生命哲学/生物哲学/生活哲学ブログ

《生命/生物、生活》を、システム的かつ体系的に、分析し総合し統合する。射程域:哲学、美術音楽詩、政治経済社会、秘教

Bunge哲学辞典:argument 論証

2012年08月26日 10時55分33秒 | Mario Bunge哲学辞典
2012年8月26日-2
Bunge哲学辞典:argument 論証

argument 論証 [BungeDic1, p.23]
 【a 日常言語】論争。
 【b 論理〔学〕】前提から結論への(妥当な、または妥当ではない)推論。唯一の妥当な論証は、演繹〔導出〕である。妥当性はもっぱら、形式に依存する。それゆえ、『すべてのメロンは高潔である。これはメロンである。よって、このメロンは高潔である』は、形式的に妥当である。妥当性にかかわらず、諸論証は実り多かったり不毛であったりし得る。妥当ではないが実り多ければ、それらは_魅惑的 seductive_だと言われるかもしれない。例:無作為標本から母集団への統計的推測。非演繹的論証は、内容に依存する。したがって、帰納的論理または類推的論理を建設しようという企画は、倒錯している wrong‐headed。非演繹的論証は、認知心理学と認識論に属するのであって、論理学に属するのではない。類推的論証と帰納的論証は、示唆的ではあるが、論理的に妥当ではない。

 〔訳注。論理または論理学の範囲を、非演繹的論証も含めた(意味内容に関連した)論理的側面を研究するものだと拡張すれば、演繹的論証の性質も逆照射的にわかるというものではないか? 頑迷固陋な wrong‐headed というべき。さらに、論理学が推論を扱うのならば、推論は心理学の一分野、つまり心的物体の振る舞いに関する学問だと主張できるだろう。
 なお、科学は事実と関わるので、科学的推論とか科学の哲学のおける論証または議論 argumentは、演繹的推論だけではなく、なんらかの形で事実に言及することになる。いわゆる「科学的」事実に言及しないのならば、その議論は、狭い意味での論理学または数学の部類である。〕



Bunge哲学辞典:category mistake カテゴリー錯誤、causalism 因果主義

2012年08月26日 10時28分07秒 | Mario Bunge哲学辞典
2012年8月26日-1
Bunge哲学辞典:category mistake カテゴリー錯誤、causalism 因果主義

category mistake カテゴリー錯誤〔部類錯誤〕 [BungeDic1, p.35]
 或る類 kind に属する或る対象を、別の類に属すると提示〔呈示 presentation〕すること。例:自由意志を予測可能性と混同すること、また、『集団的記憶 collective memory』と『行為〔行動 actions〕の意味』について話すこと。

causalism 因果主義 [BungeDic1, p.35]
 ↑【因果連関 causation】は、生成の唯一の様態 mode だとする存在論的テーゼ〔定立〔定立命題〕〕。放射能、神経細胞の自発放電、そして↑【自己集成 self-assembly】によって反証された。
 〔訳注。前二者は暗黒物質が検出されれば反確証例にはならないかもしれない。また、自己集成は、機構が不明のままであると思う。マーナ・ブーンゲ『生物哲学の基礎』では、創発は自己組織化と同一視されているが、自己組織化もまた機構が不明のままであると思う。つまり、十分な説明の無い概念である。〕


日本の政治経済社会構造:ウォルフレンによる分析

2012年08月26日 01時14分54秒 | 生命生物生活哲学
2012年8月26日-1
日本の政治経済社会構造:ウォルフレンによる分析

 2012年8月25日、ウォルフレン『人間を幸福にしない日本というシステム』を読了した。
 たとえば、小沢一郎氏は排除されるだろうという(1994年の)予想は当たっている。
 注目した箇所は次の通り。

