北野進の活動日記

志賀原発の廃炉に向けた取り組みや珠洲の情報、ときにはうちの庭の様子も紹介。

原子力防災訓練 住民アンケート結果報告

2012-06-13 | 脱原発
 社民党議員団は6月9日におこなわれた原子力防災訓練に合わせて、避難地域の住民に下記のアンケートをおこなった。

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1.昨年3月11日の福島第一原発事故以降、今回初めて志賀原発の重大事故を想定した原子力防災訓練がおこなわれます。
①参加する。参加したい。
②参加するつもりはない。
③参加したいが都合で参加できない。
④その他(                                 )

2.今回初めて志賀原発から30キロ圏外への避難訓練がおこなわれます。あなたはどう思われますか。
①いいことであり、今後も続けてほしい。
②福島の事故をみれば30キロでも不十分。訓練内容をもっと検討してほしい。
③本当に事故が起こったら行政はあてにならない。自力で避難することを考える。
④重大事故が起これば何をしても無駄だと思う。
⑤わからない。その他(                           )

3.志賀原発は1年以上停止したままです。5月5日には日本中のすべての原発が停止しました。一方、大飯原発をはじめ、原発を再稼働させていこうとする動きもあります。志賀原発に対するあなたの考えをお聞かせください。
①電力の供給や地域振興を考えると志賀原発は必要だと思う。
②国の体制も含めて、安全対策が強化されれば再稼働してもいい。
③地震国日本に100%安全はない。志賀原発はいらない。
④わからない。その他(                            )

◇ご協力ありがとうございました。ご意見があればお聞かせください。
(                                      )


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 住民アンケートは隔年で実施されてきた住民参加の避難訓練がおこなわれる年におこなってきた。以下は昨日公表した今回の調査報告でる。

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2012年原子力防災訓練 住民アンケート結果報告

 社民党議員団は石川県平和運動センターや一般党員、市民の皆さんの協力を得て、6月9日に実施された原子力防災訓練に合わせ、避難対象地区の住民に原子力防災や原発についてアンケートをおこないました。
 従来も石川県平和運動センターが中心となり、隔年で実施される住民避難訓練に合わせて住民アンケートをおこなってきました。今回も基本的なアンケート方法は継承しつつ、福島第一原発事故後初めての訓練であること、また住民避難対象地区が初めて30キロ圏内8市町に拡大されたことを踏まえ、新しい防災指針ではPAZに含まれる志賀町赤住と福浦地区、そしてUPZ30キロ圏内の対象地区は広範囲に及ぶため、七尾市と羽咋市の避難対象地区に限定し、訓練と並行し聞き取り調査を実施しました。
 以下、アンケートの結果について、過去の調査結果との比較も交え、分析したものです。今後の原子力防災対策の充実に向けた議論の一助となれば幸いです。

【問1】 訓練への参加について

七尾市は自主防災組織がフル稼働

過去のアンケートと比較し「参加する。参加したい。」が36%から46%へと大きく増加しています。しかし、市町ごとに数値の違いが際立っており、注意しなければなりません。
七尾市は72%と圧倒的な参加率です。今回の訓練に合わせて独自に町会や自主防災組織を活用した避難訓練を大々的に展開しました。七尾市からの広報を受けた町内会長が各班長に口頭で情報を伝達。さらに班長は各班員に口頭で情報を伝達します。事前に申し込んだ住民だけが参加する、あるいは地区役員だけが参加するという従来の方式ではなく、まさに地域ぐるみの実践的な取り組みにしました。他地区では広報を聞き取れず、あるいは訓練自体知らなかったという人もいる中で、情報の徹底という意味でも成果があります。
一方で課題も挙げられます。屋内退避先となる地域の集会場などは、お年寄りから子どもたちまで地域内の全世帯の人が滞在するには狭すぎだという指摘があります。
また班長は今回の訓練でも各班員への連絡を三巡することになります。事故の展開によってはさらに増える可能性もあります。電話が通じなければ直接訪問することになると思われますが、事故の混乱の中、自らの避難準備もしなければなりません。また放射能の拡散が早まれば外出による被ばくの恐れも高まります。自力避難したくてもできません。防災業務従事者ではない一般市民に、たまたま町内会長や班長であったからといってそこまで負担を強いることができるのかという疑問もあります。
【問2】とも関連しますが、北陸電力や行政からの事故情報に不信感をもち、一刻も早く自力避難したい人も出てきます。自然災害に対する防災対策と異なり、町会での同一行動が果たして適切か、あるいは可能かどうかも含めて検討が必要です。七尾市でも今回の訓練を踏まえ成果や課題が検討されることと思います。注視していきたいと思います。

