北野進の活動日記

志賀原発の廃炉に向けた取り組みや珠洲の情報、ときにはうちの庭の様子も紹介。

ヒッグス粒子から原発を考える

2012-07-08 | 雑感
 今月4日、欧州合同原子核研究所は「神の粒子」とも呼ばれるヒッグス粒子とみられる新しい粒子を発見したと発表した。ノーベル賞級の成果だそうだが、物理が大の苦手の私にはピンとこない話ではある。

 そんな私が表題のようなテーマで書くのはおこがましいが、高木仁三郎さんの著書「プルトニウムの恐怖」を見開きながら、少しだけヒッグス粒子と原発問題について考えてみたい。

 ヒッグス粒子とは、7月5日の北國新聞によれば「宇宙誕生後、間もなく空間を満たし、水あめのようにほかの粒子にからみついて重さ(質量)をつくった」とされる。
 ヒッグス粒子によって質量を得た粒子が陽子や中性子をつくって、それが原子核をなし、その周りに電子が飛び回って原子をつくり、いまは原子番号1の水素から原子番号92のウランまでが天然に存在する。

 原子番号が大きいということは原子核の中に陽子や中性子が多く詰まっているということで、これは人間でいうと肥満。太りすぎると不安定になった原子核が余分な粒子やエネルギーを放出して、安定した状態に変わっていく。これが放射性壊変(崩壊)と呼ばれる現象で、この時、ベータ線やガンマ線などの放射線が飛び出してくる。
 このような不安定な原子核を放射性原子核と呼んで、これを含む物質を放射性物質、あるいは単に放射能と呼ぶこともある。

 さて、原子番号84番のポロニウムとそれより重い元素は、天然に存在するものも、人工的につくり出されるものも、すべて放射性である。
 そんな中で92番のウランまでが天然に存在し、93番以上の物質、たとえば94番はプルトニウムであるが、天然には存在しなかった。
 実は地球ができた頃や、それよりもっと昔の宇宙の始まりの頃にはもっと多くの重い元素、つまり放射性物質が存在したと考えられているそうだ。
 ヒッグス粒子の活躍で誕生した陽子や中性子が様々な組み合わせをつくっていたのだ。
 それがなぜなくなったかというと、地球が生まれて46億年の間に不安定な肥満元素は早々と放射線を出して崩壊し、死に絶えてしまったとのこと。

 ではなぜウランは放射性物質なのに天然でいまなお残っているのか。
 実はウランはたまたま寿命が非常に長く、特にウラン238は半減期が45億年。これではなかなかなくならない。
 地球誕生当時、ウラン238は今の倍あったことになる。

 要するに、人類が今日存在するのは、地上から過剰な有害放射能が死に絶え、生命の条件が整ったことが大きな要因と言える。

 ところがいま、原子炉の中ではウラン235の核分裂反応によって中性子が飛び出し、同時に核分裂生成物が生まれ、ヨウ素131やセシウム137、ストロンチウム90、さらにはプルトニウム239など自然界に存在しなかった放射性物質が次々とつくられている。

 そしてこれらの物質がチェルノブリや福島の事故で地球上にばらまかれ、あるいは使用済核燃料として蓄積され、あるいは核兵器となって落とされ、核実験が繰り返されている。

 ビッグバンから137億年。ビッグバン直後の100億分の1秒後にヒッグス粒子が生まれ、様々な原子がつくられ、生命の誕生にもつながった。
 その一方で気の遠くなるような長い年月をかけて有害放射能が死滅し地球上ではようやく人類が生存できる条件が、ある意味では奇跡的に整ったことも忘れてはならない。
 
 宇宙の歴史をひも解けば、やはり核と人類は共存できないのである。

 
  


1 コメント

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Unknown (一応理系)
2012-07-19 19:49:20
ヒッグス粒子がなかったら
アップクォークやダウンクォークが
集まらずに原子核を構成する
陽子・中性子ができない。
中性子線ってご存知ですか?
ヒッグス粒子がなかったら
当然中性子線もできません。
陽子と中性子で色々な
元素ができますからね。
ウランもできない。
環境破壊をする人間もできない
ですけど。
どうでもいいですが、
炭素14やカリウム40について
どう思います。
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