空に向かって、手を一斉に広げているかのような、真っ白いハクモクレンを見ました。
春先のコブシや、モクレンなどマグノリアの花々が大好きです。
気がついたら、あちらこちらお家の庭先に。
ハクモクレンの花がこんなにも咲いている頃となっていたのですね。
この白い花。
まるで、手の平に春の光を包んでいるように優しく温かく咲いています。
宮沢賢治の「マグノリアの木」を思い出します。
諒安という人がひとり、
深い霧の中を、険しい山谷の崖の刻みを渡って歩いていきます。
そして、とうとう、一つの平らな枯草の頂上に立ちます。
自分の歩いてきた方を見ると、その山谷の刻みには、一面真っ白にマグノリアの木の花が咲いているのです。
「けわしくも刻むこころの峰々に いま咲きそむるマグノリアかも」
と、どこからかはっきりと声が聞こます。
諒安は、マグノリアの木の梢を見上げながら歌っている二人の子どもの歌を聞きます。
「サンタ、マグノリア、
枝にいっぱいひかるはなんぞ」
向ふ側の子が答へました。
「天に飛びたつ銀の鳩。」
こちらの子が又うたひました。
「セント、マグノリア、
枝にいっぱいひかるはなんぞ」
「天からおりた天の鳩。」
諒安は、そこで、不思議な人に会います。
二人は話します。私は、あなたであり、あなたは、私であるとの思いの中で。
マグノリアの木を「寂静印」と呼び、「覚者の善」だといいます。
そして、それはまた、「みんなにとっての善」であるといいます。
この話は、賢治の所謂、心象風景の世界を描いたように思いますが、
今日、私は、この真っ白く光っていた花が、やはり、みなの祈りの手だと思いました。
その心の重みを感じたのです。
私は思います。
この白い聖なる花が包んだみんなの善なる願いを、その香りを風にのせて、北へ届けてくれるだろうと。
まっすぐ、空へ向いていました。
今日、私も、このマグノリアの白き花に心を救われました。
少し、元気がなくなってきちゃったと思ったら、
大きな大きなマグノリアの木、見上げてくださいね。