細田暁の日々の思い

土木工学の研究者・大学教員のブログです。

低空ながらの飛行

2020-10-13 09:36:10 | 人生論

例年、10月に入ると私は繁忙期に突入します。今年は、コロナの影響もあり、秋学期の私の講義もすべて遠隔で、教員部屋が相部屋ということもあり、講義は自宅の方がやりやすく、今のところ木曜、金曜に集中している講義は自宅でリアルタイムで行っています。

コロナ社会の中で絶好調、という人もそんなにいるとは思えませんが、私自身も、自分の感覚では低空飛行が続いています。10月に入ると、ウダウダ言ってられないので、強制的にテンションが上がっていくのが例年ですが、今年もそのような感じです。

昨日は、今年度、結構な回数を重ねるであろう横浜市の配水池の内部調査の初回でした。正直言って、この共同研究の依頼を受けたときはあまりモチベーションが湧きませんでしたが、私の考える「適切な維持管理システム」に向けてチャレンジしてくれるのであれば受ける、と宣言してスタートし、今は、すごく様々なことを学べるし、技術の社会実装という観点でも楽しんでおり、大事な研究テーマの一つになっています。

講義や現場調査などが重なると、テンションが低い状態では対応できないし、人と話しているうちに元気になる、というタイプなので、徐々に調子が上がってきてるように感じます。昨日は起床後、かなり体調がよくなかったのですが、一日経た今日は、体に大分エネルギーがみなぎっているように感じます。

低空飛行中は、周囲に迷惑がかからない程度に(墜落しないように)、低空であっても飛び続ければよい、と半ば割り切って過ごしていた時期もありました。

10月も中旬に入り、上記の配水池の研究以外の研究プロジェクトも動きが活性化するので、ますます忙しくなりそうです。不思議なもので、忙しくなると、勉強する意欲も湧いてきます。つくづく、バイオリズムが大事、ですね。


配水池の維持管理

2020-10-13 08:50:42 | 研究のこと

昨年度から、私の研究室と横浜市の水道局とで共同研究を行っており、そのターゲットは上水道の「配水池」という施設群のメインテナンスです。横浜市として確たる維持管理システムを持っていないように私の目には見えたので、配水池の果たすべき「機能」(求められる役割)と、機能が果たされるために構造物が保有すべき「性能」(パフォーマンス)をしっかりと議論しながら、私の研究グループが提案する手法を今年度から取り入れてもらっています。

まだ研究途上なので多くは述べませんが、定期点検においては「外観目視」を主軸に据え、「機能」に影響を与えうる劣化現象に限定して、目視での4段階でのグレーディングによる評価を行うことにしました。

「目視評価」については、私は、新設のコンクリート構造物の目視評価法で実績を持っています。4段階のグレーディングの評価の仕方が「定性的」である、とか、経験の無い方からするといいかげんな手法に思われたり、何がすごいのか全くピンとこなかったりするようです。この研究を修士論文のテーマとしている中国からの留学生の楊君も頑張ってくれていますが、発表では真価が伝わらず苦労しているようです。

昨日が、今年度の実際の配水池構造物の最初の調査でした。地下にある大きな空間で、コンクリート構造物です。今年度、最初に、新たな外観目視評価を行うということで、私も終日対応できるように予定を空け、横浜市の職員、私と楊君、それから点検業務を請け負っているコンサルタントがそれぞれ外観目視評価を行いました。

昨日の構造物は、極めて品質が高く、設計段階での止水構造と、施工段階での基本事項の遵守がしっかりなされた構造物であることがよく分かりました。

その上で、すべての天井、壁、柱などに対して外観目視評価を行ったのですが、

・劣化した部分だけでなく、健全な部分も記録に残す。
・劣化現象、劣化の状況をそれぞれの目で見て、原因が分からないような場合は議論をする。

というような目視評価ならではの「特長」により、なぜこの部分でコンクリート表面の「すりへり」が激しいのか、など、現象の理解が深まっていったように思います。

もちろん、私はコンクリートの専門家なので、私がレクチャーする場面も多かったですが、点検業務をいろいろと経験しているコンサルタントの監理技術者と議論することで、私も初めて理解できたり、理解が深まったり、ということがいくつもありました。

横浜市の配水池は30個程度です。管理する横浜市の職員が、それぞれの配水池の劣化の状況や劣化のメカニズムを、アウトソーシングではなく、自分たちの五感で感じ取ることが重要と思います。

今回の共同研究は、私の研究グループはもちろんいろいろと勉強させてもらっていますが、横浜市の職員やコンサルタントの方々にもよい勉強の場になっているのではないかと期待しています。

最終的にどのような維持管理システムが出来上がるのか、まだ分かりませんが、良いものに仕上がっていくよう、私も当事者として、エンジニアとして、貢献できればと思います。