きのうの「3か月に一度」のお約束「いつも赤信号な交差点」シリーズにつづいて、きょうは「年に一度」、そして基本的に毎年12月30日のお約束「美術館・博物館めぐりの振り返り」です。
毎年、TOP 10と、そのなかからTOP 3を選んでいますが、今年は例年以上に楽しかった展覧会が多くて選考に悩みました。
例年ならTOP 3に入ってもおかしくないような展覧会がTOP 10どまりだったり、TOP 10に入ってよかった展覧会が選外になったりしています。
そんなところを念頭に置いて、まずはTOP 3 (順不同)
気がつくと、ミュシャ展の見聞録をブログに書いていなかった もので、この場でさらっと書いておきます。
ミュシャといえば、ポスターがメインだと思っていた私の目からウロコがガバリと落ちました。
パリを舞台にしたミュシャのポスターや装飾アートでの商業的な成功は、「スラヴ叙事詩」を描くための準備に過ぎなかったのではなかろうか? とまで思ったりして。
故郷に戻り、「スラヴ叙事詩」に仕上げたときのミュシャはさぞかし幸せだったのだろうな、と心がじんわりと熱くなりました
スラヴ叙事詩の全作品を東京の美術館で直に観られるなんて、これは今年の一大事だぞ と大興奮でした。
観に行こうと思いつつ、気がついたら終わってたなんて方、申しわけないながら、断言させていただきます。一生の不覚でしたぞ
喜多川歌麿の巨大肉筆画「深川の雪」が約70年ぶりに発見されて岡田美術館に収蔵されたというニュースを聞いて以降、いつか現物を拝見したいと思っていたところ、「深川の雪」を含む雪月花三部作のうち「吉原の花」が日本に里帰りして、門外不出のフリーア美術館所蔵の「品川の月」の高精細複製画と共に展示されるというので、はるばると箱根まで観に行きました。(Misia Candle Nightの河口湖公演への日帰り遠征ついでではあったのだけれど…)
3幅の巨大な、華やかかつ優美な作品を見入っていると、江戸時代にタイムスリップした気分…。
私の中で歌麿は、お気に入りの鈴木春信、歌川広重、葛飾北斎、東洲斎写楽よりもちょいと斜め下に置かれていたのですが、この3幅をしげしげと拝見して私の歌麿に対する見方が赤丸急上昇(古い表現)したのでありました。
私、鎌倉時代の彫刻が大好きでありまして、常々「鎌倉時代は日本美術史のルネサンスだ」と思っていまして、さしずめ運慶はミケランジェロみたいな存在でしょうか、、なんてことを考えるのは私だけではないようです。運慶が250年も早い(古い)のですが…
私、運慶および一派の作品は、奈良・興福寺を中心に(運慶展の「冠」は「興福寺中金堂再建記念特別展」)、あちこちで何点も、何度も拝見してそのたびに感服しておりまして、この展覧会では、お気に入りの作品たちに再会できました。
再会できた作品も、初見の作品も、個々の作品として素晴らしいし、それらが一堂に会すること自体も素晴らしかった 展示方法も良かったですし…。
「史上最大の運慶展」のキャッチコピーを裏切らない、見事な展覧会でした。
「次点」の展覧会は以下の7展(順不同)です。
カッサンドル・ポスター展 @埼玉県立近代美術館(MOMAS) [記事]
川原慶賀の植物図譜 @MOMAS [記事]
遠藤利克展 @MOMAS
藝「大」コレクション @東京藝術大学大学美術館 [記事]
フランス人間国宝展 @東京国立博物館 [記事]
北斎とジャポニスム @国立西洋美術館 [記事]
太陽の塔 1967-2018 @岡本太郎記念館 [記事]
この7展のうち、遠藤利克展のことは記事にしていないし、川原慶賀の植物図譜と藝「大」コレクション のことは中途半端で放置していてあれまぁ~ なもので、ここで「一部撮影 可」だった遠藤利克展の様子をちょいと載せます。
2Fのエレベーター前に、「空洞説-円い沼」がどーん
巨大さもさることながら、炭化した木の表面が妙になまめかしいし、臼のように刳り込まれた底に溜まった(?) タールが匂って、ただならぬ風情を漂わせていました。
また、館中央の吹き抜けに、マンズーの「枢機卿」に見つめられるように置かれた「空洞説-薬療師の舟」は、「何が起こったのか?」「これから何が起こるのか?」と、心を波立たせます。
マストのように屹立する柱の根元を観ると、、、
宙に浮いています (柱は天井から吊されています)
この柱から連想したのは、建物を支えるのではなく、床下に届かない高さで地面に埋まっている「心御柱(しんのみはしら)」。
両者は上下逆ですが、俗人が立ち入ってはならない 空気を漂わせるところは似ているかと…
昨年はTOP10に2つの特別展が入ったMOMASでしたが、今年は3展が入りまして、相変わらず着眼点の良い、かつ、内容の充実した特別展を企画し続けています。
MOMASでは来年1月16日から「版画の景色 現代版画センターの軌跡」(リンク先は現在「準備中」)が開催予定で、MOMASときたら、フライヤーを3種類用意しているなど、これまた相変わらずです。
惜しくもTOP 10に入れなかった展覧会は以下のとおり。
例年だったら楽々TOP 10に入ってもおかしくないような展覧会がいくつも入っています。
並河靖之七宝展 @東京都庭園美術館 [記事]
藤森照信展@水戸芸術館現代美術ギャラリー
東山魁夷 唐招提寺御影堂障壁画展 @茨城県近代美術館
日本のポスター芸術 @うらわ美術館 [記事]
米美知子「森に流れる時間」、中村征夫「美ら海きらめく」
@フォトギャラリーブルーホール
DEPARDON / TOKYO 1964-2016 @CHANEL NEXUS HALL [記事]
阿修羅 天平乾漆群像展 @興福寺
南方熊楠 100年早かった智の人 @国立科学博物館
奈良国立博物館で開催されている恒例の「正倉院展」に、私は初めて行くことができまして、「正倉院御物」の凄まじさはもちろん、日本文化の歴史の重みを感じて、噂に聞く「正倉院展」とはこんな展覧会なのだと体感して、できることなら毎年行きたい と思いました。
毎年、出陳物を入れ替えて開催されている「正倉院展」、今年は例年に比べてどうだったのか比較のしようがありませんので、敢えてTOP 10 の選考対象外としました。
ということで、2017年の美術館・博物館めぐりの振り返りはおしまいです。
来年もステキな展覧会をたくさん観ることができるといいな。