北野進の活動日記

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「押しつけ憲法」論と二院制

2013-02-18 | 雑感
 安倍首相の再登板で、改憲をめぐる論議が改憲派、護憲派それぞれから活発に展開されている。
 「世界」3月号のテーマは「安倍『改憲政権』」を問う」である。

 自主憲法制定を党是とする自民党が改憲を主張する大きな根拠は現憲法がGHQによって押しつけられた憲法だという点にある。

 日本が1945年9月2日、敗戦によって署名した降伏文書には「日本はポツダム宣言実施のため、連合国最高司令官に要求されたすべての命令を出し、行動をとることを約束する」と書かれている。無条件降伏である。
 そういう意味では押しつけられた側面を全否定することはできない。

 これにたいして、手続きはともかく当時の大半の日本人が戦争放棄が明記され、天皇制も残った現憲法を歓迎したことは事実であり、占領終了後も改憲の道を選択することはなかった。加藤周一氏の「いいものはいいじゃないか」という考えも幅広い共感を得る感覚だろう。

 その上での議論となるが、「世界」では憲法学者の樋口陽一氏や奥平康弘氏が押しつけか否かについてホットな話題に触れながら具体的な論証を展開している。

 その中の一つが42条の衆参二院制の規定である。ねじれ国会の弊害が叫ばれて久しく、憲法を議論するのならば論点の一つでることに間違いない。
 実はマッカーサー草案は一院制を主張していた。米国は連邦制だから各州の人口比で議席配分する下院とは別に州の利害を反映する上院を設ける必要があったが、日本は単一国で必要ないという理屈だったそうだ。

 これに対して日本側は明治憲法以来の衆議院と貴族院による冷静・慎重な審議の経験を活かしたいと強く主張し実現したのが現制度とのこと。ねじれで決められない政治が想定されつつも熟慮の政治を選択したのである。

 そんな二院制であるが、自民党の改憲草案はと言えば、党内論議で一院制を採用すべき用すべきという意見が多いとしつつ、党内の合意形成の手続きがなお必要とのことである。要するに参議院の既得権との調整ができていないということである。
 国防軍やら領土の保全やら勇ましいことはことは盛り込まれているが、どこまで真剣に覚悟を決めてこの国のかたちを議論しているのか疑問を感じざるをえない。

 「押しつけ」と言われるが、42条だけでなく象徴天皇制を定めた第1条の文言からして当時の制憲議会で激しい議論が展開されている。

 同じく「世界」に寄稿している早稲田の水島朝穂教授は、1954年に出された自民党案はじめ多くの改憲案が提案されてきたが、現在の自民党案は最悪の出来とバッサリである。
 
 


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