このエッセーでは、私個人のCO2削減や脱炭素という社会の大きな流れに対する考え方を述べます。
まず、私は脱炭素、CO2の排出総量削減、ということ自体を目的として社会を運営すること、研究を推進すること、に反対です。
私がそう考える根拠は、渡辺 正 著の「地球温暖化狂騒曲」-社会を壊す空騒ぎー に定量的なデータとともに整理されているので、ぜひご一読ください。
以下の説明を始める前に、「CO2の排出量」と「CO2の排出総量」は異なる概念であること、にご注意ください。例えば、日本国家の「CO2排出総量」であれば、日本国家のありとあらゆる活動から排出されるCO2の総量になります。私が反対する「CO2の排出総量を減らすこと」は、現代社会で言えば、GDPが減ることとほぼイコールになります。すべての社会活動は炭素エネルギーを母体としていると言って過言ではなく、現代ではほぼイコールになります。遠い将来は、実力のある代替エネルギーが出てくれば、状況が変わってくるでしょうね。
さて、具体的な説明を始めます。
CO2の大気中の濃度がこの50~60年、増えてきているのは間違いないようです。それが悪いのか?ということですが、CO2の濃度が増えたから気温が上がっているという短絡的な因果関係には反対している科学者がたくさんいます。そして、CO2の濃度が高くなったことで、実は森林の面積も世界全体では大幅に増えています。農作物が育ちやすくなる(CO2は生物にとって恵みの物質です)ので、人間が生活する環境としては、良くなる方向に進んでいます。詳しくは上述の著書をご覧ください。大気中のCO2の総量を減らそうとする「CO2の排出総量」を削減する、という方向性は、農作物の生産性が低下するなど、生物にとって生きにくい方向に進むため、この観点からも私は「CO2の排出総量」の削減に反対です。
ですが、気にせずに「CO2排出量」をどんどん増やしてよい、資源は好きなだけ使ってよい、などとは私は微塵も思っていません。
現代社会は、コスト≒CO2排出量(エネルギー使用量)と考えてよい状況です。例えば、ある土木工事をやるとして、同じ成果物を得るためにかかるコストを削減する、ということは、その土木工事で消費されるエネルギーを減らす、ということです。より少ない資源、エネルギー、時間、コストで同じ成果を得ることになるのです。これを「生産性向上」と言います。これが今の日本に最も求められていることです。それは、生産年齢人口が急減してきている状況なので、自明でしょう。
個別のプロジェクトでは、CO2排出量を減らす方向性が良いのです。この点が、「CO2の排出総量」の削減に反対を唱える私の主張が、世の中の大半の方々になかなか理解されない点なのですが、極めて重要なポイントです。
ある例を示します。例えば、1兆円もかかる巨大土木プロジェクトがあったとしましょう。羽田空港のD滑走路の工事はそのような規模でした。結果的には、様々な工夫により、6000億円程度で完成したようです。40%程度ものコスト削減は、最先端技術を組み合わせたことによる技術者たちの工夫が最大の要因でした。当然、CO2排出量も減ったことでしょう。さて、「浮いた」4000億円をどうすればよいのでしょうか?ドブに捨てれば、CO2排出総量は減ります。そんなバカなことをする人はいないでしょうね。4000億円は、新たな投資に使えばよいのです。災害が激甚化している、というのであれば防災対策に投資すればよいではないですか。(温暖化で災害が激甚化している、というのもどうも怪しい話で合って、渡辺先生の著書にいくつものデータと考察が示されています。温度を下げようなどと考えるのではなく、災害対策にしっかり投資されてはいかがでしょうか?)
個別のプロジェクトでCO2排出量の削減を追求することは、「生産性向上」であり、「質の高い投資をする」ことなので大歓迎。そして、質の高い投資を積み重ね、投資の総量(現代では社会のCO2の「総排出量」とほぼイコール)も増やすべき、そうすることで社会は健全に発展していく、というのが私の考えです。
発展していくためには、投資の総量を減らしてはいけないのです。
さて、11月24日にプレスリリースされましたが、私が研究代表者で、国土交通省関東地方整備局の「技術(シーズ)マッチング」という制度の、取組1:インフラサービスにおける省エネ推進・CO2削減に寄与する研究、において「生コンの廃棄物等を資源として革新的に活用する方法についての技術研究開発」というプロジェクトが採択されました。
私はこの研究において、「CO2の排出総量」を削減することを目指すような文言を一切、申請書の中に書いていません。すなわち、CO2の排出総量を削減することを目的とするような研究は一切やるつもりはありません。
ですが、当然に今の社会に「真に」求められていること、を達成するためにこの研究もやります。「真に」ですよ(「目先の」お金儲けのため、ではありませんよ。念押しのため。)。当たり前のことです。
上記の採択された研究においては、委託側から求められている「インフラサービスにおける省エネ推進・CO2削減に寄与する」という目的に対しては、当然に貢献するつもりです。
使いようのない廃棄物にお金をかけて処理している現状があるとして、そのような廃棄物を有効に活用して、社会のニーズを満たすプロダクトに変換できれば、素晴らしいと私は思います。
さて、私が強調したい最後のポイントですが、脱炭素やCO2排出総量を減らすことを目的とする方々と、私とでは、やろうとしていることが似ているように見えて、実は全く異なってきます。いろんなことをやればやるほど異なってきます。
例えば、造粒したポーラスコンクリートというものがあり、これをコンクリート舗装として使うとしましょう。脱炭素派の方々は、ポーラスコンクリート舗装にCO2を吸収させたい、と思うらしいです。私は一切そんなことは思いません。どうせ大した吸収量ではないので、CO2を吸っても吸わなくてもどうでもよいのですが、むしろ吸わない方が植物もたくさん育つ、と心の底から思っています。
では私はどうするか。CO2など吸っても吸わなくてもどちらでもよいですが、仮にポーラスコンクリートがCO2を吸う能力が減ったとしても、誰も使わない廃棄物を活用し、同じ性能のポーラスコンクリートができた方がよほどうれしい。
これが私の考え方です。脱炭素やCO2排出総量削減を目的とする方々とは、研究の目標も、哲学も全く異なりますので、この点を明確にさせていただきました。
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