志賀原発直下の活断層問題を受け、「さよなら!志賀原発」実行委員会は今日、県に対して志賀原発の廃炉、専門委員会の設置などを求め、申し入れをおこなった。
実行委員長の岩淵正明弁護士から橘原子力安全対策室長に申入書が渡され、1時間あまり質疑が行われた。
県は国の審査を見守りたいの一点張り。
さらに、活断層の見逃し、見落としの過去の経緯は設置を先送りした専門委員会で審議する対象ではないという。
当事者としての自覚や責任の認識がまったく感じられない。
志賀原発は、原発推進という国策と北陸電力の経営判断だけで建設されたわけではない。石川県としても能登半島の振興策の柱に据えて、立地に向け主体的に取り組んできた歴史がある。
赤住地区の住民投票の投票箱封印や県による肩代わり海洋調査など、陰に日に立地推進に大きな役割を果たしてきたのである。
私たちはこのような県であるから県独自に活断層調査をという要請はしない。はっきり言って厳正・中立な立場での調査を行うとは思えないからである。
しかし県としてできることはある。安全協定にもとづく原子力環境安全管理協議会(安管協)に専門委員会を設置することを先の安管協で確認している。
国、北電追随の過去の原子力行政の反省に立ち、規制する国、規制される北陸電力に対しての第三者的専門委員会をいまこそ立ち上げるべきである。もちろん地震・耐震問題に絞っての専門委員会である。
委員には原子力ムラから一線を画してきた専門家、特にこの間の活断層隠しを見破ってきた渡辺満久教授など変動地形学の専門家を入れることが重要なポイントである。
今日の申し入れでは、各分野の専門家を総花的にならべる委員構成については白紙にするとしたが、いつ発足させるとも、どのような委員構成にするかも具体的な回答はなかった。
竹中副知事(安管協会長)も専門委員会発足の先送りを早々と表明している。
S-1断層が保安院で活断層と指摘されるまで、ひたすら国や北電と一緒になって再稼働戦略を練ってきた県にとって、再稼働の展望が不透明になったいま、思考停止に陥ったかのようにS-1問題から逃げ回っている。
県は専門委員会を再稼働への手続きとしか考えていない。
私は安管協が専門委員会を発足させるのは次の3つのケースだと思う。
【ケース1】 再調査によって活断層隠しが成功したとき
専門委員会で活断層隠し上塗りをして再稼働のお墨付きを与える。活断層隠しに協力できる委員で固めなければいけない。委員には素直でおとなしい「御用学者」が望ましいだろう。
【ケース2】 再調査による断層評価について、専門家の間で意見が割れたとき
当然、安全の側に立って判断するべきであるが、県は逆に「危険の立場」、すなわち活断層ではないという説を強力に後押しできる発信力のある「御用学者」を並べてくるだろう。
【ケース3】 再調査によって活断層の疑いが極めて強いと判断されたとき
その結論に対し、国に追随するのはけしからん、地域主権の時代に逆行する、地域に与える影響は甚大だ(志賀原発の存廃が国内の電力需給に与える影響は小さいが)と主張し、日本初の安全審査の誤りによる廃炉を阻止するため、地元紙と連携し大々的キャンペーンを張る。理屈より声の大きさがポイントであり、あるいは茶の間にも知られたタレント的「専門家」を入れてくるのではないか。
いずれにしても、専門委員会を再稼働の手続きの中に位置づけているので、このままでは再稼働への展望が開けたときにしか委員名を公表しないだろう。
こんな事態は絶対に阻止しなければならない。
早ければ10月にも再調査の中間報告が出るのである。遅くともそれまでには第三者的に議論できる専門委員会を発足させ、チェックできる態勢を整えておくべきだ。
引き続き県の姿勢を厳しく追及していかなければならない。
この他にも大事な論点がたくさんあるが、今日は時間の関係もあるのでほとんど詰め切れなかったが、申入書を以下に掲載するので参考にしていただきたい。
石川県知事 谷本正憲 様
7月17日、「志賀原発直下に活断層か」と新聞各紙に大きく報じられました。さっそく同日、原子力安全・保安院で地震・津波に関する意見聴取会が開催され、委員からは国の安全審査において活断層が見落とされたことに対する批判や再調査を求める厳しい意見が相次ぎ、結局、原子力安全・保安院は、翌18日に、北陸電力に対して再調査の実施を指示せざるを得なくなりました。