志賀町は避難方法の抜本的検討を

前回調査と比較し「参加するつもりはない」が36%から16%へと大きく減少し、「参加したいが都合で参加できない」が31%から38%へと増加しています。原発事故が現実のものとなり、防災対策の必要性の認識は高まっているものと思われます。参加できない都合とは、これまでも繰り返し指摘されてきたことですが仕事や家事などではなく、急な坂道を上り下りして集合場所までいくのは身体的、体力的に大変ということです。要するに地区の高齢者が避難できる計画になっていないということです。今回初めてマイカーによる避難訓練が行われましたが、公民館に集合して出発というやり方で、実践的、現実的ではありませんでした。災害弱者への対応は依然として鈍いと言わざるをえません。

訓練実施が周知されていない羽咋市

羽咋市は「その他」が最も多くなっていますが、その主な内容は訓練があること自体「知らなかった」「聞いていない」というものです。当日の広報についても、混乱を避けるためという理由でおこなわず、事前に申し込みした人が早々と屋内退避所に集まってくる姿が見られました。七尾市と対照的な行政の対応でした。

訓練実施に疑問も

「そもそも原発をなくせば訓練の必要なない」「防災訓練をするということは動かすことを前提としているのかと思う」「いま止まっていて、この状態なら訓練はいらない」との声があります。一方で「廃炉まで時間がかかる」と訓練に理解を示す声もあります。
私たちは訓練当日の「声明」でも明らかにしましたが、福島第一原発4号炉を見ての通り、原発は止まっていても危険であり、再稼働を前提としなくても訓練の必要性はあると考えます。1999年の臨界事故隠しも定期検査中でした。
しかし今回の訓練が、「停止中の原発も危険」という県民がいま直面する危機への対応ではなく、なんら県民の間で合意のない再稼働を前提とした訓練だったことに県民は不信感を強めています。防災計画の見直しに消極的だった県が、今回の防災訓練を通じてどのように防災対策の充実につなげていこうとするのか、肝心の課題が極めてあいまいなままでした。訓練実施が住民と行政の信頼感の醸成につながったとは言い難い面があります。

【問2】今後の訓練について

 高まる防災訓練への期待

「いいことであり今後も続けてほしい」という回答が前回の14%から34%と大きく増えました。初めて実施する羽咋、七尾だけでなく志賀町でも29%と、継続を望む声が増えています。相対的に「訓練内容をもっと検討してほしい」という声は低下しています。これは従来の訓練が10キロ圏内の屋内退避にとどまり、避難ではなかったことに対し、今回は30キロ圏外への避難だったということ、また羽咋、七尾は初めての避難訓練であり、やったこと自体を評価する人が多かったからだと思われます。
私たちは従来から10キロ圏内にとどまる避難訓練の見直しを主張し続け、2008年の前回調査でも原発震災の危険が迫っていることを指摘し「行政も本気だと示すため、本格的な避難訓練の実施を」と訴えてきました。万が一、志賀原発で過酷事故が起こっていたなら、従来の訓練では全く対応できていなかったことを行政は率直に認めるべきです。
今回、福島第一原発事故を経験し、ようやく30キロ圏外への避難訓練が実施されましたが、一方で福島の現実をみたときに、まだまだ「訓練の想定が甘い」との声も参加者からあがりました。被ばくをいかに避けるか、いかに被ばく量の低減をはかるか、という原子力防災の一番の目的に照らしても、広報や避難の在り方に多くの課題を残しています。率直に言ってあらゆる訓練内容が、非現実的な想定を積み重ねる中で実施されています。訓練を通じて見えてくる課題は山積しており、私たちも積極的に情報を提供していく必要性を感じます。防災対策充実への思いは多くの住民の方と共通しており、今後の防災計画見直しに向けて地域の皆さんと共に議論をいきたいと思います。