 1. 日本の官僚制度の特徴(83頁)。
  各省庁は、それぞれの法をつくり、それを好きなように解釈できる権力を持っている。また、その法を、許認可を与えたり与えなかったり、脅したりなどして、執行する力がある。政治家は、官僚たちがやることにほとんど影響力が無い。
 2. 実際に(闇)権力をもっている人たちを管理者と呼ぼう(90頁以降)。
  管理者たちとは、
  1. 政府省庁の官僚、
  2. 産業団体(経団連、日経連)、系列企業、銀行
であり、支えていたり補完しているのは、
  3. 御用学者(政府官僚御用達)の多い審議会、
  4. 大新聞やテレビなどのマスコミ、
  5. 一部の労働組合、
その他である。
 3. 検察庁は法務省の統制下にあるから、官僚制度全体の下僕である(115頁)。
 4. 管理者たちは、物事をあいまいにして、恣意的な運用を行なう(116頁)。
 5. 投機家は、紙の経済で儲けることができた(190頁)。
 6. 日本経済新聞は、バブル経済を演出した高級官僚専属の広報紙の役割を担った(203頁)。
 7. 大蔵省役人が権力を握り続けていられるのは、他よりも重要情報を握っているからである(203頁)。
 8. 「日本の主要企業の投資資金は、保険会社や信託銀行を経由して株式市場に流入した家計部門の貯蓄によって賄われた。企業の手もとには投資された資産が残ったが、〔略〕家計部門と金融機関からは何兆円もが消えて失くなった。つまり、1980年代後半に起きたことは、家計部門から産業部門への〔略〕移転にすぎないのだ。」(204頁)。
 9. 「村山首相の同意をとりつけた消費税値上げは、「福祉税」財源手当てとして提示された。しかし実質的には、これも経済官僚の「バブル」政策の尻ぬぐいをするためのものだ。」(204頁)。
 10. 「日本の住む人々は必要以上に長びく不況にさらされている。世界一高い物価から逃げられない。〔略〕そして今後は、保険料、公共料金、税金などの引き上げが日本の人々を見舞うことになるだろう。」(223頁)。
 11. 「日本の有害な惰性の第二の原因は、一般の人々があい変わらず「シカタガナイ」と言いつづけ、思いつづけていることだ。」(235頁)。
 12. 「大蔵省の官僚たちは株価と地価の狂乱的暴騰へと日本経済を導き、それが「バブル経済」を出現させた。〔略〕日本の何百万世帯の財力にそのつけをまわした。そしてすぐにまた、彼らは納税者と消費者からもっと金をしぼり取ろうとしている。それは、大企業と金融機関を破産させないためにこれから必要となるであろう金であ〔る〕」(237頁)。
 13. 「日本には、政治的な意味で力をもった知識人階級がない。〔略〕市民は〔そうした知識人階級〕をつくる手助けをしなければならない。」(271頁)。
 14. 「日本の多くの知識人は、管理者たちに誘い込まれて、既成秩序の宣伝活動をさせられている」(272頁)。
 15. 「八〇年代の前半には、当時の中曽根康弘首相の強力なお声がかりで、既成の体制を保守する大目的のために、知識人の第二の大動員がおこなわれた。京都に国際日本文化研究センターができたのはこの運動の一環だった。」(273頁)。
 16. 審議会は、日本の統治システムをより民主的にする制度だと見せかけられている。〔略〕実際は、官僚制に仕える召使のような人々で構成されている。〔略〕
 審議会制度が日本の政治システムから駆除されるまでは、この制度がもたらす害悪を最小限にとどめるための別の運動が必要である。〔略〕
 審議会の意思決定の全過程が公開されねばならない。」(283-285頁)。
 17. 新しい法律をつくったり、いまある法律を変えたりすることができる。通称「市民立法権」という公民権である。地方自治法第二章〔編?〕第十二条第一項。
 クビアック『日本にデモクラシーを:市民運動のための処方箋』
http://books.google.co.jp/books?id=3AoNDI3oNH0C&printsec=frontcover&dq=%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AB%E3%83%87%E3%83%A2%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%82%B7%E3%83%BC%E3%82%92:+%E5%B8%82%E6%B0%91%E9%81%8B%E5%8B%95%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AE%E5%87%A6%E6%96%B9%E7%AE%8B&source=bl&ots=hVPnZW_3up&sig=jzXanmWNclSK2lEzIxc4nRpGwEc&hl=ja&sa=X&ei=EvY4UMb7I-rOmAXlyoHQAQ&ved=0CDAQ6AEwAA#v=onepage&q=%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AB%E3%83%87%E3%83%A2%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%82%B7%E3%83%BC%E3%82%92%3A%20%E5%B8%82%E6%B0%91%E9%81%8B%E5%8B%95%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AE%E5%87%A6%E6%96%B9%E7%AE%8B&f=false
 18. 「大学は、〔略〕日本では、新聞と同じく、市民社会の力を弱めがちである。〔略〕大学は現状維持のための勢力なのだ。」(309頁)。
 19. 政治制度の目的の中心には、政治と秩序という理想がある。
 20. 「大衆社会の形成者としてのテレビの影響は、総合的に見れば、〔略〕市民社会にとって不健全なものである。〔略〕受け身の娯楽に慣らされてしまっているのだ。しかし、政治は真剣な営みなのである。」(331頁)。
 21. 怖れるな Fear not。勇気を揮おう。
 22. 「真の愛国心とは、最終的には隣人たちへの思いやりから生まれる。近くにも遠くにもいる、あらゆる隣人たちへの人間的共感から生まれるのだ。」(348頁)。

 
 日本を変革するためには(242-243頁)、わたしなりにまとめると、
  1. 日本の政治社会の仕組みについて知ること。
  2. 官僚など政治的権力者たちの行動について知ること。
  3. 情報公開と話し合いを求める。
  4. 家族や知り合いを市民になるようにすすめる。
  5. 影の省庁をつくる。市民集団をつくる。
    政府の行動を監視し、自分たちの解決策を練る。
    行動的な市民の仲間を募って、或る省庁に的を絞って働きかける。
    グループ間のネットワークをつくる。

 この本を読んで、大恐慌があるとして、それは「日本発」だという見解はあたっているのかもしれない、と思った。

 
[W]
*ウォルフレン,カレル・ヴァン〔Karel van Wolferen〕.(篠原勝訳 1994.11),人間を幸福にしない日本というシステム.毎日新聞社.[OCL302.1]

ウォルフレン,カレル・ヴァン.(井上実訳 2012.3)日本を追い込む5つの罠.角川書店[角川oneテーマ].