いま問題になっているS-1断層は、新たに発見されたわけではなく、1988年12月1日に提訴された志賀原発1号機の差止め訴訟においても活断層である可能性が指摘されていました。もし敷地内の活断層が当初からきちんと評価されていれば、そもそも志賀原発は設置が許可されず、建設されなかったはずです。
7月30日、1号機の安全審査中(1987~88年)に北陸電力が当該断層の追加調査を二回にわたり実施していたことが明らかになり、当時の安全審査でなぜ「活断層ではない」との結論に至ったのか、なぜ活断層の疑いが見逃されたのか、「国はその経緯を検証し結果を公表する責務がある」と指摘されるような事態になっています。
もしS-1断層が活断層であることが確認されれば、志賀原発は設置許可が取消されることになり、必然的に廃炉になります。安全審査の過程に重大な過失があった可能性があるわけですから、設置を許可した国も当然、責任を問われることになります。原子力安全・保安院による再調査の指示は当然のことですが、保安院はこのS-1断層を今まで問題視してこなかったことに対して何ら責任を認めておらず、反省の言葉もまったくありません。
さらに、再調査の指示を受けた北陸電力は、19日の記者会見で堀祐一副社長兼原子力本部長が「耐震安全上、問題になるものではない」と従来の見解を繰り返し、「立地不適格や廃炉となる可能性はまったくないと考えている」と、調査をする前から早々と結論を述べています。
北陸電力は1999年6月18日に臨界事故を起こしながら、その後8年間にわたり、会社ぐるみでその事実を隠してきた前科があります。このような北陸電力が実施する再調査では、活断層調査ではなくて活断層を隠ぺいするための調査になるのではないかと、危惧せざるを得ません。北陸電力が実施する調査結果を、今まで活断層を見逃してきた国が審査して評価するのでは、不都合なデータの隠蔽やデータの捏造が繰り返される可能性があります。そのような事態を防止するためには、調査の方法や、調査結果の分析・評価に関して第三者がきちんとチェックできるような仕組みをつくることが不可欠です。
志賀原発において、福島のような原発震災を二度と起こさないようにするために、私たちは、以下の事項を申し入れます。
1.志賀原発の再稼働を認めず、廃炉を求めていく方針を明確にすること。
2.国に対して、志賀原発1号機の安全審査の過程で「S-1断層は活断層ではない」との結論に
至った経緯について、速やかに検証を実施し、責任の所在を明らかにするとともに、検証結果の
公表を求めること。
3.安管協の下に地震・耐震問題を徹底議論する専門委員会を設置すること。委員には「原子力村」
から一線を画して活動・研究してきた学者、および変動地形学の専門家を必ず入れること。
4.専門委員会には第三者的機能をしっかりもたせ、下記事項について審議し、また取り組むこと。
(1)北陸電力が実施する志賀原発敷地内の再調査について、その手法や評価結果をチェックし、
調査への立会や必要な是正措置も求め、断層の活動性の有無について徹底的に調査すること。
また、S-1断層のS-2~8断層への影響評価、連動の可能性等についても検討すること。
(2)北陸電力の調査、石川県(安管協を含む)による検討、国による安全審査など、過去に行な
われた活断層調査の詳細やその評価に係る資料や会議録を検証し、S-1断層が見落とされた
経緯、その原因と責任の所在を明らかにすること。
(3)過去の断層調査に係る議事録や資料、安全審査に関与した専門家の名前を公開すること。
5.志賀原発の廃炉に向け、下記事項について検討を進め、国や北陸電力に対して必要な要請行動をおこなうこと。
(1)国に対し原子炉等規制法の改正により、安全審査において活断層の見落とし等の重大な過失
があった場合の設置許可取消措置、および原発の運転停止命令や廃炉命令の規定を明確にする
よう求めること。
(2)国および北陸電力に対して、使用済み核燃料プールの安全対策や廃炉工程の策定、使用済み
燃料のより安全な保管方法について検討を開始するよう求めること。
(3)廃炉工程の期間中における原子力災害の危険に備えるため、実効性ある原子力防災態勢を確
立すること
(4)志賀町など原発財源に依存してきた自治体の財政計画の見直しに協力し、必要な措置を国に
求めること。
(5)再生可能エネルギーの導入促進に向けて取り組みを加速すること。
