昨日は三か月ぶりの横浜行でした。
多分、横浜公園 ― ベイスターズ本拠の横浜スタジアムがあります ― の花壇ではチューリップの花が満開で、ドラゴンズに開幕3連勝をプレゼントしてくれたお礼もこめて、写真を撮り、ブログに掲載、と思っていたのですが、予想に反して、今回の倉庫会社は横浜公園前を通って行く会社ではなく、桜木町から二十分に一本しかないバスに乗らなければならないところでした。
そこは本牧埠頭という、ただただだだっ広いだけのところで、撮影に値するようなものもないゆえ、と思って、桜木町駅前のバス乗り場まで歩きながら、ランドマークタワーを撮りました。
海運倉庫会社の仕事は朝早くから始まります。十時になると、まだ仕事が途中であってもキッチリと休憩をとり、昼休みは十一時半から一時までです。
市川大野にある勤め先を九時に出て、総武・横須賀線に乗っても、市川で三分停車、東京駅でまた三分停車、なおも懲りず品川でも三分停車という田舎電車で行くしかないので、桜木町に着けるのは十時半を過ぎてしまいます。
桜木町から本牧埠頭入口というバス停まで、およそ二十分かかります。そこから目指す倉庫会社までは徒歩十五分。だだっ広い場所ですから、目的の建物は見えているのに、容易に近づいてこない。
二十分に一本しかないバスが順当にきてくれないと、折角辿り着いたのに、相手は昼休み、ということになりかねません。
間の悪いことに、この系統のバスは山下公園という観光スポットを通ります。
昨日のように陽気のよい日は、始発の横浜駅で大勢の乗客があって、出発に手間取るらしく、大概遅れてきます。昨日もかなりの乗客があって、数分遅れでした。
私が知っている限り、倉庫会社は役所に似ていて、書類に一文字でも書き間違いがあると、受付不能といったり、昼は担当者不在で受付不能などといって、とても客商売をしているとは思えません。
食堂も喫茶店もないようなところで一時まで待つのは非常に苦痛だし、第一時間がもったいない。この会社へ行かなければならぬとわかったときは、いつもギリギリ覚悟なので、ヒヤヒヤなのです。
桜木町より前(おそらく横浜駅でしょう)から乗っていた老人たちが山下公園の一つ手前、大桟橋入口でドヤドヤと降りました。
バスはガラガラになりましたが、ドヤドヤと降り終わるのに時間がかかって、私は腕時計と睨めっこです。しかし、運のよいことに赤信号に引っ掛かることは少なく、スイスイと走りました。
本牧埠頭入口着は十一時十分。倉庫会社の入口に着いたのは二十五分でした。本当に建物はすぐそこに見えているというのに、歩くと十五分もかかるのです。
昼休みに入るまであと五分しかない、といっても、五分あれば充分です。運賃と倉庫保管料を払い、領収証と税関に提出する書類をもらうだけですから……。
それまでは今日が厄日だとは考えてもみませんでした。
厄日が始まるのはこれからです。
目指す事務所に着きましたが、ドアに貼ってあった会社名が剥がされていました。
いくつかの事務所が共同で入っている建物です。通りがかった人に訊ねると、先日引っ越したという。
ムカムカときました。
私の勤めている会社がこの倉庫会社を利用するのは年に一回あるかないかです。決して上得意とはいえません。
しかし、毎年一~二回は利用する客であることは歴然です。それなのに、移転を知らせるファックスも葉書もなかった。温厚で鳴る私にしては珍しく、真底から腹を立てました。
電話をかけると、幸い移転先は歩いて二十分ほどのところでした。
しかし問題は、敵が昼休みに突入する直前だということです。急いで歩いても、敵の本拠を襲えるのは十二時近くになってしまいます。
「待ってろよ」と乱暴な言葉遣いではなかったものの、移転の案内をもらっていないのだから、昼休みだろうとなんだろうと、待つのが当然だということをいいました。「参ったな」という呟きが聞こえました。
私が着いたとき、事務所には四人の事務員がおりました。心なしかみんな俯いて私と眼を合わせないようにしている、と感じられました。
机の向きからして責任者らしき男は向こうを向いてそっくり返っていました。むろん一言の挨拶もありません。
内証はいざ知らず、こういう会社が潰れずに残り、たぶん一所懸命に働いてきたであろう従業員たちの会社が潰れる。
前から天に道なし、と疑ってきましたが、今日はっきりと天に道なしと思いました。
それでも、手続きを終えたときは一時まで待つことがなくてよかった、と思いながら、厄の事務所をあとにしました。とんだ目に遭ったと思いながらも、まだ厄がつづいているとは思いません。
二十分も歩かされたおかげで、帰りはバスの便数が多い通りに出ることができます。
ところが、バスがこない。やっときたと思えば、真っ昼間だというのに、異様に混んでいました。乗降客がいるのでバス停ごとに停まり、走り出すと、赤信号に引っ掛かってばかりいる。
運転手は自分のせいではなく、交通事情だと思っているのでしょうが、バス停から発車させるときの運転ぶりを見ていると、いかにも要領が悪い。
こういうときに限って、こういう間の悪い運転手に出くわすものなのでしょう。同じ横浜駅へ行く別の系統のバスが追い抜いて行きました。乗客はまばらです。
結局、普段の倍ぐらいの時間をかけて、横浜駅に着いたのは一時近くでした。昼飯も食わぬままです。昼をどうすべぇかと思いながら改札口を入ると、四分後の東海道線がありました。横須賀線は九分後でした。
横須賀線に乗れば市川で乗り換えです。東海道線なら東京駅と秋葉原で乗り換えです。
問題は腹が空き始めていたことで、横須賀線に乗ったら、西船橋まで、およそ一時間以上、食べるところがありません。東海道線なら東京駅はむろんのこと、秋葉原も乗り換え途中に食べるところがあります。東京からは山手線か京浜東北線に乗るのですから、いっそ品川で乗り換えることにしてもいい。
そう思ったので、東海道線に乗り、品川で降りて、やっと昼飯にありつきました。食べ終えたのは二時近くでした。
品川からは京浜東北線に乗りました。
ところが、東京駅に着いたあと、電車はなかなか発車しません。こういうときの一分二分という時間は非常に長く感じられます。
車内がザワザワし始めたとき、車掌のアナウンスがありました。五つ先の鶯谷で人身事故があったというのです。
ヤレヤレですが、こんなことつづきの世の中で、一つずつ肚を立てていたのでは身が保たない。このあとは勤め先に戻るだけなので、ジタバタしないことに決めました。
結局、勤め先に戻ったのは三時を過ぎていました。たかだか横浜へ行って戻ってくるのに、六時間も要したことになります。仕事に要した時間はものの三分か四分。
莫迦莫迦しい話で相済みません。
なんでもない風景です。
くだんの倉庫会社の旧事務所から新事務所への移動途中、カリカリしている頭を冷やすべく、本牧大橋の上で立ち止まったときに写した画像です。
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