俊一原子力規制委員会委員長は・・・適合は審査したが安全だとは言わないなどとも発言しており・・・」
「避難計画等についても現段階においては何ら策定されておらず・・・」
私は、井戸弁護士が不当決定に怒って、決定書を読まず、自らの主張を報道陣に訴えているのかと思った。
井戸弁護士はさらに続ける。
「(原子力規制)委員会がいたずらに早急に、新規制基準に適合すると判断して再稼働を容認するとは到底考えがたく・・・再稼働を差し止める仮処分命令の申立てについて・・・却下すべきである・・・」
はぁ~~~?
関電は新規制基準の合理性をなんら語ってはいない。規制委員会はゴーサインを出せるわけないじゃないか。だから差止の仮処分も必要なし!ってことだ。
原告団・弁護団は、関電がほとんど反論らしい反論を展開しなかったことから差し止めを確信し、万が一負けるとすれば、「現在停止しているし、再稼働が決まったわけじゃないから、差し止めの仮処分は認めない」こんなそっけない、不当な決定ではないかと想定していたようだ。
急きょ新たな声明文が作成された。
弁護士会館で開かれた記者会見と報告集会では、この想定外の却下の論理をどう捉えるか、そして抗告するかどうかを巡って侃侃諤諤の議論が交わされた。
「原発再稼働を容認するなんて到底考えられない」
フクシマの事故の解明さえできていない。科学的にも、そして国民世論からしても、まさにそうでなければならない。
しかし、川内原発は規制委員会がゴーサインを出し、安倍政権は再稼働への手続きを進めている。
その次は高浜原発だともささやかれている。
最後の最後にするりと逃げてしまった情けない司法。
司法の責任放棄!
原告はもちろん、福井や石川、東京などから駆けつけた仲間も怒り心頭である。
ショックを受けつつも、その一方で、完敗の決定かと言えばそうでもない。
内容的には勝ったような裁判所の見解が示された。
今回の論理を仮処分ではなく本訴に当てはめると「運転差止」である。
そういう意味では「大飯訴訟・福井地裁判決」の流れを引き継いだともいえる。
このメッセージを無視して安倍政権が原発再稼働に踏み切れば、今度は差し止めの仮処分を認め、本訴でも差止を認めるぞ!というメッセージとも読めなくもない。
この決定を全国の差止訴訟に活かし、また規制委員会や安倍政権の再稼働への動きを止める運動につなげていかなければならない。
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