細田暁の日々の思い

土木工学の研究者・大学教員のブログです。

自制心、若手

2009-09-24 21:02:26 | 人生論
今日は研究室の学生を2名、JCIの委員会にオブザーバーとして同行させ(私自身もオブザーバー)、5時間の濃厚な議論の後、学生2名と少しお酒も飲みながら復習し、人生論も説きましたので、その延長で若手へのメッセージとして記します。

「自制心」「自己制御」「自己管理」。これらはとても難しいものであり、過去の日本人は自然に身に付けていたものかもしれませんが、現代の日本では大人でも十分に身に付けている人は稀かと思います。私の目で見てすごいな、と思う人たちも多くはなく、身近な例で言うとイチローです。大多数の日本人はこれらについて悩み、最善を尽くそうともがいていると想像します。私のいう「自己制御」とは、自己のことを深く分析できて理解しており、自分のやるべきことがミッションステートメントに基づいて明確であり、自分のやるべきことを着実に実行できるためのマネジメント全体、を意味します。

私も自己確立を模索する中で、自己制御できるように少しずつ成長してきましたが、9月の中盤は自己管理能力の欠如に悩まされました。やはり、どのように高いモチベーションを持つか、保つかというのは人生を通じての課題であると再認識しました。

見かけ上自己制御できているようにするための簡単な方法は「忙しい日常とする」ことです。自己制御云々を論じる前に、そんなことを考える余裕をなくしてしまうことが一番簡単な方法です。普段の私はそういう状況で、やるべきことが一応明確で適度に忙しいと悩む時間もないので、それはそれで充実します。しかし、多くの人は自身の行動と自分の本当にやりたいことが一致していない、もしくは一致しているかどうかも分からない状態なので、忙しいことのみに飲み込まれて別の悩みに遭遇します。

この9月に私が悩んだのは忙しいのとは反対で暇になったからです。追い立てられるような切迫した状況からほんの一時的にせよ解放されたということがあります。ここ数年で初めてに近い経験です。奥さんが育児休暇をとっていることも一因です。ふっと予期せぬ暇な時間ができて、「悩む」時間を与えてもらったと理解しています。(本当は暇でも何でもなく、その時間をクリエイティブな作業に投資すべきなのですが、エアポケットのように気が抜けてしまいました)

ほんとに忙しい人であれば、そんな暇も与えてもらえないでしょうから、まだまだそんな暇を享受できる「若手」なんだと思いました。自分のことに時間を使える若手であり、だからこそ自身に時間を投資すべきである、と認識しました。

普段は共働きの奥さんと家庭を回すのに必死なので、悠長なことは言ってられませんが、たまたま今はそういう時期だったのだと理解しています。

9月も終盤に入り、結局いつもの自転車操業に戻りつつあるので、ほんとに束の間の「バカンス」であったように思いますが、「自制心」を持って日々を全力で生きたいと思います。

学生たちへアドバイスするとすれば、学生の間は所詮は暇人であって、悩む時間があることをありがたく思うべきです。大いに悩んで、自己と向き合い、将来に社会に貢献できる人材となるべく、自己に投資をしなさい。すぐにそんな時間を確保するのが困難な社会人になりますから。


広いマインド

2009-09-24 07:19:14 | 職場のこと
研究室の学生たちの教育にはいろいろと工夫をするのは当然のことです。

私の工夫の一つに、現場を見せる、教員が仕事をしている現場を見せる、というものがあります。私も多くの共同研究をしていたり、あちこちで講演したり、と外部に露出する機会も多々あります。それらに同行することは学生にとってはとても貴重な機会であると認識しており、なるべく同行を許可するようにしています。もちろん、学会などへの参加も奨励しています。

現場で教員がどのように振舞っているか、考え方を述べているか、技術者とディスカッションしているか、どのようなジャッジをしているか、をよく観察してもらうことが、若手にとっては一番の勉強です。逆に言えば、そのような機会にいろいろと観察して「盗もう」としない人は伸びません。どの世界でも同じでしょう。

今日は、JCIの委員会で高炉スラグの研究について請われて講演してきます。高炉スラグの研究を始めてたかが数年、地道にやることで、一応講演をお願いされるような研究に進展してきたわけです。ここで私がどのような話をし、ディスカッションをするか、を見ることは研究室の学生の勉強にならないわけがない。

こういう機会にはぜひ多く参加してもらいたいのだけど、同行するのは学生2名。1名はスラグの研究をする高橋君でこれは当然でしょう。もう1名はデルフト工科大学の留学から帰ってきた小松君。やはり意識が切り替わっているのでしょうか。

昨日、京葉線の実構造物を調査しましたが、休日であったにせよ、これに同行したのも研究に携わる重野君と、これまた小松君。鉄道構造物の劣化・メインテナンスを私と一緒に2駅分歩きながら議論する機会など、そうそうありません。私がこれまで培ってきた技術情報に基づいて調査、議論するのですから、もったいないといえばもったいない。

前述の「師匠から盗む」、もそうですが、どれだけ広い視野をもって興味を持てるか、は個人の資質でもあります。私は決してスーパーマンではありませんが、研究室のすべての学生と同レベルの「凡人」でも決してありません。私が学生のころを思い出せば、自分の研究以外のことにも興味を強く持ち、先生たちや技術者たちの行動をつぶさに観察し、吸収しようと努力していました。

研究室のゼミが充実しないのも、広いマインドをもった参加者が少ないからでしょう。発表内容の質もあるだろうけど、聴衆のレベルの低さも大きな原因です。

自分の研究のことだけやったってどうにもなりません。すべてを貫く本質はすべてに共通しており、それは広く視野を持つことによって初めて獲得できるのではないかとも思います。本質的な考え方をすることができるようになれば、自分の研究に対しても違った行動ができるようになるはずです。

私の日記を読んでいれば私の考え方が理解できる、などと思うのは早とちりで、やはり現場で実物の行動をよく観察してもらいたい、と強く思います。遠慮は無用なのに、横国の学生はおしとやかで何よりです。