「リアルな経験が正しい比較と決断を引き出す」 村岡 泰輝
授業内出てきた大石氏の日本と海外諸国の違いについての資料を見ると、日本の国土がいかに特殊な国土で厳しい自然条件かよくわかる。日本は細長く分断された国土、平野が少なく急流河川が流れる軟弱地盤な国土、地震が多く豪雨や豪雪といった気候も厳しい国土である。これらは他国と比較されてはじめて分かることである。
他国で長距離の移動をすると地形の違いがよくわかるものだ。私はユーロスターに乗ってロンドンからパリまで移動したことがある。フランスでは広大な平原を進んでいく。都心の駅を離れれば家を見ることもない。だだっ広い草原を進んでいくのである。新幹線に乗るとどうだろう。海が見えたと思ったらトンネルに入り、少し広い平野に抜けたと思えば住宅が所狭しと立ち並んでいる。日本と海外の高速鉄道にどちらも乗ってみて初めて日本と海外の地形が違うことを実感した。この比較の経験は今でも日本が厳しい国土であると実感させてくれる。
日本と他国の違いを経験することは文章を読んだだけの上っ面だけの知識を確かな実感へと変えてくれる。日本に閉じこもっているだけでは知らない世界がたくさんあるはずだ。日本だけではなく、今いる空間や知っている世界から飛び出して別の世界を知るような様々な経験をもっと積まなければならないと強く感じた。
上っ面の知識は時に大きな決断ミスを生むかもしれない。決断の選択肢の比較検討をするには上っ面の知識では情報量が経験するよりも圧倒的に少ないからだ。日本の電力自由化政策をとってみれば、国力を下げることに繋がりかねない危険な政策であることは海外の事例を見れば明白なことだと細田先生は話した。そうだとすれば今の政治家は知識ではわかっていながらも自分の利益を優先させているのだろう。それは海外の事例は上っ面の知識でしかないからだ。もちろん海外の事例を直接すべて経験することは難しく不可能に近い。しかし別の様々な経験が海外の事例の経験を疑似経験のように想像させるのに役に立つだろう。
不明瞭な未来についても同じだ。まだ生じていない未来のリスクを経験することはできない。しかし他の多くの経験が未来の予測の精度を上げていくに違いない。東日本大震災の時にどれだけの経験豊富なベテランが英断を下しただろうか。また比較するデータが間違っていればもしくは誇張操作されていれば正しい比較はできない。それらを見破るのも豊富な経験が必要だ。
私は正しい比較で良い決断ができるようにコロナ禍で活動が制限されていてもできる限りの様々な経験を大学でしたいと思う。しかし実際は心を病んでなかなか一歩踏み出せなかった。心を病んでしまった理由の一つにオンラインでの自分と他人の比較があると感じる。自他の比較はモチベーションの向上につながり一見悪いことのようには見えない。だが時に壊滅的な影響をメンタルヘルスにもたらすこともある。SNSなどをみて他人の人生と比較することで自分の欠点に目が付き、劣等感に苛まれ、抑うつ状態に陥る。オンライン授業でも実際は画面の向こう側でさぼっている人もいるのかもしれないが、全員が真面目に受けているように感じて自分だけが置いて行かれている気がしてしまう。なぜSNSやオンラインでは自分の欠点に目が行くのか。
それはオンラインでは自分と他人の比較をするには情報が少ないからだ。つまりSNSやオンライン授業ではその人の上っ面を見ていることに他ならない。対面で会話や雑談をして初めてあらゆる角度から他人をみることができて自分と他者の比較が正確にできるようになる。SNS上の上っ面の情報のみで比較をするのではなく、実際に対面で会話をするという経験が正しい自分と他者との比較を生むのだ。そしてモチベーションの向上につながるのだ。
正しい比較をして良い決断ができるようになるにはリアルな経験が必要不可欠だ。上っ面の情報を学ぶだけではなく自らリアルな経験をして多角的に物事を見ることを心がけていきたい。
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