薬罐だって
空を飛ばないとはかぎらない。
水のいっぱい入った薬罐が
夜ごと、こっそり台所をぬけ出し、
町の上を、
心もち身をかしげて、一生けんめいに飛んで行く。
天の河の下、渡りの雁の列の下、
人工衛星の弧の下を、
息せき切って、飛んで、飛んで、
(でももちろん、そんなに早かないんだ)
そのあげく、
砂漠のまん中に一輪咲いた淋しい花、
大好きなその白い花に、
水をみんなやって戻って来る
『春の散歩・1982年・青土社刊』より。
今朝の朝日新聞の「天声人語」に引用されていました。
この作品は、かつて大岡信が朝日新聞の2004年10月7日付けの「折々のうた」
でも取り上げていました。
ともかく入沢康夫は薬罐を空に飛ばせちゃったのである。
それに応えて薬罐はエッチラオッチラと、
水で重くなったからだで必死になって空を飛んだのである。
夜ごと、台所の窓からこっそり抜け出しては、
砂漠の愛しい白い花に逢いにいくのである。お水を差し上げるために。
そして朝にはいつもの薬罐に戻って、家族のコーヒーの湯をわかす。
そのコーヒーをのみながら詩人はひそかに薬罐を労い、そして微笑む。
その頃薬罐はうつらうつら……。(私の想像です。)
お元気でしたか?
トキワツユクサは、なんとも清楚で可愛い花ですね。
私達の同人誌も年2回でやっています。
なんとか書き続けています。
またお会いできますように。
わが家の庭のあちこちに盛んに咲いているトキワツユクサの写真、青いつゆくさと共に、好きな花になりました。紫露草は、格が上かもしれませんが、いまいちです。
小網さんたちと、年に2回くらい発行する『たまたま』と言う同人誌に参加させて頂いております。お元気にご活躍を…!