実行委員長の岩淵正明弁護士から橘原子力安全対策室長に申入書が渡され、1時間あまり質疑が行われた。
県は国の審査を見守りたいの一点張り。
さらに、活断層の見逃し、見落としの過去の経緯は設置を先送りした専門委員会で審議する対象ではないという。
当事者としての自覚や責任の認識がまったく感じられない。
志賀原発は、原発推進という国策と北陸電力の経営判断だけで建設されたわけではない。石川県としても能登半島の振興策の柱に据えて、立地に向け主体的に取り組んできた歴史がある。
赤住地区の住民投票の投票箱封印や県による肩代わり海洋調査など、陰に日に立地推進に大きな役割を果たしてきたのである。
私たちはこのような県であるから県独自に活断層調査をという要請はしない。はっきり言って厳正・中立な立場での調査を行うとは思えないからである。
しかし県としてできることはある。安全協定にもとづく原子力環境安全管理協議会(安管協)に専門委員会を設置することを先の安管協で確認している。
国、北電追随の過去の原子力行政の反省に立ち、規制する国、規制される北陸電力に対しての第三者的専門委員会をいまこそ立ち上げるべきである。もちろん地震・耐震問題に絞っての専門委員会である。
委員には原子力ムラから一線を画してきた専門家、特にこの間の活断層隠しを見破ってきた渡辺満久教授など変動地形学の専門家を入れることが重要なポイントである。
今日の申し入れでは、各分野の専門家を総花的にならべる委員構成については白紙にするとしたが、いつ発足させるとも、どのような委員構成にするかも具体的な回答はなかった。
竹中副知事(安管協会長)も専門委員会発足の先送りを早々と表明している。
S-1断層が保安院で活断層と指摘されるまで、ひたすら国や北電と一緒になって再稼働戦略を練ってきた県にとって、再稼働の展望が不透明になったいま、思考停止に陥ったかのようにS-1問題から逃げ回っている。
県は専門委員会を再稼働への手続きとしか考えていない。
私は安管協が専門委員会を発足させるのは次の3つのケースだと思う。
【ケース1】 再調査によって活断層隠しが成功したとき
専門委員会で活断層隠し上塗りをして再稼働のお墨付きを与える。活断層隠しに協力できる委員で固めなければいけない。委員には素直でおとなしい「御用学者」が望ましいだろう。
【ケース2】 再調査による断層評価について、専門家の間で意見が割れたとき
当然、安全の側に立って判断するべきであるが、県は逆に「危険の立場」、すなわち活断層ではないという説を強力に後押しできる発信力のある「御用学者」を並べてくるだろう。
【ケース3】 再調査によって活断層の疑いが極めて強いと判断されたとき
その結論に対し、国に追随するのはけしからん、地域主権の時代に逆行する、地域に与える影響は甚大だ(志賀原発の存廃が国内の電力需給に与える影響は小さいが)と主張し、日本初の安全審査の誤りによる廃炉を阻止するため、地元紙と連携し大々的キャンペーンを張る。理屈より声の大きさがポイントであり、あるいは茶の間にも知られたタレント的「専門家」を入れてくるのではないか。
いずれにしても、専門委員会を再稼働の手続きの中に位置づけているので、このままでは再稼働への展望が開けたときにしか委員名を公表しないだろう。
こんな事態は絶対に阻止しなければならない。
早ければ10月にも再調査の中間報告が出るのである。遅くともそれまでには第三者的に議論できる専門委員会を発足させ、チェックできる態勢を整えておくべきだ。
引き続き県の姿勢を厳しく追及していかなければならない。
この他にも大事な論点がたくさんあるが、今日は時間の関係もあるのでほとんど詰め切れなかったが、申入書を以下に掲載するので参考にしていただきたい。
2012年8月2日
石川県知事 谷本正憲 様
「さよなら!志賀原発」実行委員会
実行委員お長 岩淵 正明
実行委員お長 岩淵 正明
申 入 書
7月17日、「志賀原発直下に活断層か」と新聞各紙に大きく報じられました。さっそく同日、原子力安全・保安院で地震・津波に関する意見聴取会が開催され、委員からは国の安全審査において活断層が見落とされたことに対する批判や再調査を求める厳しい意見が相次ぎ、結局、原子力安全・保安院は、翌18日に、北陸電力に対して再調査の実施を指示せざるを得なくなりました。
