以前は「旧いメルセデスの電機屋」。。。現在は、、、「隙間風産業の超零細企業」の業務日報。。。

旧いメルセデスの電機屋のニッチな仕事のお話。。。http://jun3104.shop19.makeshop.jp/

ASRのまた違った壊れ方のお話。。。

2021-03-05 10:10:00 | 日記
30年選手の毒車の故障。。。

コトにASR故障。。。

以前の当ブログでも色々なパターンのお話をしてますが。。。

最近少しずつ増えている新たなパターンのASR故障。。。

故障発生のプロセスとしては。。。

アクセル気合入れて全開→ASR作動のタイミングでガクンとパワーダウン。。。

「ASR」ランプ点灯。。。V12だと取り敢えずはフェイルセーフ状態で遅いけど走れる。。。

だけど、、、今まで定番だったフェイルセーフ状態とは違ってアクセルペダルのスロットルONポイントが奥に行かない。。。

119系のV8だとエンジン停止して再始動不可。積載車で♪ドナドナドナド〜ナ〜と、なる。

症状発生のプロセスはDASなどの診断機でほぼ想像がつきますが、、、

この時点で色々なエラーがメモリーされちゃってますけど最大の肝はGMモジュールの「F2オープン」と言うフォルトコード。。。

GMモジュールに挿さっている3本或は4本の赤いブレードヒューズの2番目、F2が断線と言うパターン。。。

このヒューズが切れるとV8モデルにあっては一個しか存在しないフューエルポンプリレーが動作しなくなるので当然にフューエルポンプが回らずエンジンはとってもサイレントになってまいます。。。

対してV12エンジンは左右両バンク独立制御な為、方バンク毎にLHモジュールが一基ずつ装備されているのでフューエルポンプリレーもパラレルダブルで装備されている構造な故、F2ヒューズ切れでは方バンクのフューエルポンプリレーが動かず、タコメーターの回転信号が入らなくなるだけなので取り敢えずは動けます。。。流石❗️大戦車‼️(笑)

V8の119エンジン搭載モデルにあってはこの時点でF2を交換すれば再び走れますが再びASRが効くシチュエーションになると再びF2が断線する可能性が高いので腫れ物に触る様に大人しく工場まで自走する必要があります。。。

さて、このF2ヒューズ切れの原因ですが当社も配線図面と睨めっこをした結果、、、10Aのヒューズが飛ぶ条件から絞ると。。。

「ASRが作動した際にF2が飛ぶ。」と、言う条件に限定される訳でASRさえ効かなければF2は飛ばない。。。

ってな訳でGMモジュールF2からデイストリビュートされている先の中でASRの動作システムを追うとASR作動時にヒューズが飛ぶショート状態になる可能性のある負荷を絞って行った結果。。。




ASR/ABSハイドロリックユニットが最後に残りました。。。


メチャメチャ硬いコネクターのスライドロックを解除して、、、


ハイドロリックユニット側の端子が顔を出します。

ウチの保有する資料からこのユニットで劣化ショートに至る可能性のあるソレノイド類やポンプモーターのリアクトル値(所謂抵抗値)を測定。。。

するとハイドロリックポンプモーターのリアクトル値が妙に低い。。。

設計値の起動電流は2.0A以下の筈が単純計算で起動時に27Aも掛かっている計算になる。。。間違いなくコレである。。。

この修理はASR/ABSユニット自体を車から下ろして大分解作業となる。。。

この故障が最近全国的に相談が多いところに故障物件に巡り会えずウチも経験が無かったが丁度ウチのW140 600SELお嬢がお約束の様にこの症状を発してくれたお陰様で良い研究題材となった。。。ある意味貴重な家族の協力ですね。(笑)

未だウチでも検証中な為に大々的に修理を請け負う事はしないが現在取り敢えずこのハイドロリックユニットについて調査をしたところ、、、






品番 002 431 4412 が、1991年〜1994年(一部1995年上半期)までのASR付きV8,V12モデルに採用されていてW124,W140,R129共用となる。。。

因みに現在部品での供給は品番 002 431 4512 になって本国在庫による対応である。
お値段は税別1,290,000円也である。。。😱

既に毒車の個体数も僅少な故に解体屋さんにも中古部品の在庫が品薄で当社も研究用に中古ユニットを入手するのに非常に苦労した。
又、毒車が全盛期にこんな安全装置のハイドロリックユニットが故障する何て話は僅少だった為に解体屋さんもいつまでも在庫せず輸出或は廃棄してしまったと言う裏話もある。。。




今回の故障ケースは完全なる電機パートの故障であるが此方も故障箇所の部分の検討は大方ついている。。。

後は分解してみて全体的に保証出来る位のリビルトが可能かどうかと言う判断になりますな。。。

まあ、安全装置についてはかなり重きを置いて設計している毒な国のコスト度外視製品ですからリビルトが可能な構造であると考えられるのでモーター如きで廃棄は考え難いのでじっくりと取り組んでみますかな。。。