心の願いを聞かれる主
イエス様がこう言われました。「子よ、あなたの罪はゆるされた」(マルコ2:5)。イエス様は彼の心の内をご存じだったのですね。彼の長い間の祈りを、イエス様は聞いておられました。イエス様から赦しを、救いをいただくためならどんなことでもするという彼の覚悟を、イエス様は知っておられました。この当時のユダヤ教会において、この社会においては、自分は罪のゆえにこのような呪いを受けていると思っていたわけです。
「子よ、あなたの罪はゆるされた」とイエス様がこの男に言われた時、このイエス様の優しい声が、彼の耳に心地良く届きました。そして彼の体内にまで入っていったんです。彼のお腹の中、肝臓、腎臓至る所に、筋肉にも、イエス様のこの御言葉が体中に浸透して行きました。そして彼は、新しく創られた者になっていったのです。
「メシアであられる救い主イエス様が、私に『あなたの罪は赦された』と言ってくださった!私がここに来てから、『赦して下さい』とも言わないうちに。でも神様はご存知でした。私の心のふかーい願望をご存知であられた。このお方は神様に違いない、このお方が、私の罪は赦されたと言われた」。
その時彼の内に再生の力が働いたのです。新しく創られました。再創造がなされました。長年にわたって彼は、この赦しの言葉を聞くことを待ちわびていたのです。他に誰も、彼にこのような言葉を言ってくれる人はいませんでした。本当の意味において・・・。
この時、同時にイエス様はパリサイ人、律学者たちの心の思いも見破られました。彼らはイエス様を、「この男は神を冒涜(ぼうとく)している」と思ったわけです。しかしイエス様は、「あなた方は私が冒涜の罪を犯していると言うのか?あなた方に命を与えたのは私ですよ。私に赦しの力があることを、あなた方は悟らないのですか。では、『あなたは赦された』と言うのと『床を取って家に帰りなさい』と言うのとどちらがやさしいか」と言われました。みんな黙っていました。一言も発することが出来なかったのです。ペテロですら息を殺して黙っていました。「これはどういう意味だろう?イエス様は何を言おうとしておられるのだろう?」皆もう破れた天井のことなど忘れていました。これはもう生と死にかかわる問題であったわけです。