いま問題になっているS-1断層は、新たに発見されたわけではなく、1988年12月1日に提訴された志賀原発1号機の差止め訴訟においても活断層である可能性が指摘されていました。もし敷地内の活断層が当初からきちんと評価されていれば、そもそも志賀原発は設置が許可されず、建設されなかったはずです。
7月30日、1号機の安全審査中(1987~88年)に北陸電力が当該断層の追加調査を二回にわたり実施していたことが明らかになり、当時の安全審査でなぜ「活断層ではない」との結論に至ったのか、なぜ活断層の疑いが見逃されたのか、「国はその経緯を検証し結果を公表する責務がある」と指摘されるような事態になっています。
もしS-1断層が活断層であることが確認されれば、志賀原発は設置許可が取消されることになり、必然的に廃炉になります。安全審査の過程に重大な過失があった可能性があるわけですから、設置を許可した国も当然、責任を問われることになります。原子力安全・保安院による再調査の指示は当然のことですが、保安院はこのS-1断層を今まで問題視してこなかったことに対して何ら責任を認めておらず、反省の言葉もまったくありません。
さらに、再調査の指示を受けた北陸電力は、19日の記者会見で堀祐一副社長兼原子力本部長が「耐震安全上、問題になるものではない」と従来の見解を繰り返し、「立地不適格や廃炉となる可能性はまったくないと考えている」と、調査をする前から早々と結論を述べています。
北陸電力は1999年6月18日に臨界事故を起こしながら、その後8年間にわたり、会社ぐるみでその事実を隠してきた前科があります。このような北陸電力が実施する再調査では、活断層調査ではなくて活断層を隠ぺいするための調査になるのではないかと、危惧せざるを得ません。北陸電力が実施する調査結果を、今まで活断層を見逃してきた国が審査して評価するのでは、不都合なデータの隠蔽やデータの捏造が繰り返される可能性があります。そのような事態を防止するためには、調査の方法や、調査結果の分析・評価に関して第三者がきちんとチェックできるような仕組みをつくることが不可欠です。
志賀原発において、福島のような原発震災を二度と起こさないようにするために、私たちは、以下の事項を申し入れます。
申し入れ事項
1.志賀原発の再稼働を認めず、廃炉を求めていく方針を明確にすること。
2.国に対して、志賀原発1号機の安全審査の過程で「S-1断層は活断層ではない」との結論に
至った経緯について、速やかに検証を実施し、責任の所在を明らかにするとともに、検証結果の
公表を求めること。
3.安管協の下に地震・耐震問題を徹底議論する専門委員会を設置すること。委員には「原子力村」
から一線を画して活動・研究してきた学者、および変動地形学の専門家を必ず入れること。
4.専門委員会には第三者的機能をしっかりもたせ、下記事項について審議し、また取り組むこと。
(1)北陸電力が実施する志賀原発敷地内の再調査について、その手法や評価結果をチェックし、
調査への立会や必要な是正措置も求め、断層の活動性の有無について徹底的に調査すること。
また、S-1断層のS-2~8断層への影響評価、連動の可能性等についても検討すること。
(2)北陸電力の調査、石川県(安管協を含む)による検討、国による安全審査など、過去に行な
われた活断層調査の詳細やその評価に係る資料や会議録を検証し、S-1断層が見落とされた
経緯、その原因と責任の所在を明らかにすること。
(3)過去の断層調査に係る議事録や資料、安全審査に関与した専門家の名前を公開すること。
5.志賀原発の廃炉に向け、下記事項について検討を進め、国や北陸電力に対して必要な要請行動をおこなうこと。
(1)国に対し原子炉等規制法の改正により、安全審査において活断層の見落とし等の重大な過失
があった場合の設置許可取消措置、および原発の運転停止命令や廃炉命令の規定を明確にする
よう求めること。
(2)国および北陸電力に対して、使用済み核燃料プールの安全対策や廃炉工程の策定、使用済み
燃料のより安全な保管方法について検討を開始するよう求めること。
(3)廃炉工程の期間中における原子力災害の危険に備えるため、実効性ある原子力防災態勢を確
立すること
(4)志賀町など原発財源に依存してきた自治体の財政計画の見直しに協力し、必要な措置を国に
求めること。
(5)再生可能エネルギーの導入促進に向けて取り組みを加速すること。
以 上
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