北野進の活動日記

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志賀原発 避難時間シミュレーションを考える(3)~スクリーニングポイントの矛盾~

2014-02-16 | 志賀原発
 志賀原発の事故を起こした場合の避難シミュレーションについて、(1)そもそも立地不適当ではないか(2)シミュレーションの前提である避難率90%とはどういう意味か、という観点から問題点を指摘してきた。(1)についての第二弾も書きたいが、今回は昨年の訓練で新たに導入されたスクリーニングポイントとの関連で問題点を指摘したい。

 新たに改訂された原子力防災計画では住民の被ばくは避けられない内容となっている。従ってそのままでは被ばくした住民、汚染された避難車両が30キロ圏外へと出ていき、各避難所へと散っていくならば被ばく住民の除染の遅れ、汚染車両による放射能の拡散が懸念される。また、こうしたことが想定される場合、受入施設の確保も困難となる。
 このような理由からだと思われるが、昨年の防災訓練では奥能登方向では奥能登行政庁舎(能登空港駐車場)、金沢方向では石川県立看護大にスクリーニングポイントが設けられた。奥能登総合事務所は志賀原発から32キロ程度、県立看護大は31キロ程度と、ちょうど30キロ圏外へ脱出したところに位置する。ここで住民の被ばく量を測定するスクリーニングをおこなわれ、被ばくが確認された場合は除染をおこなう。車両のスクリーニングと除染は機材の関係で看護大でしか行わなわれなかった。

 避難住民がここでスムーズにスクリーニングを受け、必要な場合は除染を受け、あるいは車両も除染を受け、スムーズに避難先へと向かうことができるのならばこのシステムもありかもしれない。

 しかし、昨年の訓練では奥能登行政庁舎に設けられたスクリーニング班は5班、県立看護大は7班だった。1人に要するスクリーニングの時間は約2分半なので5班なら1時間で240人である。
 奥能登方向への避難住民は、観光客など一時滞在者を除いても29000人。これでは約240時間を要することになる。

 避難シミュレーションでは、様々な想定の下、30キロ圏外への避難完了が8~13時間程度となっているが、スクリーニングポイントを前に延々と大渋滞となること必至である。
 29000人の90%が避難し、うち95%が自家用車による避難だとすると24,795人がとりあえず半島先端へ避難することになる。5人ずつ乗って避難したとしても約5000台の車両数となる。一台当たり10m毎に並んだとして50キロの距離となる。
 これでは避難しようにも幹線道路へ出た途端、車は動かないだろう。

 仮にスクリーニング班を倍に増やしても渋滞解消とならない。
 国道249号の輪島方面、能登町方面にもスクリーニングポイントを設けて、計3か所、30班で対応しても全員がスクリーニングを受けるには34時間程度要することになる。

 金沢方面への避難者はその4倍程度となる。
 国道159号の県立看護大、里山海道の高松SA、そして国道471号沿いの3か所にそれぞれスクリーニングポイントを設けても、渋滞解消にはほとんど意味をなさない。

 スクリーニングポイントの通過を前提とすると避難シミュレーションは完全に破綻、避難できなくなるのである。

 スクリーニングと除染が遅れようと、そして車両による汚染が拡大しようと、一刻も早い避難を考えるならスクリーニングポイントの設置は中止するしかない。

 これだけ見ても、防災計画の破たんは明らかである。

 



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