安全性を尊重しないための論法
国家戦略室・エネルギー・環境会議コスト等検証委員会委員である、山名 元 京都大学原子炉実験所教授は、有識者の意見として、
「エネルギー計画は、今後の社会、経済、国力等を決定づける重要なものです。残念なことに、福島第一原発の事故以降、エネルギー問題を非常に感情的に捉える風潮が定着しました。今必要なことは、「将来のエネルギーの安定供給を、いかに確保できるか(エネルギー安全保障)?」に対する冷静で戦略的な判断です。原子力はもちろん、火力発電にも、再生可能エネルギーでさえも、なんらかの形で「リスク」「便益」「コスト(負担)」が存在します。」
http://www.sentakushi.go.jp/members/hajimu_yamana.html
と述べている。
「感情的に捉える風潮」とはどういうことを指しているのだろうか? 内容を明瞭に言ってほしいところである。
反原発や脱原発という態度は、感情的と言っているのだろうか? 安全で安心な生活をしたい場合には、すべての原発は廃炉にすべきである。少しでも運転しない方が、核廃棄物生産量、したがってなんらかの形で放射能の安全管理をしなければならない量が増えない。
次には、どんなものにも「「リスク」「便益」「コスト(負担)」」があるという論法である。ともすれば安全性を犠牲にする、偏った経済的考え方である。
原子力発電が他の発電方法と異なるのは、放射性物質を生じることである。この点だけからでも、[核分裂型]原発は採用すべきではない。ましてや、事故などがあればそれをわれわれの生活環境にまき散らすということである。福島原発事故が示した通りである。この被害額は一つの電力会社が賄えるものまではなかった。サッチャーが望んだにもかかわらず、英国での原子力発電の保険を引き受けるところはなかったのも道理である。東電はさっさと会社整理すべきだった。
今でも、福島第一原発の状態は、不安である。たとえば、第4号機の建屋が倒壊して、
[I]
今西憲之+週刊朝日取材班.2012.3.福島原発の真実:最高幹部の独白.222pp.朝日新聞出版.[1260円(税込)][B20120806]
「なぜか原子炉建屋の辺りだけはる厚い岩盤を掘り下げ、標高が低くなっていた。だから、最初にヤード側から原子炉に向かうとき、急な下り坂だったのだ。〔略〕もし、岩盤を削らず小高い丘の上に原子炉建屋が立っていたら、津波の被害は防げたのではないか?
「なぜ、岩盤を掘り下げて、原子炉を造っんですか」
と私が大声で尋ねると、最高幹部はただ首を横に振るばかりだった。」(162頁)
[S]
サター,アンドリュー・J.(中村起子訳 2012.3)経済成長神話の終わり:減成長と日本の希望.330pp.講談社現代新書.[880円+][B20120327][RH20120807]
[ 「だが、忘れてはならない。もともと高台だった福島第一原発の建設用地を、「生産性」向上のため東京電力が25メートルも掘り崩してから40年後、原子力発電所を大津波が襲ったことを。
明治時代と昭和時代の津波被害を忘れるな、ここより海抜の低い土地には住むな、と先人が戒めた記念碑よりも、巨大な防波堤を信じた人々が何千人もいた。それは、技術とイノベーションに対する心からの信頼でもあったのではないか。
WTOの指導のもと、また各種の自由貿易協定のもとで、日本が開国しつつある。それにもかかわらず、大半の日本人はどんどん貧しくなっている。」
http://hp.shr-horiuchi.com/?eid=1421247]
佐藤一男. 2006.2.改訂 原子力安全の論理.日刊工業新聞社.[3,570円][B20
[Y]
*安冨歩.2012.7.幻影からの脱出:原発危機と東大話法を越えて.明石書店.[1,680円][第二章は、『原子力安全の論理』の自壊]
国家戦略室・エネルギー・環境会議コスト等検証委員会委員である、山名 元 京都大学原子炉実験所教授は、有識者の意見として、
「エネルギー計画は、今後の社会、経済、国力等を決定づける重要なものです。残念なことに、福島第一原発の事故以降、エネルギー問題を非常に感情的に捉える風潮が定着しました。今必要なことは、「将来のエネルギーの安定供給を、いかに確保できるか(エネルギー安全保障)?」に対する冷静で戦略的な判断です。原子力はもちろん、火力発電にも、再生可能エネルギーでさえも、なんらかの形で「リスク」「便益」「コスト(負担)」が存在します。」
http://www.sentakushi.go.jp/members/hajimu_yamana.html
と述べている。
「感情的に捉える風潮」とはどういうことを指しているのだろうか? 内容を明瞭に言ってほしいところである。
反原発や脱原発という態度は、感情的と言っているのだろうか? 安全で安心な生活をしたい場合には、すべての原発は廃炉にすべきである。少しでも運転しない方が、核廃棄物生産量、したがってなんらかの形で放射能の安全管理をしなければならない量が増えない。
次には、どんなものにも「「リスク」「便益」「コスト(負担)」」があるという論法である。ともすれば安全性を犠牲にする、偏った経済的考え方である。
原子力発電が他の発電方法と異なるのは、放射性物質を生じることである。この点だけからでも、[核分裂型]原発は採用すべきではない。ましてや、事故などがあればそれをわれわれの生活環境にまき散らすということである。福島原発事故が示した通りである。この被害額は一つの電力会社が賄えるものまではなかった。サッチャーが望んだにもかかわらず、英国での原子力発電の保険を引き受けるところはなかったのも道理である。東電はさっさと会社整理すべきだった。
今でも、福島第一原発の状態は、不安である。たとえば、第4号機の建屋が倒壊して、
[I]
今西憲之+週刊朝日取材班.2012.3.福島原発の真実:最高幹部の独白.222pp.朝日新聞出版.[1260円(税込)][B20120806]
「なぜか原子炉建屋の辺りだけはる厚い岩盤を掘り下げ、標高が低くなっていた。だから、最初にヤード側から原子炉に向かうとき、急な下り坂だったのだ。〔略〕もし、岩盤を削らず小高い丘の上に原子炉建屋が立っていたら、津波の被害は防げたのではないか?
「なぜ、岩盤を掘り下げて、原子炉を造っんですか」
と私が大声で尋ねると、最高幹部はただ首を横に振るばかりだった。」(162頁)
[S]
サター,アンドリュー・J.(中村起子訳 2012.3)経済成長神話の終わり:減成長と日本の希望.330pp.講談社現代新書.[880円+][B20120327][RH20120807]
[ 「だが、忘れてはならない。もともと高台だった福島第一原発の建設用地を、「生産性」向上のため東京電力が25メートルも掘り崩してから40年後、原子力発電所を大津波が襲ったことを。
明治時代と昭和時代の津波被害を忘れるな、ここより海抜の低い土地には住むな、と先人が戒めた記念碑よりも、巨大な防波堤を信じた人々が何千人もいた。それは、技術とイノベーションに対する心からの信頼でもあったのではないか。
WTOの指導のもと、また各種の自由貿易協定のもとで、日本が開国しつつある。それにもかかわらず、大半の日本人はどんどん貧しくなっている。」
http://hp.shr-horiuchi.com/?eid=1421247]
佐藤一男. 2006.2.改訂 原子力安全の論理.日刊工業新聞社.[3,570円][B20
[Y]
*安冨歩.2012.7.幻影からの脱出:原発危機と東大話法を越えて.明石書店.[1,680円][第二章は、『原子力安全の論理』の自壊]