志賀町では何をしても無駄が31%も

防災計画に期待する声が高まった一方で、志賀町では前回並みに「重大事故が起これば何をしても無駄」とあきらめの声が31%という比率を占めています。日常的に原発を見ながら暮らしている人たちにとって福島第一原発の水素爆発の映像は衝撃的だったと思われます。しかしながら福島の事故後の状況を見たとき、迅速に適切な方向に避難できるかどうかが被ばく量に決定的な違いをもたらすことが明らかになっています。福島の教訓に学んでいくことが重要です。羽咋や七尾は原発からの距離もあることから、何をしても無駄と考える人は少なくなりますが、それでも羽咋では21%を占めています。原発の過酷事故に対し初動対応が全く機能せず、無策無能だった国への不信が強いと思われます。

自力で避難したくてもできない人がいる

自力避難が志賀町で20%となっています。福島の現実を見たとき、もっと増えるのではとも思われましたが、この数字の背景には、高齢化などにより自力で避難したくても避難できない赤住や福浦の現実があることを理解しなければなりません。災害弱者への対応が急務です。
七尾市の自力避難21%も注目しなければなりません。町内や自主防災組織を活用しても、その一方で北陸電力や行政は信用できなという人が一定層存在します。行政も、この現実を踏まえなければ地域ぐるみの避難行動が逆に混乱をもたらすことになります。
福島の避難状況を見れば、実際にはもっと多くの人が自力での避難を図ると思われます。その時の交通渋滞も大きな課題です。風向きや放射能の拡散情報を迅速、的確に伝達していうことも求められます。

【問3】志賀原発について

 志賀町の複雑な思い

大飯原発の再稼働問題が連日大きく報道される中ではありましたが、「電力の供給や地域振興」を理由にストレートに必要性を認める意見は13%にとどまりました。「志賀原発はいらない」との回答が羽咋では44%、七尾では39%と最も多くなっています。むしろ福島第一原発事故を目の当たりにして、「いらない」とする人がもっと増えるかとも思われましたが、過半数には至りませんでした。電力不足キャンペーンが一定程度浸透しているともいえます。
一方、志賀町は「安全対策が強化されれば再稼働してもいい」とする人が最も多くなりました。特に赤住では46%の人が安全対策強化を条件としつつ再稼働を容認しています。長年の経緯、そして小泉町長が「原発停止が長期化すると町民のみなさんに痛みは伴う」と明言する中、原発に依存する地域経済を考えると「いらない」とまでは言い切れない複雑な住民感情が表れています。

 「いま建設に後悔している」との声も

前々回の調査を実施した2006年8月の防災訓練の前には耐震設計の不備を理由とした差止判決(2006年3月24日)がありました。さらに訓練直前である同年7月には営業運転を開始したばかりの2号機でタービンの設計ミスが発覚。差止判決でも止まらなかった2号機を原子力安全・保安院自らが停止しなければならない事態に追い込まれました。
前回の調査をおこなった2008年11月の防災訓練の前には、臨界事故隠しが発覚し(2007年3月)1号機が運転停止、直後の3月25日には志賀原発の耐震設計審査指針を超える能登半島地震が発生、さらに同年7月には中越沖地震が柏崎刈羽原発を襲うなど、志賀原発の安全性への不安が一段と高まりました。
原発の安全管理と国のチェック体制のズサンさが次々と明らかになる中での調査でしたが、それでも「表立って反対と言えない、どうにもならない」とのコメントがあったように、不安をもちながらも原発マネーに依存する町の実情が垣間見られました。
これに対し福島第一原発事故を経た今回は「元々反対だった。つくらなければよかった。今になって後悔している」「原発をなくせばこんな訓練はしなくてもいい」とのコメントに象徴されるように、30キロ圏外に避難しなければいけない訓練の中、志賀原発の存在自体を問い直す意識も確実に広がりつつあります。


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