「米とインフラについて考えたこと」 中田 宙希
米どころといったらどこを思い浮かべるだろうか。私は、新潟県と北海道が日本一の米どころだと思っている。両道県は都道府県別の米の収穫量のトップ2である。小学校の時以来日本の統計データをあまり見ていないこともあり、また当時は今とは違い新潟県と北海道が競っていたこともあり、両道県を日本屈指の米どころだと思っている。ただ現在は新潟県と北海道でコメの生産量に差があるようである。ここで、北海道と新潟県についての米の変革を見ていきたいと思う。
まず、北海道についてである。現在では北海道はゆめぴりかやきらら397、ななつぼしといったおいしいお米が有名であるが、かつて北海道のコメはとてもまずいことで有名であったらしい。そもそも米は温暖な地域に生息する植物であり、北海道で育てることは気候的に難しいものであった。また、寒さに強い品種を作ろうとすると味が落ちたり、味を良くすると環境に耐えられなくなったりするなど、北海道で育てるためのコメの品種改良にだいぶ苦労した過去がある。さらに、北海道は稲作どころか畑作もできないような土地が広がっている地域であった。植物が枯れた後その寒冷な気候によりうまく分解されなかったために形成された泥炭が堆積した土壌であったためだ。この泥炭地を改良するために、まず泥炭由来の土地は排水できないため排水設備を整備した。また、植物が育つ土壌にするためによそから土壌を運び込む客土と呼ばれる作業をした。さらに、農業をするにあたって取水用の用水路も整備した。これを一万一千ヘクタールにわたって行い農地を拡張したというのだから相当な大事業である。これらの事業によるインフラの整備効果には計り知れないようなものがあると感じた。全く米が作れなかったような北海道の土地を日本屈指の米どころに変えてしまったのだからストック効果が絶大なものであろう。
次に、新潟県についてである。新潟県についても北海道と同様に現在ではコシヒカリなどのおいしいお米が有名であるが、かつてはまずいお米の代名詞だった。コシヒカリが作られる前までの新潟産の米は鳥すら食べないほどおいしくないお米という意味で鳥またぎと呼ばれていた。そのような状態であった新潟県がなぜ国内屈指の米どころとなれたのかというと、こちらもまたコメの品種改良と治水によるものであった。コメの品種改良は、戦後コメの増産のために病気に強い品種を作ろうとして改良を重ねられていった結果作られた米がコシヒカリである。味を良くしようとして作られた米ではなかったようであるが、結果的に味の良いコメとなったため新潟県以外にも広がるほど成功した品種である。また、治水の点は、暴れ川であった信濃川の治水事業により平野部の洪水が減り、安定的に農業を行えるようになったことが挙げられる。今では日本の田んぼはすべて乾田化を達成しているが、以前は田んぼを水量に応じて乾田、水田、沼田と三種類に分けていた。沼田が一番水の多い形態である。新潟は水田が広がっていた。乾田化していない田んぼは米の収量はあまり多くならない。信濃川には現在大河津分水路と関谷分水路という二つの分水路が存在するが、その分水路のおかげで田んぼを使いやすいように保てているという側面がある。新潟県においてもインフラ整備のおかげで稲作産業に大きな影響を与え、新潟県を日本屈指の米どころにした。
米がまずいといわれていた新潟県と北海道であるが、今では米の有名生産地である。時の判断により整備されたインフラは地域に大きな影響を与え、地域に大きな稲作資源を生み出した。米について考えてみることにより、改めてインフラ整備事業の存在の大きさ・ストック効果の大きさを実感できた。ただし、秋田県の八郎潟のように、干拓して田んぼを作ったはいいが、干拓が終了したころには減反政策に転換し、農家に多額の借金を負わせ、自殺する人まで生み出したような事業もあるため、インフラ整備事業自体が悪であるとは思わないが、先見性を持ち、正しいタイミングで事業を進めないと時には人民を苦しめることになることには気を付けなければならないと感じた。情勢や計画性を考えたうえでインフラ整備をすることは必要なことであり、政権が変わるごとに政策が変わるようではいけないだろう。もっと中長期的な視点で施策が決められるような世の中でありたいと思った。
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